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理学療法におけるクリニカルリーズニング
クリニカルリーズニングは日本語では臨床推論と表現されますが,理学療法士がクライアントに対して理学療法を行う絵ではクリニカルリーズニングの能力が必須となります.
クリニカルリーズニングというのは言葉で表現するのが難しいわけですが,クライアントを診療する上では非常に重要です.
今回は理学療法士の視点でクリニカルリーズニングについて考えてみたいと思います.
クリニカルリーズニングとは?
クリニカルリーズニング(clinical reasoning)とは,対象者の訴えや症状から病態を推測し,仮説に基づき適切な検査法を選択し,最も適した介入法を決定していく一連の心理的過程と説明されます.
正直なところ,この説明を見てもクリニカルリーズニングが何を意味しているのかを想像しにくいと思います.
クリニカルリーズニングを分かりやすく説明するには,ある程度経験のあるベテランの理学療法士に自身の担当しているクライアントをみてもらうと理解しやすいです.
ベテラン理学療法士が,一瞬で動作を分析し,問題点を明確にして,クライアントが驚くほど良くなったという経験をされたことはないでしょうか?
これはベテランの理学療法士が特殊な技術を持っているというわけではなく,動作分析から問題点を抽出して適切な評価を選択し,最も重要な原因を特定して,この原因に対してアプローチしているから,クライアントが驚くほどよくなるわけです.
経験のある理学療法士はこういった一連の流れを頭の中で瞬間的に行っているわけです.
おそらくクリニカルリーズニングという概念を意識せずに行っている理学療法士も多いと思います.
このベテランの理学療法士が頭の中で行っている評価に基づく治療方法の選択がまさにクリニカルリーズニングということになります.
クリニカルリーズニングの第1歩は?
まずは不思議に思うことからクリニカルリーズニングは始まります.
歩行時に骨盤が後傾している高齢者を見て,高齢者なので胸腰椎が後彎して骨盤が後傾していても不思議ではないといったみかたをするとクリニカルリーズニングは行えません.
骨盤が後傾している原因は本当に胸腰椎の後彎変形だけでしょうか?
もしかしたら膝関節の伸展可動域制限が原因で,立位で膝関節が屈曲位になるために骨盤も後傾位になるのではないでしょうか?
もしかしたら腸腰筋の機能低下があって荷重位で骨盤を前傾できないために骨盤が後傾位になるのではないでしょうか?
このように歩行時に骨盤が後傾している場合には様々な原因が考えられます.
クリニカルリーズニングの第1歩は,ある現象・症状を捉え,その原因として考えられるものをいかに多く挙げられるかどうかです.
原因を追究する姿勢を忘れずに
歩行時に骨盤が後傾している高齢者を例に引き続き考えてみたいと思います.
先ほどあげた胸腰椎後彎変形・膝関節伸展可動域制限・腸腰筋の機能低下といった骨盤後傾を引き起こすであろう仮説の中で真の犯人(原因)は何なのかを明らかにしていく必要があります.
本当に胸腰椎の後弯があるのか,膝関節伸展可動域が制限されているのか,腸腰筋の機能が低下しているのかを1つずつ調べていきます.
クリニカルリーズニングができていない理学療法士は骨盤が後傾している高齢者に対して,おへそを出すように背中を伸ばして歩きましょうと歩行の指導をするでしょう.
これはサッカーで例えるならば,シュートがうまくできない選手に対して,「しっかりとシュートしなさい」と指導しているのと同じです.
こんな指導では良いシュートがうてるようになるはずがありません.
骨盤が後傾する原因としてどのような原因が考えられ,真の原因は何なのかを明らかにする作業が重要であり,この作業こそがクリニカルリーズニングと言えるでしょう.
知識を目の前のクライアント治療につなげよう
たとえ知識が豊富であっても,目の前のクライアントのちょっとした変化に気づかなければ,原因を考えることも,治療方法を選択することもできず,その知識を活かすことができません.
またクリニカルリーズニングは,情報を短時間で吟味し,正しい解釈のもと迅速に治療が遂行される必要があります.
ぼーっとクライアントに対して診療しているのと,日々クリニカルリーズニングを繰り返して理学療法を行っているのでは,当然ながら専門職としての成長も大きく変化します.
どんなに優れた治療技術を身につけていても,クリニカルリーズニングによる治療の選択が誤ったものであれば,クライアントはよくなりません.
理学療法士は最新の知見や治療技術を学び続けるとともに,適切に問題点を抽出し,クライアントに応じた個別で最良の治療を提供できる能力が求められるといえるでしょう.
今回は理学療法士の視点でクリニカルリーズニングについて考えてみました.
クリニカルリーズニングという概念は非常に理解しにくい概念ではありますが,非常に重要な概念でもあります.
日々のクリニカルリーズニングの繰り返しが理学療法士の成長につながりますので,日々考えながら仕事をすることが重要でしょう.
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