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まさかまだコンプライアンスって言葉を使っていませんか?
理学療法士・作業療法士がクライアントに対して,理学療法や作業療法を提供する上でクライアントの主体性って重要ですよね.
以前はリハビリテーションに対して非協力的であったり理解が得られないクライアントに対して,コンプライアンスが不良であるといったような表現を用いておりましたが,最近はコンプライアンスという言葉を耳にすることは少なくなってきましたね.
最近はコンプライアンスといった用語の代わりに,アドヒアランスという言葉用いられることが多くなっております.
今回は理学療法士の視点でこのアドヒアランスについて考えてみたいと思います.
アドヒアランスって何?
アドヒアランスというのは,クライアントが責任ある意思決定をして主体的に取り組むことを指します.
昔で言うところのコンプライアンスに近い意味ではあります.
疾患に関わらず,クライアントが日常生活の中で,自身の疾病や生活を管理していくことが重要となりますが,自己管理というのは容易ではありません.
クライアントがリハビリテーションに長期的に取り組んでいくためには,医療者の視点からの判断のみならず,クライアント自身の責任ある自己決定というのが重要となります.
そのためには,医療の現場で従来用いられてきたコンプライアンスにとどまらず,クライアントがより主体的に治療やケアに取り組んでいくアドヒアランスを考慮に入れることが重要となります.
WHO(世界保健機構)は,2001年にコンプライアンスではなくアドヒアランスという考え方を推奨するという方向性を示しております.
コンプライアンスとアドヒアランスの違い
クライアントがリハビリテーションをどのように実行しているかを表す言葉が,コンプライアンスやアドヒアランスです.
コンプライアンスというのは,クライアントが医療者からの指示に受身的に従うことを指します.
これに対して,アドヒアランスというのはクライアントが責任ある意思決定をして主体的に取り組むことを指します.
つまりコンプライアンスというのは,あくまで医療者側の視点で,クライアントが理学療法士や作業療法士の指導に従っているかどうかを判断する指標となります.
従来から,クライアントが指示に従う行動を「コンプライアンス行動」,逆に医療者が指示したことを守らないことを「ノンコンプライアンス行動」と区別して使ってきたところがあります.
ここで重要なのは,ノンコンプライアンスとした場合には,自己決定によりリハビリテーションを中断・拒否する場合も,単に知識不足だったり,思い違いをしている場合も,全て含まれることになります.
クライアントがリハビリテーションに取り組む上では,クライアントの主体性が重要となりますので,こう考えると受身的なコンプライアンスという考え方に限界があるといえるでしょう.
PT・OTもアドヒアランスを意識してクライアントに関わることが重要
アドヒアランスという言葉は,元来粘り強さを表現する言葉です.
スポーツの分野では,スポーツ選手が粘り強く困難に打ち勝ち,勝利を収めるといった意味で,アドヒアランスという言葉が用いられてきた経緯があります.
医療の現場では,アドヒアランスという言葉が用いられるようになってきたのは最近のことでしょうか.
われわれ理学療法士・作業療法士にとっては,クライアントの主体性を引き出し,クライアントの自己決定を促す視点が非常に重要となります.
エビデンスに則ってこういったリハビリテーションの方法があり,それぞれの成果がこういう状況ですといったあたりを提示した上で,クライアントに主体的に自己決定をしてもらうということが重要となります.
昨今問題視されているのが,リハビリテーションサービスというのは,ほとんどが個々の理学療法士・作業療法士にゆだねられているところがあり,クライアントの主体性が無視されているという点です.
クライアントが受身的に理学療法・作業療法を受けるということが多いのが実際だと思います.
今回は理学療法士の視点でこのアドヒアランスについて考えてみました.
理学療法士・作業療法士の皆さんが,日々のリハビリテーションサービスを提供する上で,クライアントの主体性や自己決定を促すような方策について考える機会になればうれしいです.
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