人工膝関節全置換術症例に対して手術日に理学療法開始するのって早すぎない?

人工膝関節全置換術
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TKA例に対して手術日に理学療法開始するのって早すぎない?

理学療法も早期介入が当たり前の時代となりました.

脳卒中の急性期でも入院当日からの理学療法介入が当たり前の時代となっておりますが,運動器疾患の場合には入院して手術をしてといった流れをふむことが多いので,術前理学療法はともかく手術日は理学療法も休みとすることが多いと思います.

しかしながらここ数年,手術同日の理学療法開始に関する論文が多くなってきております.

今回は人工膝関節全置換術後の手術日における理学療法開始の効果を明らかにした研究論文をご紹介させていただきます.

medical professionals working

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回ご紹介する論文

J Arthroplasty. 2019 Dec;34(12):2931-2936. doi: 10.1016/j.arth.2019.07.029. Epub 2019 Jul 29.

Same-Day Physical Therapy Following Total Knee Arthroplasty Leads to Improved Inpatient Physical Therapy Performance and Decreased Inpatient Opioid Consumption.

Sarpong NO1, Lakra A1, Jennings E1, Cooper HJ1, Shah RP1, Geller JA1.

今回ご紹介する論文は2019年12月に掲載された新しい論文です.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の背景

Early ambulation with physical therapy (PT) following total knee arthroplasty (TKA) has demonstrated benefits in the literature. However, the impact of early PT on rehabilitation performance and opioid consumption has not been elucidated. We evaluate the effect of same-day PT on inhospital functional outcomes and opioid consumption.

過去の報告でも,人工膝関節全置換術例を対象とした理学療法による早期離床が有効であることは既に明らかにされております.

しかしながら早期理学療法介入がオピオイドの消費量に与える影響というのは明らかにされておりません.

この研究では手術日からの理学療法開始が入院中の機能的アウトカムやオピオイド消費量に与える影響を明らかにすることを研究目的としております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の方法

We retrospectively identified 2 cohorts of primary TKA patients from July 2016 to December 2017: PT0 (n = 295) received PT on the day of surgery, and PT1 (n = 392) received PT on postoperative day (POD) 1. Outcomes studied included number of feet walked on POD0-3, visual analog scale pain scores, morphine equivalents (ME) consumed, length of stay, and discharge disposition. Analysis was conducted using the Student t-test and Fisher exact test.

この研究では後方視的に初回TKAを行った症例を手術当日から理学療法を開始した295例と手術翌日より理学療法を開始した392例に分けて調査を行っております.

アウトカムは術後0-3日目の歩数,VAS,モルヒネの投与量,在院期間,転帰先となっております.

統計学的解析にはスチューデントのt検定またはフィッシャーの正確確率検定を使用しております.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の結果

In comparison to the PT1 group, the PT0 group walked significantly more steps on POD1 (347.6 vs 167.4 ft, P < .0001), POD2 (342.1 vs 203.5 ft, P < .0001), and POD3 (190.3 vs 128.9 ft, P = .00028). There was no difference between the 2 groups for visual analog scale. The PT0 group also consumed significantly fewer total ME when compared to the PT1 group (149.0 vs 200.3 mg, P = .0002). The PT0 group had a significantly shorter length of stay when compared to the PT1 group (2.7 vs 3.2 days, P = .00075). More patients were discharged home in the PT0 group (81.7% vs 54.8%, P < .0001).

人工膝関節全置換術翌日より理学療法を開始した群に比較して,手術当日に理学療法を開始した群は術後1日目,2日目,3日目における歩数が有意に多い結果でありました.

なお2群間でVASに有意差は認めませんでした.

また手術当日に理学療法を開始した群で手術翌日より理学療法を開始した群に比較して有意にモルヒネ投与量が少ない結果でありました.

さらに理学療法を手術日より開始した群で,有意に在院期間が短く,自宅復帰率も高いといった結果でありました.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

研究の結論

We observed that initiation of PT on POD0 led to better PT performance, reduced ME during hospitalization, and more patients discharged home.

この研究結果から,手術当日より理学療法を開始することが,術後早期の活動量を増加させ,モルヒネ投与量や在院期間,自宅復帰率といったアウトカムの向上にも有益であることが明らかとなりました.

 

今回は人工膝関節全置換術後の手術日における理学療法開始の効果を明らかにした研究論文をご紹介させていただきました.

正直,現場で理学療法を提供する身からすると,手術当日から開始しなくとも,1日くらいたいして変わらないのではといったような思いもありましたが,こういったデータが出てくると,今後は人工膝関節全置換術例に対する理学療法も手術日からの開始が当たり前になっていくかもしれませんね.

 

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