人工膝関節全置換術(TKA)後に着目すべき隣接関節障害

人工膝関節全置換術
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 人工膝関節全置換術(TKA)後に着目すべき隣接関節障害 

人工関節全置換術(TKA)の手術主義の発展やインプラントの進歩によって人工膝関節全置換術(TKA)の術後成績は飛躍的に向上しております.

以前は術後の歩行獲得までに数カ月を要しており,理学療法士も機能改善に苦労症例が多い状況でした.

しかしながら昨今は術後数週で自立歩行獲得となり,早期の退院が可能となりました.

こうなると理学療法士の役割って何なんだろうと思ってしまいます.

実は人工膝関節全置換術(TKA)後に我々が対峙すべき問題は術側の膝関節機能改善にとどまるものではありません.

われわれ理学療法士は人工膝関節全置換術(TKA)後の隣接関節障害に着目してアプローチを行っていく必要があります.

今回は人工膝関節全置換術後に着目すべき隣接関節障害について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 変形性膝関節症が他関節に及ぼす影響 

人工膝関節全置換術の適応となることが多い末期の変形性膝関節症では長年の構築学的異常から他関節へさまざまな影響が及びます.

したがって人工膝関節全置換術(TKA)により局所の除痛やアライメントの矯正が得られても,他関節の機能異常は改善せず,姿勢および動作パターンも明らかな変化が得られないことも少なくありません.

人工膝関節全置換術(TKA)後の理学療法では,局所へのアプローチはもちろん重要であるが,全身的な視点で捉えることがポイントとなります.

 

 

 

 

 

 上行性・下行性運動連鎖 

下肢の多関節運動連鎖には,上行性と下行性の運動連鎖が存在します.

ただしこれは正常ではこういった運動連鎖パターンをとることが多いといったもので,関節の拘縮や筋力低下に伴う関節不安定性,

疼痛,変形によるアライメント変化など多くの構造的・機能的障害を有している場合には正常とは異なる運動連鎖パターンを認めることも少なくありませんので注意が必要です.

 

 

 

 

 

 上行性の運動連鎖 

立位で距骨下関節を回内すると,足関節の背屈,脛骨の前内側移動・内旋,膝関節の屈曲・内旋・外反,大腿骨の前内側移動・内旋股関節の屈曲・内転・内旋骨盤の前傾・前方回旋,体幹の同側への側屈・回旋が起こります.

全体として内側方向へ引っ張られる姿勢をイメージすると,各関節の運動を想起しやすくなります.

逆に距骨下関節を回外すると,足関節の底屈,脛骨の後外側移動・外旋,膝関節の伸展・外旋・内反,大腿骨の後外側移動・外旋,股関節の伸展・外転・外旋,骨幣の後傾および後方回旋体幹の反対側への側屈・回旋が起こります.

全休として外側方向へ引っ張られる姿勢をイメージすると,各関節の運動を想起しやすくなります..

上行性の運動連鎖を考える際に重要な点は,回旋の大きさが脛骨>大腿骨>骨盤の順となり,脛骨と大腿骨,大腿骨と骨盤の相対的な位置関係から膝関節・股関節の内外旋運動が決まるといった点です.

 

 

 

 

 

 下行性の運動連鎖 

下行性には,①骨盤の前方回旋・後方回旋による運動連鎖,②骨盤の前傾・後傾による運動連鎖,③骨盤の前・後方並進による運動連鎖の3パターンが存在します.

下行性の運動連鎖では,上行性とは逆となり,回旋の大きさが骨盤>大腿骨>脛骨の順となります.

したがって骨盤と大腿骨,大腿骨と脛骨の相対的な位置関係から股関節・膝関節の内外旋が決まります.

 

 

 

 

 

 

 人工膝関節全置換術(TKA)後における腰痛および隣接関節障害 

代表的な人工膝関節全置換術(TKA)症例の立位姿勢としては,術前は上半身質量中心点が後方,下半身質量中心点が前方に偏位し,骨盤が後傾・前方並進位を呈しており,膝関節は屈曲位となっていることが多いです.

骨盤の前方並進および後傾による下行性運動連鎖に加え,足部からの上行性運動連鎖が影響し合っている可能性があります.

また腰部における外部屈曲モーメントが増加している点も特徴的です.

人工膝関節全置換術(TKA)後には,術前の膝関節屈曲位,骨盤が前方並進・後傾位も改善し,上半身質量中心点は前方へ,下半身質量中心点は後方へ移動します.

上半身質量中心点と下半身質量中心点を結んだ線は股関節中心を通り,理想的な姿勢に近くなります.

その結果,腰部のレバーアームは短くなり,外部屈曲モーメントも減少します.

つまり腰椎のアライメントが運動連鎖により著明に変化する症例では,人工膝関節全置換術(TKA)により腰痛が改善することも少なくありません.

一方で頭部の前方偏位は術後に著明となっており,頚部の外部屈曲モーメントは逆に増加している状態となります.

このようなアライメントでは僧帽筋上部線維,肩甲挙筋などの筋群への負担が増強し,頚・背部痛や肩こりの原因となり得ます.

膝OAにおける代償歩行としては,lateral trunk lean gait(Duchenne sign,側方への体幹傾斜歩行)とtoe out gait(つま先を外側に向けた歩行)が挙げられます.

lateral  trunk lean gaitと外部膝関節内転モーメント(knee adduction moment :KAM)の関係性については以前の記事でもご紹介させていただきました.

 

ちょっとした歩行指導で変形性膝関節症例の膝痛を軽減できる
今回は変形性膝関節症例の膝関節痛を軽減させるための歩行指導について考えてみました.今回ご紹介した歩行指導によって簡単に膝関節内反モーメントを軽減させ,膝関節痛を軽減させることが可能ですが,多関節への影響や歩行のバランスといった視点でも歩行修正が与える影響を検討した上で,歩行指導を行う必要があるでしょう.

 

体幹傾斜はさまざまなKAMを軽減させる戦略の中でも最も影響力が大きく,KAMを最大で25%軽減させることが明らかにされております.

また膝OAの重症度が高い症例ほど体幹傾斜角度が大きくなるといった報告もあります.

Toe out gaitも足圧中心点を外側に移動させ, KAMを減少させる上では有効です.

人工膝関節全置換術(TKA)適応となる末期の膝OAでは,体幹傾斜およびtoe outが明らかな症例が多数存在し,術後に残存する例も少なくありません.

術前はこれらの異常歩行はKAMを軽減させるための代償的戦略ですのである程度許容せざるを得ませんが,人工膝関節全置換術(TKA)後には,これらの異常歩行パターンを軽減させていく必要があります.

これらの異常歩行パターンが持続すれば人工膝関節全置換術(TKA)そのものの耐用年数にも影響を及ぼすことが危惧されます.

 

 

 

 

 

 

 人工膝関節全置換術(TKA)と腰痛との関連性について 

Staibanoらは人工膝関節全置換術(TKA)予定の491例を調査し,42%で腰痛を認めたと報告しております.

前述のとおり,TKAが適応となる末期膝OAでは,腰椎屈曲・骨盤後傾,股関節伸展・外転・外旋,膝屈曲・内反位のアライメントとなり,腰部の椎間板性または筋・筋膜性疼痛の原因にもなります.

またlateral trunk lean gaitでは反対側腸肋筋の遠心性収縮による過活動が生じることとなります.

腰部の構築学的な異常が伴い,側屈動作の反復より神経根由来の症状を呈する症例も存在します.

したがって,運動連鎖の知識に加え,他部位の構築学的な異常,瘤痛,膝OAに対する代償動作パターンなどを統合・解釈し,個々の障害像を捉えることが重要となります.

 

 

 

 

 

 人工膝関節全置換術(TKA)後の足関節・足部アライメント 

膝OA例ではKAMを軽減するためにtoe outを呈している症例がおおいわけですが,toe out歩行では内側縦アーチの低下,後足部の回内することとなりますので,下腿内旋,膝内旋・外反といった上行性運動連鎖が起こりやすい特徴があります.

症例によっては術後にmedial thrustを呈し,人工膝関節全置換術(TKA)のルーズニングも危惧されます.

lateral trunk lean gaitのパターンもまた足部の回内を助長することとなりますので,toe out gaitと合わせてlateral trunk lean gaitの改善を図ることが重要となります.

 

 

 

 

 

今回は人工膝関節全置換術後に着目すべき隣接関節障害について考えてみました.

人工膝関節全置換術(TKA)後には膝関節といった局所のみへ着目するのではなく,腰椎・足部といった他関節への影響を考えた上でアプローチを行っていくことが重要となります.

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