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変形性膝関節症例における歩行中のlateral thrustと腰痛との関連
変形性膝関節症例に多いのが腰痛症の合併です.
この変形性膝関節症例における腰痛は変形性膝関節症とは無関係と考えがちですが,変形性膝関節症が起因となって腰痛症を発症するといった症例も少なくありません.
今回は理学療法士の視点で変形性膝関節症例における変形性膝関節症例における歩行中のlateral thrustと腰痛との関連を明らかにした報告をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Arthritis Care Res (Hoboken). 2019 Jun 29. doi: 10.1002/acr.24020. [Epub ahead of print]
Relationship between varus thrust during gait and low back pain in people with knee osteoarthritis.
Iijima H, Suzuki Y, Aoyama T, Takahashi M.
今回ご紹介いたします論文は2019年に掲載された新しい論文です.
研究の目的
To test the hypothesis that varus thrust visualized during gait is associated with a higher prevalence of low back pain (LBP) in individuals with knee osteoarthritis (OA).
この研究では変形性膝関節症例における歩行中のlateral thrustと腰痛との関連を明らかにすることを研究目的としております.
研究方法
Individuals with knee OA (Kellgren and Lawrence grade ≥ 1) underwent a gait observation to assess varus thrust. The participants identified LBP and its severity using questionnaires. Logistic regression analyses were performed to examine the association between varus thrust and LBP.
研究対象はKellgren Lawrence分類でgradeが1以上の変形性膝関節症例のうち,歩行時のlateral thrustの評価を行った症例となっております.
腰痛については質問紙を用いて腰痛の有無と腰痛の重症度を評価しております.
最終的にロジスティック回帰分析を用いて,歩行中のlateral thrustと腰痛との関連性を検討しております.
研究結果
We included 205 participants (mean age, 68.19 years; 72.20% women). Forty-five (22.0%) participants showed varus thrust in their painful knee, in whom 31 (68.89%) and 18 (40.00%) were identified as any LBP and moderate to severe LBP (numeric rating scale ≥ 4 points), respectively. Patients with varus thrust demonstrated a 3.6-fold higher risk of the presence of moderate to severe LBP (95% confidence interval [CI], 1.62, 8.10). In LBP patients, the presence of varus thrust was associated with more severe LBP intensity (proportional odds ratio, 2.25; 95% CI, 1.02, 4.96).
最終的に205例の変形性膝関節症例が対象となっております.
このうち45例で疼痛を伴った歩行中のlateral thrustが観察され,そのうち31例(68.89%)が腰痛を合併しており,18例(40%)が中等度から強度の腰痛(NRSで4以上)を合併しておりました.
また歩行中にlateral thrustを合併した症例は中等度から強度の腰痛の出現率が3.6倍高くなることが明らかにされております.
腰痛を有する症例のみを対象とした検討でも,歩行中のlateral thrustの存在がより強い腰痛と関連しておりました.
研究の結論
This study highlights the novel relationship between varus thrust and LBP, which supports the idea of a biomechanical link, the so-called knee-spine syndrome. These findings provide new insight for clarifying the pathogenesis of knee OA-related LBP.
この研究によって歩行中のlateral thrustと腰痛との関連性が明らかとなりました.
knee spine syndromeという概念が示すように,運動力学的な観点から膝関節と腰部との関連性を考えていく必要があると考えられます.
今回は理学療法士の視点で変形性膝関節症例における変形性膝関節症例における歩行中のlateral thrustと腰痛との関連を明らかにした報告をご紹介させていただきました.
腰椎後弯姿勢→骨盤後傾→股関節外転・外旋→下腿外旋といった下行性運動連鎖をたどる症例というのは少なくありません.
腰椎後彎に伴う腰痛と下腿外旋にともなう内反モーメントの増加によるlateral thrustに関連があるというのは運動連鎖を考えれば理解できますね.
われわれ理学療法士が腰痛を合併した変形性膝関節症例を担当した際には,運動力学的な視点で膝関節アライメントと席つアライメントとの関連性を評価する必要があることを裏付ける研究結果ではないかと思います.
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