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ラジオ体操で2型糖尿病患者の筋肉量を増加させることができる?
ラジオ体操といえば日本人にとってはなじみの深い体操であり,日本人であれば誰でもできるといっても過言ではないほど多くの日本人が行える体操の1つです.
理学療法士・作業療法士の皆様も子どもの頃にラジオ体操をされたのではないでしょうか?
過去にもラジオ体操に関連する原著論文をご紹介させていただきました.
今回はラジオ体操で2型糖尿病患者の筋肉量を増加させることができるか否かを明らかにした研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
BMJ Open Diabetes Res Care. 2020; 8(1): e001027.
Published online 2020 Feb 24. doi: 10.1136/bmjdrc-2019-001027
PMCID: PMC7206923
PMID: 32098897
Japanese radio calisthenics prevents the reduction of skeletal muscle mass volume in people with type 2 diabetes
Tomonori Kimura, Takuro Okamura, Keiko Iwai, Yoshitaka Hashimoto, Takafumi Senmaru, Emi Ushigome, Masahide Hamaguchi, Mai Asano, Masahiro Yamazaki, and Michiaki Fukuicorresponding author
今回ご紹介する論文は2020年に掲載された新しい論文です.
本邦で行われた研究ですね.
研究の目的
Reduction of muscle mass and strength is an important treatment target for patients with type 2 diabetes. Recent studies have reported that high-intensity resistance training improves physical function; however, all patients found it difficult to perform high-intensity resistance training. Radio calisthenics, considered as therapeutic exercises to promote health in Japan, are simple exercises that can be performed regardless of age and help move the muscles and joints of the whole body effectively according to the rhythm of radio. We investigated the efficacy of radio calisthenics for muscle mass in patients with type 2 diabetes in this retrospective cohort study.
2型糖尿病患者にとって,筋量・筋力の低下は重要な治療目標となります.
最近の研究では,高強度レジスタンストレーニングが身体機能を改善することが報告されておりますが,すべてのクライアントに対して高強度レジスタンストレーニングを行うことは困難であります.
本邦では健康増進のための治療運動としてラジオ体操が用いられておりますが,ラジオ体操は年齢に関係なく行える簡単な運動であり,ラジオのリズムに合わせて全身の筋肉や関節を効果的に動かすことができるといった利点が挙げられます.
この研究では2型糖尿病症例を対象として,ラジオ体操の実践が筋肉量に与える有効性を後ろ向きコホート研究を用いて検討することを目的としております.
研究デザインと方法
A total of 42 hospitalized patients with type 2 diabetes were recruited. The skeletal muscle mass index (SMI, kg/m2) was calculated as appendicular muscle mass (kg) divided by height squared (m2). We defined the change of SMI as the difference of SMI between the beginning and end of hospitalization.
2型糖尿病を合併した入院例 42 例を対象としております.
骨格筋量指数(SMI,kg/m2)は,体肢骨格筋量(kg)を身長の2乗(m2)で除して算出しております.
SMIの変化を入院開始時と終了時のSMIの差と定義しております。
研究の結果
Among 42 patients, 15 (11 men and 4 women) performed radio calisthenics. Body weights of both radio calisthenics exercisers and non-exercisers decreased during hospitalization. The change of SMI was significantly lesser in radio calisthenics exercisers than in non-exercisers (7.1±1.4 to 7.1±1.3, –0.01±0.09 vs 6.8±1.1 to 6.5±1.2, –0.27±0.06 kg/m2, p=0.016). The proportion of decreased SMI was 85.2% (23/27 patients) in non-radio calisthenics exercisers, whereas that in radio calisthenics exercisers was 46.7% (7/15 patients).
42例のうちラジオ体操を行ったのは15例(男性11例,女性4例)でありました.
ラジオ体操を行っている例,行っていない例いずれにおいても入院中に体重が減少しておりました.
SMIの変化は,ラジオ体操を行っている例でラジオ体操を行っていない例よりも有意に少ない結果でありました(7.1±1.4~7.1±1.3,-0.01±0.09 vs 6.8±1.1~6.5±1.2,-0.27±0.06 kg/m2,p=0.016).
SMI減少率はラジオ体操を行っていない例では85.2%(23/27人)であったのに対し,ラジオ体操を行った例では46.7%(7/15人)でありました.
研究の結論
Radio calisthenics prevent the reduction of skeletal muscle mass. Thus, radio calisthenics can be considered effective for patients with type 2 diabetes.
ラジオ体操を行うことで,骨格筋量の減少を防止することが可能であることが明らかとなりました.
ラジオ体操は2型糖尿病例の筋肉量に対しても有効であると考えられます.
今回はラジオ体操で2型糖尿病患者の筋肉量を増加させることができるか否かを明らかにした研究論文をご紹介させていただきました.
ラジオ体操を行う群と行わない群に無作為に割り付けた研究ではありませんので,ラジオ体操を行う糖尿病例の方が健康意識が高く他の運動にも取り組んでいる可能性があることを考えるとラジオ体操だけの効果かどうかが怪しいですが,簡単に取り入れられる運動ですし,糖尿病を合併した症例にラジオ体操を勧めるのは良いかもしれませんね.
早朝の低血糖には注意が必要ですが…
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