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脊椎の柔軟性低下が人工股関節全置換術(THA)後の脱臼リスクを高める
人工股関節全置換術後の合併症として脱臼が挙げられます.
理学療法士・作業療法士が人工股関節全置換術(THA)後の症例に対して脱臼予防を目的とした日常生活指導を行うことも多いと思います.
このブログの中でも人工股関節全置換術(THA)後の脱臼について何度も取り上げてきました.
人工股関節全置換術(THA)後の脱臼を考える上では脊椎の柔軟性が重要です.
今回はなぜ人工股関節全置換術(THA)後の脱臼予防に脊椎の柔軟性改善が重要かについて考えてみたいと思います.
人工股関節全置換術(THA)後の脱臼
人工股関節全置換術(THA)後の脱臼に関してはカップの設置角度が重要視され,いわゆるsafe zoneと呼ばれる安全な範囲が設定されております.
以前に比較して骨頭径の大きさやインプラント形状の改善によりオシレーション角が拡大し,脱臼のリスクが低くなっていることも確かです.
人工股関節全置換術(THA)後の脱臼を調査した報告によると脱臼を生じたクライアントの約58%はカップの設置角度に問題はないにもかかわらず脱臼を生じていたことが明らかにされております.
また脱臼に関連する人工股関節そのものの影響に加え脊椎柔軟性の問題が注目されております.
脊椎柔軟性低下と股関節屈曲に伴うインピンジメント
ではなぜ脊椎柔軟性低下が脱臼リスクを向上させてしまうのでしょうか?
仮に脊椎の屈曲方向の柔軟性が低下してしまうと前屈動作時に骨盤が大きく前傾し,左側の絵のように股関節前面でのインピンジメントが生じやすくなってしまいます.
このインピンジメントが後方脱臼のリスクを高めるわけです.
仮に右側の絵のように胸腰椎を屈曲して前屈動作を行うことができれば股関節の過度な屈曲が生じることがありませんので,インピンジメントによる脱臼を回避できるわけです.
興味深いことに脊椎固定術の既往のある人工股関節全置換術(THA)症例では,固定術を行っていない症例に比較して人工股関節全置換術(THA)後の後方脱臼のリスクが高くなることも明らかにされております.
また多椎間に及ぶ腰椎椎間板変性を合併した症例についても人工股関節全置換術(THA)後の脱臼リスクが高くなることが明らかにされており,人工股関節全置換術(THA)後の脱臼を考える上では脊椎の柔軟性に着目することが重要になりそうです.
参考文献
今回はなぜ人工股関節全置換術(THA)後の脱臼予防に脊椎の柔軟性改善が重要かについて考えてみました.
理学療法士・作業療法士が脊椎柔軟性に対して介入することが脱臼予防につながるかもしれませんね.
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