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脳卒中片麻痺症例を対象とした歩行トレーニングってトレッドミルと平地歩行とどっちがいいの?システマティックレビューによる検討
脳卒中片麻痺症例を対象とした歩行トレーニングとしてトレッドミル歩行が用いられることがあります.
トレッドミルというのは運動強度や歩行速度を規定できるといった利点もありますし,最近は免荷式のトレッドミルも流行ですね.
今回は脳卒中片麻痺症例を対象とした歩行トレーニングとしてトレッドミルと平地歩行とどちらが有効かを明らかにしたシステマティックレビュー論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
J Physiother. 2021 Mar 17;S1836-9553(21)00018-7. doi: 10.1016/j.jphys.2021.02.014. Online ahead of print.
Treadmill walking improves walking speed and distance in ambulatory people after stroke and is not inferior to overground walking: a systematic review
Lucas R Nascimento 1, Augusto Boening 2, Abílio Galli 2, Janaine C Polese 3, Louise Ada 4
今回ご紹介する論文は2021年に掲載された新しい論文です.
研究疑問
Questions: Does mechanically assisted walking improve walking speed, distance and participation compared with no/non-walking intervention or overground walking after stroke? Are any benefits maintained beyond the intervention period?
脳卒中後に機械的に歩行を補助することで,歩行速度,歩行距離,社会参加が,歩行補助なし/歩行補助なしの介入や地上での歩行と比較して改善するのでしょうか?
またその改善効果は介入期間後も維持されるのでしょうか?
研究デザイン
Design: Systematic review of randomised trials with meta-analysis.
研究デザインは無作為化比較対照試験のシステマティックレビューとメタアナリシスとなっております.
研究対象
Participants: Ambulatory adults at any time after stroke.
研究対象は脳卒中発症後に歩行可能な成人(発症後期間は問わない)となっております.
介入方法
Intervention: Mechanically assisted walking (treadmill or gait trainer) without body weight support.
介入として機械的に歩行を補助する(トレッドミルまたは歩行訓練機を使用し,体重免荷サポートは無し)介入を実施しております.
アウトカム測定
Outcome measures: Walking speed, walking distance and participation.
アウトカムは歩行速度,歩行距離,社会参加となっております.
研究の結果
Results: Fifteen trials involving 673 participants were included. The mean PEDro score of the trials was 6.3 (range 4 to 8). Treadmill walking increased walking speed by 0.13 m/s (95% CI 0.08 to 0.19) and distance by 46 m (95% CI 24 to 68) compared with no/non-walking intervention; these effects were largely maintained beyond the intervention. Treadmill walking had a similar or better effect on walking speed (MD 0.07 m/s, 95% CI 0.00 to 0.13) and distance (MD 18 m, 95% CI 1 to 36) compared with overground walking. The estimate of the relative effect of treadmill walking compared with overground walking on participation was very imprecise (SMD 0.16, 95% CI -0.15 to 0.48).
結果ですが673例を含む15件の無作為化比較対照試験が対象となっております.
無作為化比較対照試験の平均PEDroスコアは6.3(範囲4~8)でありました.
トレッドミルを用いたウォーキングは,非介入・非歩行介入と比較して,歩行速度を0.13m/s(95%CI 0.08~0.19),歩行距離を46m(95%CI 24~68)増加させ,これらの効果は介入後もほぼ維持されておりました.
トレッドミル歩行は,地上歩行と比較して,歩行速度(MD 0.07m/s、95%CI 0.00~0.13)および歩行距離(MD 18m、95%CI 1~36)に対して,同等以上の効果がありました.
トレッドミルを使ったウォーキングと地上でのウォーキングを比較した場合の社会参加に対する相対効果の推定値は,非常に不正確でありました(SMD 0.16、95%CI -0.15~0.48).
研究の結論
Conclusion: This systematic review provides moderate-quality evidence that the effect of treadmill walking is the same as or better than the effect of overground walking for improving walking speed and distance in ambulatory people after stroke. Long-term effects and carryover benefits to participation remain uncertain.
このシステマティックレビューは,脳卒中後症例の歩行速度と歩行距離を改善するために,トレッドミルウォーキングの効果が地上歩行の効果と同じかそれ以上であるという中程度の質のエビデンスを提供するものです.
長期的な効果と社会参加に対する効果はまだ不明であります.
今回は脳卒中片麻痺症例を対象とした歩行トレーニングとしてトレッドミルと平地歩行とどちらが有効かを明らかにしたシステマティックレビュー論文をご紹介させていただきました.
平地歩行に比較してトレッドミル歩行がその効果が高いといったことを示唆する結果ですね.
やはり速度を規定できるといった点が大きなポイントになるでしょうね.
もちろん平地歩行でのトレーニングについても意味があると思いますので,理学療法士・作業療法士は平地での歩行トレーニングとトレッドミルでの歩行トレーニングをうまく使い分ける必要があるでしょうね.