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内側型変形性膝関節症例に対するラテラルウェッジ挿入の効果がある人と無い人っていますよね?
内側型変形性膝関節症例に対する保存療法の中で理学療法士が行うことが多いのが足底板を使った介入です.
内側型変形性膝関節症例の場合には,膝関節内反モーメントの軽減を図るために外側楔状足底板(ラテラルウェッジ)を挿入することが多いと思います.
しかしながら内側型変形性膝関節症例に対するラテラルウェッジって本当に効果があるのでしょうか?
今回は内側型変形性膝関節症例に対するラテラルウェッジの効果を明らかにした研究論文をご紹介させていただきます.
今回ご紹介する論文
Gait Posture. 2019 Feb;68:443-448. doi: 10.1016/j.gaitpost.2018.12.030. Epub 2018 Dec 22.
Effect of lateral wedged insoles on the knee internal contact forces in medial knee osteoarthritis.
Mannisi M1, Dell’Isola A2, Andersen MS3, Woodburn J4.
今回ご紹介する論文は2019年に掲載された比較的新しい論文です.
研究の背景
Lateral wedge insoles (LWIs) are non-surgical interventions used in medial knee osteoarthritis (KOA) aiming at restoring correct joint biomechanics. However, the mechanical efficacy of LWIs, based on modulation of the external knee adduction moment, is partially proved and high variability in response to these devices was observed.
ラテラルウェッジインソール(LWIs)は,正常な関節バイオメカニクスの再建を目的として,内側型変形性膝関節症例に対して行われる保存的治療の1つです.
しかしながら外部膝関節内転モーメントの観点から,ラテラルウェッジの力学的な効果を明らかにした報告は十分ではありません.
またラテラルウェッジに対する効果に関しても対象者による反応のバラツキが報告されております.
確かに印象としては効果のある人には効果があるけども,無い人には無いというのが実際の印象だと思います.
研究疑問
The principal aim of the study was to employ subject-specific musculoskeletal models to investigate the immediate effect of LWIs on the medial compressive force (MCF) in a population with medial KOA and varus alignment.
この研究の主目的は,筋骨格系モデルを用いて,内側型変形性膝関節症例および膝関節内反アライメントを有する症例を対象として,ラテラルウェッジが膝関節内側の圧縮力に与える影響を調査することとなっております.
研究の方法
Fifteen adults (8 healthy controls age 56±3.4, BMI 25.2±2.2, hip-knee-ankle angle -1.3±2.3; and 7 KOA participants age 62±6.6, BMI 31.7±3.9, hip-knee-ankle angle 6.3±2) were recruited. Subject-specific LWIs were designed in CAD based on shape capture of the foot and manufactured via 3D printing. The required degree of heel post was added to the orthotic shell to create insoles with 0°, 5° and 10° of lateral wedge. Gait data were collected for each condition and a musculoskeletal model implemented in the Anybody Modeling System estimated the CFs normalised per bodyweight. The effect of the LWIs with respect to the baseline on the peak and the impulse of the MCF were tested with a Wilcoxon non-parametric test for paired samples.
研究の対象は15例の高齢者(健常例8名,年齢56±3.4歳,BMI 25.2±2.2,股・膝・足角1.3±2.3°と内側型変形性膝関節症例7名,年齢62±6.6歳,BMI 31.7±3.9、股・膝・足角6.3±2°)となっております.
対象者毎に足部の形状に基づいてCADおよび3Dプリントを使用してラテラルウェッジを作成しております.
必要な程度のヒールポストをインソールに追加し,0°・5°・10°のウェッジを設定したインソールを作成しております.
各条件について歩行データを収集し,Anybody Modeling Systemで実装された筋骨格系モデルにより,体重あたりの関節圧縮応力を推定しております.
ベースライン・ウェッジ条件間における内側圧縮応力のピークおよびインパルスをWilcoxonの符号付順位和検定を用いて比較しております.
研究の結果
For the KOA group, LWIs did not reduce significantly the impulse and the peak of the MCF. No dose-response trend according to the degree of wedging was observed. A high inter-subject variability was found: the impulse of the MCF varied between -12%, +10%, the peak between -5%, +7%. Moreover, LWIs had no consistent effect on shifting the load from the medial to the lateral compartment.
結果ですが内側型変形性膝関節症例においては,ラテラルウェッジ挿入による内側圧縮応力のインパルスおよびピーク値に有意な現象は認めませんでした.
さらにウェッジの角度変化に伴うインパルス・ピーク値の変化も認めませんでした.
ベースラインと比較して,内側圧縮応力のインパルスは-12%から+10%,ピークは-5%から+7%の間で変動しており,被験者間のばらつきが大きい結果でありました.
さらに外側ラテラルウェッジ挿入による内側コンパートメントから外側コンパートメントへの力学的負荷のシフトも認めませんでした.
研究の重要なポイント
Subject-specific response to LWIs in a cohort of medial KOA patients was observed. Further studies are necessary to maximise the mechanical effect of LWIs on restoring normal knee joint mechanics.
内側変形性膝関節症例においては,外側ラテラルウェッジに対する個人間の特異的な反応が観察されました.
正常な膝関節の力学を再建するため,外側ラテラルウェッジの効果を最大化するために,今後さらなる研究が必要です.
今回は内側型変形性膝関節症例に対するラテラルウェッジの効果を明らかにした研究論文をご紹介させていただきました.
われわれ理学療法士が普段持っている印象と同じ結果だと思います.
つまりラテラルウェッジ挿入による内側圧縮応力の軽減は個人間でかなりばらつきがあり,一様にラテラルウェッジが内側圧縮応力を軽減させるわけではないといった結果です.
われわれ理学療法士がラテラルウェッジを使用する場合には,ただ挿入しっぱなしではなく,動作分析を通じてどのように内反モーメントが変化するかを評価することが重要でしょうね.
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