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理学療法士・作業療法士は給料明細を捨てていませんか?
理学療法士・作業療法士の収入に関してはこれまでの記事でも取り上げさせていただきました.
今月も給料明細を見ながら,給料が少ないと嘆きながら給料明細を捨ててしまっていませんか?
実は給料明細の見方に関する知識を持っておくと,少し給料に関する考え方が変わってきます.
今回は理学療法士・作業療法士にとっての給料明細の見方について考えてみたいと思います.
給料日は理学療法士・作業療法士の楽しみ
給料日は理学療法士・作業療法士が働いて稼いだお金を貰える日です.
少ないながらも嬉しい日ですね
では理学療法士・作業療法士の皆さんはその給料日に貰う,給料明細のどこを見ていますか?
大抵の若い理学療法士・作業療法士の方は,銀行振込額(差引支給額)を見て,後はサーっと流すだけではありませんか?
給料明細に書いてある文字の意味を理解して,どういったお金を貰って,どういったお金を払っているかを理解している理学療法士・作業療法士は少ないと思います.
もらった給料明細はどうしていますか?
給料明細は病院によってはデータで貰ったり,紙で貰ったと様々です.
大抵は紙で貰うと思います.
紙の方がなんとなく実感があって嬉しいですよね.
ではその紙で貰った給料明細を見た後はどうされていますか?
まさか捨てたりしていませんか?
患者の個人データ等は5年保存ぐらいするのに自分の個人データはすぐ捨ててしまうということになりますね.
給料明細はとても大事な書類です.
せめて2年間ぐらいは捨てずに保管しておくことをお勧めします.
この記事を最後まで読んでいただければなぜ2年間保管する必要があるのかが理解できます.
給料明細は何が書かれている?
給料明細に記載が義務付けられている項目は「支給額(貰ったお金)」と「控除額(払ったお金)」となります.
その他に近年では「勤怠(働いた時間)」が記載されていることが一般的です.
支給額(貰ったお金)
ここには自分が働いて稼いだお金が記載されています.
そのため基本的にはプラスの金額になります.
しかし「欠勤控除(欠勤で給料が減った)」や「遅早控除(遅刻や早退で給料が減った)」がある場合はマイナスとなる場合もあります.
病院や施設によってない項目があったり,項目の名前が違ったりすることもあると思いますが,「基本給」に加えて「残業手当」や「扶養手当」「通勤手当」「住宅手当」、「役職手当」等の「〇〇手当」があると思います.
残業手当
残業手当は知らない理学療法士・作業療法士はいないと思いますが,残業して仕事をした分の支給額です.
時間外と書かれている場合もあります.
扶養手当
配偶者(妻)や子供がいる社員に支給される福利厚生の一部です.
家族手当と書かれている場合もあります.
民間企業の場合はだいたい配偶者が1万円,子供は一人につき3,000円~4,000円程度が相場となっております.
通勤手当
通勤にかかるお金を病院側が出してくれる場合に書いてあります.
通勤手当の支給も任意ですので法律で支給が義務付けられているわけではありません.
そのため計算方法も病院によって異なります.
通勤手当は15万円までは非課税ですが15万円を超える部分は所得税の課税対象となってしまいますので注意が必要です.
住宅手当
病院から家賃の補助という形で支給される福利厚生の一つです.
この住宅手当はない所がほとんどです.
支給される金額も病院によってバラバラなのでとりあえず貰えたらラッキーと思っておいてください.
住居を貸与している場合に支払われるのが一般的でしたが,最近では住宅ローンの補助として持家の理学療法士・作業療法士にも支払われることもあります.
役職手当
役職につけばそれだけ責任が伴います.
その責任に対しての対価という形で支給されるものです.
控除額(払ったお金)
ここには自分が支払わないといけない税金が記載されています.
ここに記載されている税金は,支給した金額から病院が自動的に控除(天引き)しているものが記載されています.
そのため基本的にはマイナスの金額となります.
自動的に控除してもよいと法律で認められているものは社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料),雇用保険料,所得税,住民税となります.
これ以外を病院が控除するには,労使協定といって協定を締結する必要があります.
健康保険料
私たちが病院を受診する際には健康保険証を使うと3割の自己負担で済みます.
これは健康保険料を支払っているからです.
健康保険には「国民健康保険」と「社会保険の中の健康保険」の2種類があります.
簡単に言うと,自営業(個人事業主を含む)やフリーランス,無職等は国民健康保険で,企業に属している社員は社会保険の中の健康保険です.
この健康保険料は標準報酬月額表の等級区分の月額に一定の保険料率をかけあわせたものを会社と私たちが折半して負担するものです.
この保険料率は勤務している病院がどこの健康保険組合に入っているかで変化します.
またこの健康保険料は4月・5月・6月の3ヶ月間の給料を平均した給料に保険料率をかけて計算されたものが,その年の9月~翌年8月までの健康保険料となります.
この平均した給料の中には固定的な支給額(基本給・扶養手当・住宅手当・役職手当等)に加えて,流動的な支給額(残業手当等)も含めて計算されます.
つまり4~6月にたくさん残業をすると,その年の9月から1年間は割高な保険料を支払うこととなります.
そのため年度始めで忙しい4~6月ですが,可能な限り残業を減らした方が良いと言えるでしょう.
厚生年金保険料
厚生年金保険料というのはいわゆる年金です.
65歳以上になり請求すれば偶数月の15日に貰えるお金です.
この国から支給される年金には国民年金,厚生年金,共済年金の3種類があります.
国民年金
国民年金というのは20歳~60歳未満の方であればだれでも加入できる一般的な年金制度です.
個人事業者やパート・アルバイトの人たちが加入するものです.
厚生年金
会社員など会社に勤務している方が加入する年金制度です.
共済年金
公務員などが加入する年金制度です.
この厚生年金も月々の給料に保険料率をかけたものを会社と私たちが折半して負担するものです.
この保険料率は日本年金機構に記載されています.
現在は18.3%となっており,これを会社と半分ずつ折半するため私たちの負担は9.15%となります.
またこの厚生年金保険料も健康保険料と同様に4~6月の3ヶ月間の給料を平均した給料に保険料率をかけて計算されたものが,その年の9月~翌年8月までの厚生年金保険料となります.
この平均した給料の中には健康保険料と同じく,固定的な支給額(基本給・扶養手当・住宅手当・役職手当等)に加えて,流動的な支給額(残業手当等)も含めて計算されます.
先ほどと同様に4~6月の残業が多くなると,その年の9月から1年間は割高な保険料を支払うこととなります.
雇用保険
大きくは私たちがもし失業した場合に生活の安定を図るために必要なお金を支給してくれる保険です.
実は失業の際のみならず,育児や介護などの理由で休業する場合も一定の要件のもと支給されます.
また定年再雇用等で賃金が減った場合などにも継続して就労できるように支給される制度です.
雇用保険料は毎月の総支給額(控除前の給料)に雇用保険料率をかけたものを支払うこととなります.
この雇用保険料率は厚生労働省が毎年発表しており,平成31年度の雇用保険料率は0.3%となっております.
所得税
所得税は個人の所得に対してかかる税金です.
所得税は累進課税制度という仕組みを採用しています.
これは所得が増えるとそれに比例して税金も増えていくといった制度です.
会社員の場合は毎月の給料から概算で源泉徴収されます.
そして過不足を12月の給料で調整します.
年末調整でお金が返還されるのは所得税を払いすぎているものが戻ってくるというわけです.
所得税はその年の課税所得(1月~12月の1年間の所得から各種所得控除,有名なもので生命保険料控除や配偶者控除等を引いた額)に所得税率をかけたもので計算されます.
住民税
これもご存じの理学療法士・作業療法士が多いと思います.
簡単に言えば住民税は自分が住んでいる町に払う税金です.
基本的には1月1日時点に住所のあった市町村に納付する税金で,所得に応じて金額が決まります.
この住民税は前年の課税所得にかけられるため,バイト等をしていなかった新卒の理学療法士は1年目の間は住民税がありません.そのため1年目よりも2年目のほうが給料少ないなんてことが起こるわけです.
1年目は住民税が控除されているのです.
住民税は前年の課税所得に均等割(5,000円)を足したものが住民税となります.
課税所得とは所得税でもあった所得から各種所得控除を引いたものになります.
住民税は基本的には計算方法はどこの市町村でも同じですが,均等割というものが各自治体によって差があるので住む場所によって少し変わってきます.
そのため引っ越したら住民税が高くなったり安くなったりするわけです.
給料明細を見るときの大事なポイント
重要なのは記載されている金額が本当に合っているのかということです.
理学療法士・作業療法士の多くは給料明細を疑ったことは無いと思います.
給料明細も所詮は人の仕事ですので間違えることもあります.
ちゃんと見ていなかったら本当に貰える給料と実際に貰った給料で差が出るかもしれません.
そのために自分が働いた時間の管理をしておくことが大切になります.
また以前の給料と比較してみるのも良いでしょう.
そのためには昨年のものと比較するために,給料明細は2年は保存しておきたいというわけです.
今回は理学療法士・作業療法士にとっての給料明細の見方について考えてみたいと思います.
特に転職の多い理学療法士・作業療法士であれば,こういったお金に関する書類は大切に保管した上で,きちんと年収の変化を比較できるようにしておきたいですね.
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