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日慢協から出されたリハビリ改革に関する提案
先日,日本慢性期医療協会の武久洋三会長と橋本康子副会長が今後の診療報酬改定に関して新たな提案をされました.
2022年度の改訂にどこまで反映されるものかはわかりませんが,理学療法士・作業療法士の皆様も今後の診療報酬改定の流れを考えるうえでは把握しておいた方がよい内容だと思います.
今回は日本慢性期医療協会から出されたリハビリ改革に関する提案について考えてみたいと思います.
日慢協から提案されたリハビリ改革
今回,日本慢性期医療協仮から出された提案ですが,従来は「リハビリ提供体制」が必ずしも十分に整っていなかったことから,「まずは量の拡大」「対象患者の制限」などが行われてきたが,リハビリ提供体制の充実が進む中で「量から質への転換」「対象患者の拡大」の必要性を指摘する物でした.
具体的には以下のような提案がなされております.
(1)包括評価の推進
(2)疾患別リハビリ料の点数格差解消
(3)効果評価における「FIM評価」から「BI評価」への移行
(4)「20分1単位」という縛りの柔軟化
(5)急性期入院中の「可動性確保」に向けた取り組みの推進
包括評価の推進
リハビリテーション料の包括化については以前から話はありますし,地域包括ケア病棟におけるリハビリテーション料の包括化なんかはその第一歩ですよね.
現状では回復期リハビリテーション病棟では,疾患別リハビリ料の点数のみが出来高で,他項目は入院料の中に包括評価されている状況です.
これに対して地域包括ケア病棟では,リハビリテーション料も含めた多くの項目が入院料に包括評価されています.
実際に地域包括ケア病棟のほうが,現場の自由度が増し,使い勝手が良いといった声も多いです.
また地域包括ケア病棟の届出は猛烈な勢いで進んでいます.
こういった現状をふまえて回復期リハビリテーション病棟における疾患別リハビリテーション料の包括化が提案されているわけです.
一方で包括評価の場合には,「医療の質が保てるのか」という疑念も生じます.
なぜなら「包括評価されている診療行為(例えばリハビリ)を極力行わない」ことが「コストの抑制→利益の確保」につながるため,場合によってはリハビリを積極的に実施しない回復期リハビリテーション病棟なんかも出てきかねないわけです.
疾患別リハビリテーション料の格差解消
現状の疾患別リハビリテーション料は以下のように疾患別リハビリテーション料によって格差があります.
心大血管疾患リハビリ料(I)(1単位): 205点
脳血管疾患等リハビリ料(I)(1単位):245点
廃用症候群リハビリ料(I)(1単位):180点
運動器リハビリ料(I)(1単位):185点
呼吸器リハビリ料(I)(1単位):175点
この格差って本当に妥当なんですかね?
例えば運動障害や高次脳機能障害が全くない対象者であっても245点を算定できる一方で,重度な廃用症候群を合併した症例では180点しか算定できないといった矛盾をはらんでいます.
こういった格差があると,経営面から『点数の高い患者を選択』してしまうといった問題点のあることが指摘されております.
本当に必要な対象者にリハビリテーションを提供できない事態にもつながりかねません.
FIMからBIでのアウトカム評価に
これは先日もご紹介させていただきましたが,「BIによる効果測定への移行」に期待が寄せられております.
さらに以前には動画を撮影し効果を客観的に検証可能とする仕組みの導入も提案がなされております.
今回もスマートフォンの普及などにより,容易に「高画質の動画」を撮影し,保存することが可能になっているといった時代の変化を挙げておりますが,一方で「排泄」や「清拭」「更衣」など,プライバシー保護の観点からは動画撮影が困難な項目も多いことからこのあたりは大きな課題になるでしょうね.
1単位20分間のリハビリ提供の枠を撤廃
現行では「1人のセラピストが1人に患者に対して20分間のリハビリを提供する」ことが1単位と定められております.
ただこれって柔軟なリハビリ提供を阻害している可能性があります.
例えば20分関わらなくても10分で2回関わった方がよいクライアントもいるのが実際ですし,もう少し柔軟に現場の判断で1人1人の対象者にマッチした適切なリハビリテーションサービスの提供を可能とするには,1単位20分といった枠組みを撤廃することが求められます.
今回は日本慢性期医療協会から出されたリハビリ改革に関する提案について考えてみました.
確かにごもっともな指摘も多いですね.
どこまで診療報酬改定に反映されるものかは不明ですが,今後も理学療法士・作業療法士は日慢協の動きから目が離せませんね.