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変形性股関節症例に対するモビライゼーションの効果
モビライゼーションといえば理学療法士の間で古くから行われてきた治療技術の1つです.
私も若い頃はAKAやSJFといったモビライゼーションの講習会に参加したものです.
最近は海外のコースに参加する理学療法士も増えていますね.
ただモビライゼーションというのはその科学的根拠が怪しいところが多いです.
今回は変形性股関節症例に対するモビライゼーションの効果を明らかにした研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
J Back MusculoskeletRehabil. 2020 Jan 3. doi: 10.3233/BMR-181118. [Epub ahead of print]
The impact of mobilization on hip osteoarthritis.
Maria PK1, Rafał B2, Jakub P1, Leszek J3, Agnieszka G1.
今回ご紹介する論文は2020年1月に掲載された新しい内容です.
研究の背景
Osteoarthritis is one of the most common joint disorders. It causes pain, stiffness and a decreased range of motion which have a significant impact on daily activities and gait, consequently leading to disability.
変形性関節症は最も多い関節障害の1つです.
変形性関節症は,疼痛や関節や筋の硬さ,関節可動域制限の原因になり,日常生活や歩行といった活動にも大きな影響を及ぼします.
研究の目的
The aim of this study is to compare hip mobilization with non-weight bearing exercises.
この研究では股関節モビライゼーションと非荷重下でのエクササイズの効果を比較することを研究目的としております.
研究方法
A total of 57 females aged between 55-65 were divided into 2 groups. In the control group non-weight bearing exercises were conducted, whereas the research group received hip mobilization.
55~65歳の57例の女性を2群の分類しております.
対象群である非荷重下でのエクササイズを行う群と,介入群である股関節モビライゼーションを行う群です.
研究の結果
The Lequesne index significantly improved in the research group as compared with the control group. Hip function improved both in the control and research groups. Active hip extension increased by 0.54, while active abduction rose by 2.14 after non-weight bearing exercises. In the control group after mobilization both passive and active hip extension increased significantly by 3.53, active abduction by 5 and passive by 4.41, while active and passive internal rotation by 3.82 and 4.56, respectively. In both groups pain decreased.
対象群に比較して介入群で有意にLequesne indexに改善がみられております.
また股関節機能は対照群・介入群ともに改善を認めております.
対象群では股関節自動伸展は0.54°,自動外転は2.14°非荷重下でのエクササイズ後に改善しております.
対象群においてもモビライゼーション後に他動・自動股関節伸展可動域が有意に改善し,股関節外転可動域,股関節内旋可動域にも有意な改善を認めております.
両群ともに疼痛は軽減しております.
研究の結論
Mobilization increases hip range of motion, decreases pain and improves hip function more than non-weight bearing exercises.
股関節モビライゼーションは非荷重下での運動に比較して関節可動域を改善し,疼痛を軽減し,股関節機能を改善することが明らかとなりました.
今回は変形性股関節症例に対するモビライゼーションの効果を明らかにした研究論文をご紹介させていただきました.
この手の研究は数が少ないので非常に貴重な内容だと思いますが,どういったモビライゼーションが行われたのかが詳細な記載がない点が大きな限界ですね.
例えば変形性股関節症例であれば臼蓋被覆を考慮した上でのモビライゼーションに焦点を当てるなど,そういった介入研究が待たれるところです.
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