目次
理学療法士養成校の4年制大学化
日本理学療法士協会の動きの中で養成校の4年制大学化が挙げられます.
しかしながら4年制大学を増やすことにどういった意味があるのでしょうか?
今回は理学療法士養成校の4年制大学化について考えてみたいと思います.
現在の理学療法士養成校の構成割合
この表は現在の理学療法士養成校の構成割合を示したものです(理学療法白書2018を参照).
この表を見てわかることは以前に比較すると大学の割合が増えているといった点です.
以前は4年制大学・4年制専門学校・3年制専門学校の割合がおおよそ1:1:1でありました.
つまり4年制大学は全体の養成校の3分の1でありました.
平成29年度の4年制大学が占める割合に注目すると, 4年制大学が占める割合が40%まで増加しております.
特徴的な点としたしましては,3年生専門学校の割合はあまり変化していない一方で,4年生専門学校の割合が減少している点です.これは4年制専門学校の中で4年制大学へ教育課程を変えたケースが多いからです.
以前にも専門職大学についてご紹介させていただきました.
現在もいくつかの専門学校が専門職大学化に向けて申請を進めているところですので,今後さらに4年制専門学校の大学化が進むことが予測されます.
日本理学療法士協会における4年制大学化推進の動き
日本理学療法士協会においても4年制大学化に向けた動きがあります.
2018年6月に開催された第47回日本理学療法士協会定時総会において,理学療法士養成課程の4年制大学化推進が賛成多数で可決されたのです.
日本理学療法士協会の最高議決機関である総会で,はじめて大学化推進が決議されたことは大きな1歩と言えるでしょう.
大きな意義を有しています今後会員の総意に基づいて重点的に取り組むべき課題として協会の戦略的な取り組みが期待されます.
日本ではでは日本学術会議が理学療法士・作業療法士教育の4年制大学化を1977年に勧告しています.
また世界理学療法連盟は,2007年に理学療法士の養成は4年制以上の大学教育にすることを決議し,OECD加盟国(30カ国)においては,すでに3分の2である20カ国が4年制以上の大学教育を行っています.
米国においては,修士レベルから博士課程の教育レベルに移行しようとしています.
アジアにおいても4年制大学化が進んでおり,先進国日本の理学療法士教育は世界標準に比べるとかなり遅れているといえるでしょう.
日本はなぜ4年制大学化が遅れているのか?
日本では医療の高度化,専門化に伴い医療技術が急速な進歩を遂げているなかで,理学療法土・看護師などのコメディカルの教育年限は,おのおのの身分法に「3年以上」と規定されたまま半世紀以上もまったく手がつけられていないのです.
看護師の4年制大学化の取り組みをみてみると,2008年に厚生労働省内に看護基礎教育のあり方に関する懇談会が設置され,養成について議論されております.
この中で医師会の委員からは,看護師国家試験合格者に占める養成所卒業者の割合が高い,すべての医療現場において高度な看護水準が求められているのではないなどの理由で反対し,看護師の4年制大学化は暗礁に乗り上げております.
そのため看護師における4年制大学化の動きは数年間沈静化しています.
医師を頂点としたピラミッド型のヒエラルキーが暗黙に存在している医療界においては,実はコメディカルの4年制大学化の壁は非常に高いのです.
政治力の非常に強い看護師の4年制大学化が進まないことを考えると,理学療法士養成校の4年制大学化も簡単ではないことは想像がつきます.
しかしながら最近では,医療職の教育年限に関しては,薬剤師が4年制から6年制に移行した前例があります.
また理学療法学科を有する専門学校1校が文科省の認可を受け,2019年に専門職大学を開設する予定で專門学校の大学化については少しずつ進んでいる状況でもあります.
今回は理学療法士養成校の4年制大学化について考えてみました.
4年制大学化の話が出ると,大学生も専門学校生も卒後にきちんと学習すれば大差は無いといった話もよく耳にします.
確かにその通りだと思います.
大学卒で卒後に生涯学習に努めない理学療法士よりも,専門学校卒で卒後に生涯学習に努めている理学療法士の方がクライアントにとって良いサービスを提供できるのは言うまでもありません.
ただ4年制大学化というのは理学療法士の社会的地位を確立するためには必須です.
6年生教育の医師・薬剤師,3年制教育も認められている理学療法士という立場では,いくら卒後に研鑽する理学療法士が多いといっても,理学療法士の社会的地位が上がるはずもありません.
クライアントの治療を真摯に行っていれば理学療法士の地位が上がるなんて言うのは幻想です.
それはそれでもちろん大切ですが,それ以上に大学化が重要です.
コメント