目次
日本理学療法士協会から新人理学療法士職員研修ガイドラインが出される
先日,日本理学療法士協会から新人理学療法士職員研修ガイドラインが出されました.
昨今はリハビリテーション専門職が100名在籍するような大規模な職場も増えておりますが,大規模な職場では体系的な教育プログラムを整備し新人理学療法士の教育を行っている職場も増えてきております.
しかしながら一方で中小規模の職場に関しては体系的な研修プログラムが存在せず,完全にプリセプター任せの教育を行っている施設も少なくありません.
また新人職員の研修をどう計画して良いか分からないといった声も多く聞かれます.
そういった中で出されたのが新人理学療法士職員研修ガイドラインです.
今回は日本理学療法士協会から出された新人理学療法士職員研修ガイドラインについてご紹介させていただきます.
新人理学療法士職員研修ガイドラインとは?
日本理学療法士協会では,卒前教育と卒後教育をシームレスにつなぐ新人理学療法士職員研修が各施設で適切に実施されることで,新人研修の一定水準を担保し,また2022年4月開始の新生涯学習制度における実地研修を見据え,新人理学療法士職員のための研修ガイドラインを発行しました.
このガイドラインは,新人理学療法士職員研修の標準的な指針であり,その基本的な考え方と実施方法などが示されております.
到達目標として,施設の規模や機能にかかわらず,入職後おおよそ1年以内に新人理学療法士職員が到達することが望ましいと考えられる標準的な目標が例示されております.
ガイドラインの目次
ガイドラインの目次は以下のようなものとなっております.
Ⅰ.はじめに
Ⅱ.新人理学療法士職員研修の目的
Ⅲ.新人理学療法士職員研修における組織の体制
1.職場ぐるみで新人理学療法士職員を育成する体制
1)実地指導者
2)職場スタッフの役割
3)研修責任者
4)研修委員会の機能と役割
2.施設規模別の組織体制
1)大規模施設における組織体制
2)小・中規模施設における組織体制
Ⅳ.理学療法士に求められる臨床実践能力と到達目標
1.理学療法士に求められる臨床実践能力
2.新人理学療法士職員の到達目標
Ⅴ.新人理学療法士職員研修の種類
1.人材育成の 3 本柱
2.現場で実践的に指導できる OJT
3.効率的・体系的に教育することができる Off-JT
4.職員のモチベーションを高める SDS
Ⅵ.新人理学療法士職員研修の進め方
1.STEP1 育成方針の明示と組織体制の構築
1)育成方針の明示
2)研修組織体制の構築と各種マニュアルの整備
2.STEP2 育成計画を立てる
1)年間スケジュール
2)到達目標の設定
3)能力評価方法(到達度の判定)
3.STEP3 研修の実施
1)研修の組み合わせによる効果的な育成の展開
2)人材育成の基本をなす OJTーPDCA サイクルに基づく実践ー
4.STEP4 研修の評価と見直し
《 新人理学療法士職員研修プログラム領域別事例集 》
1.急性期病院
1)急性期における新人理学療法士教育の特徴
2)部門全体の人材育成と新⼈教育の位置づけ
3)具体的教育体制
4)入職 1 年での到達レベル
5)チェックリストの作成過程
6)新人教育の開始から OJT の実際
7)OJT 実施上の工夫
2.回復期病院
1)回復期リハビリテーション病棟について
2)回復期リハビリテーション病棟における研修組織体制
3)新人理学療法士職員研修
4)リハビリテーション回診制度
3.慢性期(維持期)病院
1)慢性期医療施設における新⼈教育の特徴
2)慢性期病院(小規模施設)における新人理学療法士職員研修体制について
3)新人理学療法士職員研修の概要
4)育成計画と研修立案のポイント
5)OJT を活用した新人理学療法士職員研修の実際
4.介護保険施設(通所リハビリテーション施設)
1)理学療法士に求められる役割について
2)新人理学療法士職員研修体制
《日本理学療法士協会の新生涯学習制度における実地研修 》
1.前期研修・後期研修及び登録理学療法士の概要と実地研修の位置づけ
2.実地研修の運用と新人理学療法士職員研修ガイドラインの活用方法について
1)D-1︓イ
2)D-1︓ロ
3)D-2︓(「他施設での見学研修」、「e ラーニング」、「症例検討会の聴講」を組み合わせて受講)
3.他施設からの実地研修希望者の受け入れについて
このガイドラインの特徴
私が感じたこのガイドラインの特徴を以下にまとめてみました.
規模別に組織体制が整備されている
理学療法士の職場も数人の中小規模職場から100人以上が所属する大規模職場までさまざまです.
そういった状況の中で職場の大きさ別に組織体制に関する情報が整理されているのは有益ですね.
自施設の状況に合った教育体制の構築に役立てられそうです.
病期別に研修体制が示されている
病期によっても教育方法って違うと思います.
今回のガイドラインでは急性期・回復期・生活期と病期別に情報が整理されている点もありがたいですね.
具体的に時期別に担当患者数の目安も示されている
また時期別に担当患者数の目安が示されております.
どの時期にどのくらいの患者数を担当してもらうのが標準的なのかが示されたのは大きいですね.
PDCAサイクルに沿った教育研修の実践と評価・判定
PDCAサイクルに則った教育研修がこのガイドラインの特徴となっておりますが,評価や判定方法が示されているのもありがたいですね.
評価や判定にあたっては実際に利用しやすいエクセルシートのツールが公開されており,使用しない手はありません.
日本理学療法士協会の新生涯学習制度との関連付け
最後にこのガイドラインは日本理学療法士協会の新生涯学習制度とも関連付けられており,職場での育成の中に日本理学療法士協会の教育プログラムを取り入れながら育成ができると素晴らしいですね.
今回は日本理学療法士協会から公開された新人理学療法士職員研修ガイドラインについてご紹介させていただきました.
教育についてはいまだに系統だった体制が構築できていない中小規模の施設も少なくないと思いますが,今回公開されたガイドラインはかなり実践的な内容で職場における新人理学療法士教育に役立てられそうです.
指導者はもちろん新人理学療法士も是非とも目を通していただきたい内容ですね.
職能団体としてこういったツールを発行していただいた日本理学療法士協会に感謝です.
コメント