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ヨガにおける姿勢が股関節肢位に与える影響
最近は地域の公民館で女性を中心にヨガ体操を用いた健康教室を開催しているところが増えております.
先日,私が担当させていただいた人工股関節全置換術後のクライアントも術前にヨガ体操に週に数回通っていたとおっしゃられておりました.
ここで気になるのは人工股関節全置換術後にヨガを行うのは問題が無いのかといった点です?
回答としてはヨガのポーズによっては可能なものもあれば,避けた方が良いポーズもあるといったところだと思います.
今回はヨガにおける姿勢が股関節肢位に与える影響を明らかにした論文をご紹介し,理学療法士の視点で人工股関節全置換術後にヨガ体操に取り組むことが可能なのか否かを考えてみたいと思います.
今回ご紹介する論文
J Arthroplasty. 2018 Jul;33(7):2306-2311. doi: 10.1016/j.arth.2018.02.070. Epub 2018 Feb 23.
Position of the Hip in Yoga.
Mears SC, Wilson MR, Mannen EM, Tackett SA, Barnes CL.
今回ご紹介する論文は2019年に掲載された比較的新しい内容です.
研究の背景
Yoga is growing in popularity as a form of exercise throughout the world. Orthopedic patients participate in yoga, yet little is known about the ranges-of-motion of the hip within various yoga poses. Orthopedic surgeons are unsure about what potential positions their patients are placing their hips during a yoga practice. The aim of this study is to quantify the degree of hip motion with common yoga poses.
ヨガは世界中で行われている人気のある運動です.
整形外科患者もヨガを行っている方は多いですが,ヨガのさまざまなポーズを行っている際の股関節の可動域については十分に明らかにされておりません.
整形外科医もまたヨガを実践中の股関節肢位について知らない場合がほとんどだと思います.
この研究では共通したヨガのポーズにおける股関節運動範囲について評価することを目的としております.
研究の対象
Twenty healthy, regular practitioners of yoga performed 11 different yoga poses in a standardized fashion. Motion analysis was used to capture range-of-motion of the hip during each pose.
研究の対象は基本的なヨガプラクティショナーを有する20名の健常者としております.
11種類の異なるヨガのポーズを行い,それぞれのポーズにおける股関節可動域を調査しております.
研究の結果
Many yoga poses put the hip in extremes of motion. Poses such as downward dog, forward fold, seated twist, and pigeon stressed the hip in flexion. Warrior 1, warrior 2, crescent lunge, pigeon, and triangle stressed the hip in extension. Eagle and seated twist put the hip in higher adduction, while half moon, eagle, and triangle produced more hip internal rotation.
多くのヨガのポーズにおいて股関節の動きの限界を超えていることが明らかとなりました.
downward dog,forward fold,seated twist,pigeonのようなポーズについては股関節屈曲方向の大きなストレスが加わることが明らかとなりました.
warrior 1,warrior 2,crescent lunge,pigeon,triangleといった股関節伸展方向の大きなストレスが加わることが明らかとなりました.
eagle,seated twistはより大きい股関節内転運動が必要であり,half moon,eagle,triangleはより大きな股関節内旋運動が必要であることが明らかとなりました.
研究の結論
Many poses were found to reach extremes of hip motion. This study may help guide the orthopedic surgeon in counseling hip arthroplasty and hip impingement patients about yoga-related activity. By knowing which poses potentially stress the hip in particular planes of motion, surgeons may better inform their patients who are returning to yoga after injury or surgery.
この研究の結果から、ヨガのポーズの多くが股関節の可動域の動きの限界を超えていることが明らかとなりました.
この研究は整形外科医が人工股関節全置換術後や股関節インピンジメントを有するクライアントのヨガ活動の相談を受ける際に役立つと考えられます.
どのポーズによってどの程度股関節にストレスが加わるかを知ることによって,ヨガへの復帰に際してクライアントに適切なアドバイスを行うことができるでしょう.
今回はヨガにおける姿勢が股関節肢位に与える影響を明らかにした論文をご紹介し,理学療法士の視点で人工股関節全置換術後にヨガ体操に取り組むことが可能なのか否かを考えてみました.
こうしてみてみるとやはりかなり大きな股関節の可動性を要することが分かります.
人工股関節全置換術もアプローチによって過度な運動を避けた方が良い関節運動方向が異なりますので,アプローチとポーズを考慮した上で理学療法士の視点で適切な指導を行えるとよいと思います.
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