変形性膝関節症例に対する減量は食事療法単独と運動療法・食事療法の併用のどちらが有用か?

変形性膝関節症
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変形性膝関節症例に対する減量は食事療法単独と運動療法・食事療法の併用のどちらが有用か?

本邦における変形性膝関節症例は肥満による一次性の変形性関節症が大きな割合を占めます.

変形性膝関節症例においては治療の一環として減量することが重要となります.

以前にもこのブログの中で変形性膝関節症例の肥満に関する記事を取り上げさせていただきました.

 

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最近は減量によって力学的負荷を減少させるのみならず,肥満細胞を減少させることそのものが変形性膝関節症の治療に有効だと考えられてきております.

変形性膝関節症例が減量を行う上では,食事療法と運動療法といった手段が考えられますが,疼痛が強く運動療法が十分に実践できない変形性膝関節症例も少なくありません.

今回は変形性膝関節症例に対する減量は食事療法単独と運動療法・食事療法の併用のどちらが有用かを明らかにした研究をご紹介させていただきます.

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今回紹介する論文

Semin Arthritis Rheum. 2019 Apr;48(5):765-777. doi: 10.1016/j.semarthrit.2018.06.005. Epub 2018 Jun 21.

Diet-induced weight loss alone or combined with exercise in overweight or obese people with knee osteoarthritis: A systematic review and meta-analysis.

Hall M, Castelein B, Wittoek R, Calders P, Van Ginckel A.

今回ご紹介する論文は2019年に掲載された新しい論文です.

 

 

 

 

 

 

研究の目的

The purposes were to (i) determine the effect of diet-only treatments and combined diet and exercise treatments on pain and physical function and (ii) explore the effect of these treatments on inflammatory biomarkers in overweight and obese adults with knee osteoarthritis.

この研究では食事療法単独または運動療法・食事療法の併用が肥満を合併した変形性膝関節症例の疼痛,身体機能,炎症関連マーカーに与える影響を明らかにすることを目的としております.

 

 

 

 

 

 

研究方法

Five electronic databases were searched until March 2017. Randomised controlled trials investigating the effect of non-surgical non-pharmacological weight loss treatment, with or without exercise, on self-reported pain and/or physical function and/or inflammatory biomarkers were selected. Two review authors independently extracted data and assessed risk of bias for each study. Standardised mean differences (SMD) of outcomes were pooled as appropriate, using a random effects approach.

研究デザインはシステマティックレビュー・メタアナリシスとなっております.

5つのデータベースを用いて2017年3月時点での論文を抽出しております.

減量(運動療法の有無)が患者立脚型の疼痛および身体機能,炎症関連マーカーに与える影響を調査した無作為化比較試験を抽出しております.

 

 

 

 

 

 

研究の結果

2676 articles were identified, 19 met review criteria and 9 met criteria for meta-analyses. Diet-only treatments did not reduce pain (SMD -0.13; 95% confidence interval, CI: -0.37, 0.10; I2 = 49%) while a combination of diet and exercise treatments did reduce pain moderately (SMD -0.37; 95%CI: -0.69, -0.04; I2 = 54%). Physical function improved moderately with diet treatments (SMD -0.30; 95%CI: -0.52, -0.08; I2 = 47%) and combined diet and exercise treatments (SMD -0.32; 95%CI: -0.56, -0.08; I2 = 24%). Of the inflammatory markers assessed, only IL-6 reduced with diet-only treatments (SMD -0.23; 95%CI: -0.45, -0.02; I2 = 0%).

2,676本の記事からレビュー取込基準に該当する19編,メタアナリシス取込基準に該当する9編を分析対象としております.

結果ですが,食事療法単独では疼痛の軽減に有意な変化は無く,一方で食事療法と運動療法を併用すると疼痛に中等度の軽減が得られることが明らかにされております.

身体機能については食事療法単独,食事療法と運動療法の併用いずれも向上がみられております.

炎症マーカーについてはインターロイキン6のみ食事療法単独の介入で減少しております.

 

 

 

 

 

 

研究の結論

Overall, moderate pain-relief is achievable with a combination of diet and exercise, but potentially not with diet-only treatments. Findings support that either diet-only treatments or combined diet and exercise treatments moderately improve physical function. Overall, treatment effects on inflammatory biomarkers are questionable.

肥満を合併した変形性膝関節症例における疼痛軽減には食事療法単独ではなく食事療法と運動療法の併用が有効であることが明らかとなりました.

炎症性マーカーの改善については食事療法・運動療法による効果については懐疑的なものであると考えられます.

 

今回は変形性膝関節症例に対する減量は食事療法単独と運動療法・食事療法の併用のどちらが有用かを明らかにした報告をご紹介させていただきました.

食事療法と運動療法の併用が疼痛軽減に有効であるといったデータはわれわれ理学療法士にとっても心強いものですが,結局のところ運動療法の内容が重要であることは言うまでもありません.

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