人工股関節全置換術における後方脱臼予防指導が術後早期の機能回復に与える影響

人工股関節全置換術
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 THAにおける後方脱臼予防指導が術後早期の機能回復に与える影響 

人工股関節全置換術における合併症の1つとして脱臼が挙げられます.

人工股関節全置換術における脱臼に関しては以前の記事でもご紹介させていただきました.

 

人工股関節全置換術(THA)後の脱臼~本質が理解できてないから制限が厳しくなる~
前回までは変形性股関節症例の理学療法について紹介させていただきました.今回からは人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty; THA)例に対する理学療法について考えてみたいと思います.人工股関節全置換術後の合併症として脱臼が挙げられますが,特に理学療法士教育においてはこの脱臼肢位に関して,過剰な指導が行われてきました.脱臼に関する過剰な指導は患者様のADLやQOLを低下させ,昨今においては「脱臼不安感」といった概念まで提唱される状況です.今回は理学療法士の脱臼に関する認識を少しでも変えるべく,人工股関節全置換術後の脱臼について考えてみたい思います.

 

本邦ではいまだに脱臼に関してかなり厳格な指導がなされ,理学療法士の意味のない厳格すぎる脱臼指導が二次的障害を発生させているのも事実です.

今回は人工股関節全置換術における後方脱臼予防指導が術後早期の機能回復に与える影響を検討した報告をご紹介いたします.

 

 

 

 

 

 

 今回ご紹介する研究 

J Arthroplasty. 2019 Jul;34(7S):S221-S227.e1. doi: 10.1016/j.arth.2019.02.057. Epub 2019 Mar 13.

Posterior Hip Precautions Do Not Impact Early Recovery in Total Hip Arthroplasty: A Multicenter, Randomized, Controlled Study.

Dietz MJ, Klein AE, Lindsey BA, Duncan ST, Eicher JM, Gillig JD, Smith BR, Steele GD

今回ご紹介する論文は2019年に掲載された新しい論文です.

 

 

 

 

 

 

 

 研究背景および研究目的 

Posterior hip precautions have been routinely prescribed to decrease dislocation rates. The purpose of this study was to determine whether the absence of hip precautions improved early recovery after total hip arthroplasty via the posterolateral approach.

これまで後方脱臼に対する厳格な指導が人工股関節全置換術例における脱臼率を減少させると考えられてきました.

この研究では脱臼に関する指導をしないことが,後側方アプローチによる人工股関節全置換術後の早期回復に寄与するか否かを明らかにすることを研究目的としております.

 

 

 

 

 

 

 研究の対象および方法 

Patients undergoing total hip arthroplasty via the posterolateral approach at 3 centers were enrolled. Patients meeting the selection criteria were randomized to standard hip precautions (SHP) or no hip precautions (NHP) for 6 weeks following surgery. HOOS Jr, Health State visual analog score, and rate of pain scores were recorded preoperatively and in subsequent postoperative visits; dislocation episodes were also noted. Standard statistical analysis was performed.

3施設で後側方アプローチによる人工股関節全置換術を行った症例を研究の対象としております.

取込基準に該当する症例を標準的な脱臼指導を行う群と脱臼指導を行わない群に無作為に割りつけて,術後6週間観察を行っております。

術前および術後に疼痛を中心としたアウトカムを測定するとともに,脱臼のエピソードを記録しております.

 

 

 

 

 

 

 研究結果 

From 2016 to 2017, 159 patients were randomized to SHP and 154 patients were randomized to NHP. Controlling for the center at which the surgery was performed, the only difference in outcome scores between the 2 groups was at 2 weeks; the NHP group had a lower HOOS Jr score when compared to the SHP group (P = .03). There was no difference in outcome scores at any other time points when compared to preoperative assessments. In the SHP group, there were 2 recorded dislocations (1.3%) and 1 in the NHP group (0.7%; P = .62).

2016年~2017年の間に人工股関節全置換術を行った159例を,標準的な脱臼指導を行う159例,脱臼指導を行わない154例に無作為に分類しております.

比較結果ですが,標準的な脱臼指導を行った群に比較して,脱臼指導を行わなかった群で術後2週のHOOSスコアが低いといった結果でありました.

他のアウトカムには有意差は認めておりません.

標準的な脱臼指導を行った群では,脱臼事例は2例で1.3%,脱臼指導を行っていない群では脱臼事例は1例で0.7%であり両群間に有意差は認めておりません

 

 

 

 

 

 

 結論 

In this multicenter, randomized, controlled study, the absence of hip precautions in the postoperative period did not improve subjective outcomes which may be explained by the self-limiting behavior of NHP patients. Furthermore, with the numbers available for the study, there was no difference in the rate of dislocation between the 2 groups.

他施設共同無作為化比較試験によると脱臼指導を行わない介入は疼痛をはじめとする主観的なアウトカムを改善させないことが明らかとなりました.

さらに脱臼指導を行った群と行っていない群で脱臼率にも差は無いことが明らかとなりました.

 

今回は人工股関節全置換術における後方脱臼予防指導が術後早期の機能回復に与える影響を検討した報告をご紹介いたしました.

今回の結果から脱臼指導をしてもしなくても脱臼率には差は無いということが分かります.

今回は術後アウトカムとしてクライアントの主観的な疼痛を設定しておりますが,関節可動域や筋力といった客観的な指標に差があるかどうかは不明です.

最近は脱臼不安がQOLを低下させるといった報告も増えてきておりますので,易脱臼性を有する人工股関節全置換術例を除けば,厳格な脱臼指導は不要であると考えられます.

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