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理学療法士は運動と運動療法の違いを理解しておくべき
今や毎晩のように健康番組で運動の重要性が周知され,クライアントの中にも非常に運動に関する知識をもたれている方っていらっしゃいますよね.
でもそもそも世間一般でいうところの運動とわれわれが提供する運動療法って何が大きく異なるのでしょうか?
今年の夏に日本理学療法士協会会長の半田会長より理学療法士や運動ではなく運動療法を提供しましょうといった主旨のコメントが出されました.
この発言の意味は理学療法士がただただクライアントの横に立ってクライアントの運動に付き添っているだけになってませんかといった警告でもあります.
なんちゃってリハビリにも通ずるところです.
運動と運動療法は何が違うのか?
運動と運動療法の相違を考えてみると以下のような相違が挙げられると思います.
- 理学療法評価に基づいている
- エビデンスに基づいている
- リスク管理の元で行われている
- 目標が明確である
- 説明と同意が出来る
- 定期的に効果判定がなされている
評価に基づいている
理学療法士が提供する運動療法というのはきちんとした理学療法評価に基づくものでなければなりません.
テレビでこんな運動やってたから私もやってみようかというのは運動ですが,理学療法士が評価に基づいて対象者にあった運動を提供する,これが運動療法です.
したがって何の評価もないままただただクライアントと屋外歩行を繰り返しているというのは,運動であって運動療法ではありません.
エビデンスに基づいている
理学療法士が提供する運動は,エビデンス(根拠)に基づいているものである必要があります.
有酸素運動を一つをとってもどうやって運動強度を決めてますか?
テキトーにワット数を設定するのはこれは運動であって運動療法ではありません
筋力トレーニングについても過負荷の原則や特異性の原則といったいわゆる筋力トレーニングに基づいたトレーニングを提供できているでしょうか?
ただただ重錘をまいて数を数えるのであれば小学生でも出来ます.
リスク管理が出来ている
理学療法士が提供する運動療法はリスク管理に基づいて行われることが重要です.
特に昨今は内科的な合併症を併存されている方も多いので,基礎疾患や既往歴を考慮した上で,運動負荷量を設定する必要があります.
運動したせいで状態が悪化してしまったでは話になりません.
今は運動負荷をどのくらいかしても良いのかを病態を見極めながら調整するのが理学療法士の役割です.
目標が明確である
理学療法士が関わる以上,目標設定の上で運動療法を提供することが重要です.
よくある話ですが体力アップを目的に屋外歩行をしますなんていうのは専門職としては非常に残念な目標設定の方法です.
ICFでいうところの活動面や参加面にも目を向けた上で適切な目標設定を行うことが重要です.
目標にあたっては目標達成までの期間も合わせて設定することが重要です.
説明と同意が出来る
理学療法士行う運動療法は,その必要性を十分に説明した上で患者さん利用者さんの同意を得るということが大切です.
科学的根拠に基づいて運動を行うことでどういった効果が得られるのかをきちんと説明できますか?
運動は大切ですからね,とりあえず屋外歩行に行きましょうなんていった説明では不十分です.
これでは医学的知識のない家族が,自分の身内に足腰が弱るから運動しなさいと言っているのと同じです.
言ってみれば素人レベルということになります.
定期的に効果判定をしている
これも非常に重要です.
運動はやりっぱなしではなくて定期的に評価を行い,効果判定をすることが重要です.
設定した目標を達成できたのか,あるいはプログラムは適切だったのかを検証する為にも効果判定を行うことが重要です.
もし効果判定・再評価をした結果,治療効果が出ていないということであれば,プログラムを見直す必要があります.
今回は理学療法士の視点で運動と運動療法の違いについて考えてみました.
素人レベルの説明や運動の内容を提供してお金を頂いてはまずいですよね.
専門職として運動ではなく運動療法を提供できる理学療法士でありたいですね.
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