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理学療法士・作業療法士がクライアントに力を抜いてもらうにはどうすればよいのか?
理学療法士・作業療法士がクライアントに対して関節可動域運動等を行う際に問題になるのが,クライアントが脱力できないといった現象です.
もう少し力を抜いてくださいなんて,クライアントに声掛けをする理学療法士・作業療法士も多いと思いますが,それでもなかなか脱力するのって難しいですよね?
今回は理学療法士・作業療法士がクライアントに力を抜いてもらうにはどうすればよいのかについて考えてみたいと思います.
支持面を広くとろう
まずクライアントに脱力していただくためには支持面を広く取るといった方策が必要です.
例えば下肢を他動的に挙上した際には力が入るけども,安静臥位の状況では脱力できているのであれば,他動運動時にも支持面を広げることでクライアントは脱力できるかもしれません.
支持面というのは,ヒトと外部環境との接触面のことを指しますが,支持面が広ければ広いほど姿勢が安定し,筋の過緊張を抑制することが可能となります.
この支持面を意識してクライアントに接触するだけでもクライアントの筋緊張は大きく変化します.
例えばクライアントの上肢を支える際に,手首のみを支えるような接触面積が狭い状態ですと運動方向の主動作筋に力が入ってしまいます.
可動域運動時には可能な限り筋を弛緩させることが重要です.
立位で肩関節屈曲方向の可動域運動を行うことはありませんが,このような場合には一番右のようにしっかりと支持面を広げると三角筋前部線維の過緊張に改善が得られます.
下肢の場合も同様です.
踵のみの支持では股関節屈筋群や膝関節伸展筋群に過剰な筋活動が生じます.
下の図のように下腿後面からしっかりと支持面を広くして支えるとクライアントは脱力することができます.
安定性も重要
また支持面自体の安定性も重要です.
支持面が安定していないと支持面が広くてもクライアントの過緊張を抑制することはできません.
例えば下肢を挙上した際に理学療法士が両上肢で下肢を支えるよりも,何らかの台の上に下肢を載せて支える方がクライアントの過緊張は改善します.
これは理学療法士・作業療法士の両上肢よりも台の方が安定性が高いからです.
このように支持面の広さと安定性に着目して操作するといった視点を持つだけでも,クライアントは脱力できるようになります.
相反抑制を使おう
クライアントに脱力してもらうために相反抑制を効果的に使用するのもお勧めです.
例えば膝関節屈曲運動時に膝関節伸展筋である大腿四頭筋に防御性収縮が生じてしまうような場合には,膝関節伸展筋の拮抗筋であるハムストリングスに抵抗を加え,等尺性収縮をさせることで大腿四頭筋の収縮を抑制することが可能となります.
また膝関節屈曲運動時にハムストリングスを収縮させながら自動介助で関節運動を行うと大腿四頭筋の収縮を抑制することが可能となります.
このようにどの筋の収縮を抑制したいかを考慮した上で,相反抑制を効果的に使えばクライアントが脱力した上で他動運動を行いやすくなります.
今回は理学療法士・作業療法士がクライアントに力を抜いてもらうにはどうすればよいのかについて考えてみました.
キーワードは支持面の広さ・安定性と相反抑制です.
理学療法士・作業療法士の皆様の日々の臨床に活かしていただければ嬉しいです.
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