目次
痛みの定義が41年ぶりに変わる 理学療法士・作業療法士必見
理学療法士・作業療法士が行う機会の多い評価として疼痛の評価が挙げられます.
運動器疾患はもちろんのこと中枢神経疾患のクライアントや内部障害関連の疾患を有するクライアントにおいても主訴として疼痛を訴えるクライアントは少なくないと思います.
既にご存知の方も多いと思いますが2020年7月17日にPAINという雑誌の中で痛みに関する新しい定義が発表されました.
今回は痛みの新しい定義について考えてみたいと思います.
これまでの痛みの定義
ちなみにこれまでの痛みの定義はどんなものだったのでしょうか?
といった定義でした.
日本語訳すると
と定義されてきました.
この定義については痛みに関する書籍や総説論文の中で目にすることが多かった定義です.
PAINに発表された新たな痛みの定義
今回発表された定義がこれです.
日本語訳すると
遂に新たな定義がPAINで発表されました.(2020年5月)全文無料で見ることができます↓
ちなみにこの論文の共著者の中には愛知医科大学学際的痛みセンターの牛田享宏先生も入っておられます.
6つのkey notes
今回の新しい定義の特徴ですが,6つのキーノートが示されている点です.
- 痛みは常に個人的な経験であり,生物学的,心理学的,社会的要因によって程度の差こそあれ影響を受けます.
- 痛みと侵害受容は異なる現象です.
- 痛みは感覚ニューロンの活動だけから推測することはできません.
- 個人は人生経験を通して痛みの概念を学びます.
- 痛みは通常,適応的な役割を果たしていますが,機能や社会的・心理的な幸福に悪影響を及ぼす可能性があります.
- 言葉による説明は,痛みを表現するためのいくつかの行動のうちの一つにすぎず,コミュニケーションができないからといって,人間や非人間の動物が痛みを経験する可能性を否定するものではありません.
今回の定義に関して言えば上述した痛みの定義に加えて,この6つのキーノートが示された点が非常に重要です.
この部分に心理社会的な要因によって影響を受けることや,人生経験にも影響を受けるとされております.
新しい痛みの定義の特徴は?
新しい痛みの定義の特徴的な点は,情動体験が含まれている点です.
また心理社会的な要因に影響を受けるといった点が明記され,社会的・心理的な幸福感にも影響を及ぼすことが明記されております.
PSBモデルからBPSモデルへの転換がはかられたということが明記されたのも大きいですね.
侵害受容刺激=痛みではないということが明記されたのもポイントでしょうか.
今回は痛みの新しい定義について考えてみました.
ここ数年で理学療法士・作業療法士による痛み研究というのもかなり進んでおり,特に慢性痛に対するアプローチに関しては従来の解剖学・運動学に基づく徒手的な介入では対峙できるものではないといったことも明らかです.
そういった中で今回痛みの定義が新たしくなったのは非常に大きいですね.
参考文献:APA Raja, Srinivasa N.a,*; Carr, Daniel B.b; Cohen, Miltonc; Finnerup, Nanna B.d,e; Flor, Hertaf; Gibson, Stepheng; Keefe, Francis J.h; Mogil, Jeffrey S.i; Ringkamp, Matthiasj; Sluka, Kathleen A.k; Song, Xue-Junl; Stevens, Bonniem; Sullivan, Mark D.n; Tutelman, Perri R.o; Ushida, Takahirop; Vader, Kyleq The revised International Association for the Study of Pain definition of pain, PAIN: May 23, 2020 – Volume Articles in Press – Issue –doi: 10.1097/j.pain.0000000000001939
コメント
[…] 痛みの定義が41年ぶりに変わる 理学療法士・作業療法士必見今回は痛みの新しい定義について考えてみました. ここ数年で理学療法士・作業療法士による痛み研究というのもかなり進 […]
[…] 痛みの定義が41年ぶりに変わる 理学療法士・作業療法士必見今回は痛みの新しい定義について考えてみました. ここ数年で理学療法士・作業療法士による痛み研究というのもかなり進 […]