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「訓練」それとも「練習」どちらが正しいの?
先日開催された日本リハビリテーション医学会の中で「訓練」と「練習」といった用語の違いについて議論がなされたようです.
理学療法士・作業療法士であれば「歩行訓練」といった用語を用いる方もいらっしゃれば,「歩行練習」といった用語を用いる方もいらっしゃいます.
昔は「訓練」という用語が用いられることが多かったわけですが,最近は「練習」や「運動」なんかが主流になりつつあるのでしょうか?
雑誌の投稿規定なんかにも「訓練」を用いないように記載されているものまでありますからね…
今回は「訓練」それとも「練習」どちらが正しいのかについて考えてみたいと思います.
なぜ訓練という用語に問題があるのか?
私が知る限り理学療法士・作業療法士界隈で「訓練」という用語の問題を初めて指摘されたのは元日本理学療法士協会会長の奈良勲先生だったと思います.
理学療法士・作業療法士の世界では関節可動域訓練,筋力増強訓練,歩行訓練など「訓練」という用語がよく用いられますが,「訓練」という言葉は強制的に運動をさせているような印象を与えます.
また戦争時代を経験した現代の高齢者は「訓練」という言葉に良いイメージを持たない方も多いのが実際です.
このあたりは日本理学療法士協会や日本リハビリテーションに学会の中でも用語の統一がなされていないのが実情です.
ただスポーツのを考えても,あまり「訓練」といった用語が用いられることは多くないと思います.
バッティング練習,シュート練習とか,「練習」という用語が使われますよね.
やはり「訓練」という用語は一方向性な言葉であるといった印象を持たざるを得ません.
リハビリテーションにおいては,主体はクライアントであって,理学療法士・作業療法士は黒子にすぎませんので,クライアントの主体性を考えると「訓練」という用語が不適切であるというのも納得できます.
やはり「訓練」という言葉が持つ否定的側面と,対象者自身の主体性を重要視した肯定的側面を考えると「練習」という言葉がしっくりきますよね.
結局のところ,訓練は「させる」もので,練習は「する」もの,主語がどちらに置かれるかといったところがポイントになるでしょうね.
訓練が推奨される理由も
一方で「訓練」が推奨される理由も存在します.
「訓練」と「練習」の意味を調べてみると以下のように記載がなされております.
練習:技術などを見につける事
訓練:技術などを身につけさせる事
上述したようにこの意味の違いを見ても主語がどちらに置かれるかといったところがポイントになりそうです.
次に理学療法士及び作業療法士法を見てみると,「治療体操その他の運動を「行わせ」~」,「手芸,工作その他の作業を「行わせ」」といった記述があります.
この理学療法士及び作業療法士法が古いので何とも言えませんが,法律には「行わせ~」と記載がありますので,法律から考えると「訓練」という用語が妥当であるとも捉えることができます.
今回のリハビリテーションに学会の大会長の講演は,「訓練や治療」を「練習」という言葉で表現するのはいただけないともとれる内容であったようです.
うーん,悩ましいですね…
書籍・雑誌の投稿規定
最近は書籍や雑誌の投稿規定の中にも「訓練」といった用語の使用を禁止しているものも多いです.
注意書きに「訓練」という言葉は学術的に不適切だといった記載がなされていることも多いです.
時代の流れからするとやはり「練習」という用語を用いるのが無難なのでしょうか?
今回は「訓練」それとも「練習」どちらが正しいのかについて考えてみました.
結局は何を目的として誰にその用語を用いるかによっても使用する用語は変わってくるかもしれません.
言葉って使い方ひとつで意味合いが変わってくるので,自分の中で目的をもって「訓練」と「練習」という言葉を使い分ける必要がありそうですね.