トレッドミルと自転車エルゴメーターのどちらが有酸素性能力の向上に有効なのか?

運動療法・物理療法
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目次

トレッドミルと自転車エルゴメーターのどちらが有酸素性能力の向上に有効なのか?

有酸素性能力の向上を目的に理学療法士・作業療法士がトレッドミルや自転車エルゴメーターを使用することは多いと思います.

このブログの中でも自転車エルゴメーター・トレッドミルを用いた有酸素運動に関して,特に負荷量の設定方法についてご紹介させていただきました.

 

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でもここで気になるのは有酸素性能力を向上させるためには,トレッドミルと自転車エルゴメーターのどちらの方が有効なのでしょうか?

今回はトレッドミルと自転車エルゴメーターのどちらが有酸素性能力の向上に有効なのかを明らかにしたメタアナリシス論文をご紹介させていただきます.

group of people riding city bicycles on gray sand

 

 

 

 

 

 

 

今回ご紹介する論文

Meta-Analysis Arch Phys Med Rehabil. 2020 Apr;101(4):690-699. doi: 10.1016/j.apmr.2019.10.184. Epub 2019 Nov 15.

Comparison of Treadmill and Cycle Ergometer Exercise During Cardiac Rehabilitation: A Meta-analysis

Stephanie Gerlach 1, Christine Mermier 2, Len Kravitz 2, James Degnan 3, Lance Dalleck 4, Micah Zuhl 5

Affiliations expand

PMID: 31738893 DOI: 10.1016/j.apmr.2019.10.184

今回ご紹介する論文は2020年に掲載された論文です.

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の目的

Objective: To compare treadmill versus cycling-based exercise in cardiac rehabilitation (CR) on functional capacity (FC) outcomes.

この研究では心臓リハビリテーション(CR)における機能的能力(FC)の転帰について,トレッドミルと自転車エルゴメーター駆動をベースとした運動を比較することを目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

データソース

Data source: Databases were searched for randomized studies using single modality continuous exercise.

単一モダリティの連続運動を用いたランダム化研究のデータベースを検索しております.

 

 

 

 

 

 

 

研究の選択

Study selection: Studies implemented a continuous cycling or treadmill protocol for patients with either coronary artery disease (CAD) or chronic heart failure (CHF). The effect of single modality exercise on FC (VO2peak) was analyzed. Differences in the effect of CR on FC was assessed between the mode subgroup (cycling vs treadmill) and disease state subgroup (CAD vs CHF) within both the cycling and treadmill groups.

冠動脈疾患(CAD)または慢性心不全(CHF)患者を対象として,継続的な自転車エルゴメーター駆動またはトレッドミル運動を実施した研究を選択しております.

単一モダリティ運動の機能的能力(VO2peak)に対する効果を解析しております.

機能的能力に対する心臓リハビリテーションの効果の違いは,自転車エルゴメーター駆動とトレッドミルの両方のグループ内のモードサブグループ(自転車エルゴメーター駆動とトレッドミル)と疾患状態サブグループ(CADとCHF)の間で評価がなされております.

 

 

 

 

 

 

 

 

データ抽出

Data extraction: Data were extracted from 23 studies including 600 patients (mean age 60y, 86% men).

600例のクライアント(平均年齢60歳,男性86%)を含む23件の研究からデータを抽出しております.

 

 

 

 

 

 

 

データ合成

Data synthesis: There was a significant difference in effect size between studies that used cycling, Hedges’ g=0.85 (95% confidence interval [95% CI], 0.52-1.17; k=13) and studies that used treadmill exercise, Hedges’ g=0.46 (95% CI, 0.22-0.70; k=8). Within cycling studies (n=14), FC was higher among CAD patients, Hedges’ g=1.03 (95% CI, 0.65-1.42; k=9) compared to those with CHF, Hedges’ g=0.40 (95% CI, 0.09-0.71; k=4, P<.001). Conversely, among treadmill studies (n=9), FC was higher among CHF patients, Hedges’ g=0.94 (95% CI, 0.23-1.65; k=2) compared to CAD, Hedges’ g=0.33 (95% CI, 0.19-0.47; k=5; P<.01).

自転車エルゴメーター駆動を用いた研究(Hedges’ g=0.85(95%信頼区間[95%CI]、0.52-1.17;k=13)とトレッドミル運動を用いた研究(Hedges’ g=0.46(95%CI、0.22-0.70;k=8))では,効果の大きさに有意な差が認められました.

自転車エルゴメーター駆動を用いた研究(n=14)では,慢性心不全のクライアントと比較して,Hedges’ g=1.03(95%CI、0.65-1.42;k=9),Hedges’ g=0.40(95%CI、0.09-0.71;k=4、P<.001)と,冠動脈疾患のクライアントでは機能的能力が高値でありました.

一方でトレッドミル試験(n=9)では,慢性心不全のクライアントでHedges’ g=0.94(95%CI、0.23~1.65;k=2)と冠動脈疾患のクライアントのHedges’ g=0.33(95%CI、0.19~0.47;k=5、P<.01)に比較して,機能的能力が有意に高い結果でありました.

 

 

 

 

 

 

 

研究の結論

Conclusions: According to identified studies, when cycling was the primary mode of exercise in CR, there was larger change in FC compared to treadmill exercise. In addition, CAD patients experienced greater gains in FC when cycling was the primary mode of exercise in CR, while CHF patients benefited more from treadmill-based exercise programs.

特定された研究によると,心臓リハビリテーションにおいて自転車エルゴメーター駆動が主な運動モダリティである場合,トレッドミル運動と比較して機能的能力の変化が大きい結果でありました.

さらに冠動脈疾患のクライアントでは,自転車エルゴメーター駆動を主な運動モダリティとした場合には,トレッドミルをベースとした運動プログラムの恩恵を受けた慢性心不全のクライアントと比較して,より大きな機能的能力の上昇を認めました.

 

今回はトレッドミルと自転車エルゴメーターのどちらが有酸素性能力の向上に有効なのかを明らかにしたメタアナリシス論文をご紹介させていただきまそた.

トレッドミルと自転車エルゴメーターですと,peakVO2は自転車エルゴメーターのが改善が大きいといった結果でした.

これはやはりトレッドミル運動に比較して自転車エルゴメーター運動の方が運動の難易度が低いことに起因するものだと思われます.

トレッドミル運動の場合には,歩行能力の低下等によって十分な運動負荷を加えられない対象者も少なくないことが予想されます.

ただ考えなければならないのは,この結果から自転車エルゴメーター一択といった話にはならないといった点です.

そもそもpeakVO2を改善するだけ,心臓リハビリテーションの目的ではありませんからね.

対象者の状況や目的に応じて自転車エルゴメーターとトレッドミル運動をうまく使い分ける必要があるでしょうね.

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