THA例の歩容改善に重要な下部体幹筋機能

人工股関節全置換術
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 THA例の歩容改善に重要な下部体幹筋機能 

人工股関節全置換術(THA)の手術件数は年々増加傾向にあり,最近では全国で60,000例を超える手術件数となっております.

理学療法士・作業療法士がTHA症例のリハビリテーションに携わる機会も決して少なくはありません.

THAのリハビリテーションにおいて難渋図るのが歩容の改善です.

長年にわたって強固に学習された異常歩行パターンを修正するのは簡単なことではありません.

今回はTHA例の歩容改善のために必要となる下部体幹機能について理学療法士の視点で考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 

 THA症例の歩容 

THA施行後の患者の歩容を改善するためには,まずは術側股関節の可動域や外転筋力の獲得が最低条件になります.

手術侵襲や術式によっても障害される可動域や筋力低下もさまざまですが,実際には可動域や筋力が獲得されても歩容が改善しない症例も少なくありません.

THA症例の歩容を考える上では,股関節のみならず体幹も含めた隣接関節の問題を考慮する必要があります.

変形性股関節症の発生機序として,寛骨臼形成不全によるもの(二次性変形性股関節症)と加齢に伴う腰椎後彎の増強(一次性変形性股関節症)が考えられております.

どちらも姿勢アライメントは不良でありますが,寛骨臼形成不全を基盤とする二次性変形性股関節症例では,大腿骨頭に対する寛骨臼の前方被覆を増大させるために,骨盤前傾および腰椎前彎が増強されている症例が少なくありません.

骨盤前傾・腰椎前彎姿勢が増強されると,胸腰部脊柱起立筋,腸腰筋,大腿直筋は短縮し,腹部筋群および殿筋群は弱化する傾向にあります.

THAを施行し股関節痛や脚長差関節可動域の改善が得られても,脊柱や骨盤の不良アライメントが残存する場合が多く,術前からの姿勢・歩行パターンの改善に難渋するケースも稀ではありません.

THA施行後の患者の歩容改善のためには,股関節周囲の機能改善にとどまることなく,下部体幹筋の機能や姿勢アライメントにもアプローチすることが重要となります.

 

 

 

 

 

 

 THA症例によくある矢状面の歩行の特徴 

THA症例によく見られる矢状面の歩行の特徴として,上述いたしました骨盤前傾・腰椎前彎姿勢が挙げられます.

このような姿勢・歩行パターンを呈するクライアントに,腹臥位での股関節伸展運動をおこなうと股関節伸展を骨盤や腰椎で代償することが多いです.

 

 

 

この場合には腹臥位での股関節伸展運動中の瞬間回転中心を計測すると,健常成人では運動軸が股関節付近に位置するのに対し,THA施行後の患者では頭側に位置している例が多いのです.

股関節伸展の可動域制限や大殿筋の筋力低下を認める場合は,まずこれらの改善が先決です.

しかし可動域や筋力に問題がなくても,術前の運動パターンから腰椎や骨盤で代償する場合があります.

そのような症例では,腹部下にタオルやクッションなどを挿入し腰椎前弩や骨盤前傾を抑制した状態で,さらに腹部を背側に引き,骨盤底筋も同時に収縮させて股関節伸展を行うと,運動軸が股関節に近づき代償を抑制した股関節伸展運動が可能となります.

なぜ腰椎の前彎が減少するのかといった話ですが,下部体幹筋の収縮により腹腔内圧が上昇し,腰椎骨盤の安定化が得られるためと考えられます.

下部体幹の安定性が向上すれば,腰椎を中心とした運動から股関節を中心とした運動につながります.

症例によっては,挿入物を過剰に押しつぶすことや,対側股関節屈筋を強く収縮することで,さらに代償する場合がありますので,正確な動作確認および指導が必要となります.

 

 

 

 

 

 

 立位での下部体幹筋収縮も重要 

腹臥位姿勢で下部体幹の筋収縮が得られても,立位では腰椎が前彎してしまうといった症例もよく経験します.

歩行は立位姿勢の連続ですので,基本的な体幹の緊張を維持した立位を常に意識することが重要です.

体幹を頭尾側方向へ伸展すると腹横筋の活動が増大しますので,まず肩幅開脚立位にて両膝関節を軽度屈曲し,体幹を頭尾側方向に伸展します.

この際には顎を引き,腹部を背側に引き込み,さらに骨盤底筋を収縮させるように意識することが重要です.

この姿勢を基本としてエクササイズや歩行をすると,体幹や骨盤の代償抑制につなげることができます.

 

 

 

 

 

 

参考文献

西村圭二,他:人工股関節全置換術後患者における下部体幹筋収縮の有無が股関節自動伸展運動軸に与える影響第49回日本理学療法学術大会抄録集,2014

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