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認定理学療法士症例報告レポート記載例 呼吸器
このブログの中でも数回に分けて取り上げさせていただきましたが,2021年以降,日本理学療法士協会の認定理学療法士制度は大きく変わることが明らかにされております.
そのため昨年度もものすごい数の認定理学療法士受験者数となりました.
今年度もまたかなりの数の理学療法士が認定理学療法士取得に向け,試験を受けることが予測されます.
認定理学療法士取得に当たっては,ポイント・症例報告レポート・認定試験といった3つのハードルをクリアする必要があります.
症例報告レポートに関してはどういった形式で記述すべきかといったご質問をいただきますが,具体例のようなものも出されていないのが現状です.
今回は認定理学療法士(呼吸器)症例報告レポートの記載例をご紹介させていただきます.
症例報告を記載する前に審査指標項目を把握しよう
症例報告の審査に関しては審査指標項目というのが決められております.
認定理学療法士(呼吸器)に関しては,以下の5つのポイントが審査指標項目となっております.
実は認定理学療法士(呼吸器)に関しては,審査指標項目が認定理学療法士(運動器)と同じなのです.
闇雲に記載するのではなく,まずはこの審査指標項目を把握することが重要です.
1.事例・症例の疾患もしくは状況課題が申請認定領域として適切に選択されているか,および事例・症例紹介・経過・(現)病歴が的確かつ明確に述べられている
まずは当然ですが,呼吸器疾患を対象としているかといったところです.
呼吸器疾患というと肺炎や慢性閉塞性肺疾患等が代表的ですが,例えばもともと在宅酸素療法を行っていた方で,何らかの疾病で入院によって呼吸状態が不良となった方も呼吸器に焦点を当てて介入を行っていれば,状況課題が呼吸器に関連したものであると考えられますので,対象とすることは可能でしょう.
また消化器外科の術前後の介入のように肺合併症の予防に向けて理学療法を行った症例等も状況課題からすれば対象として適当だと考えられます.
2.評価および問題点が的確かつ明確に述べられているか
評価結果をもとに問題点を抽出できているかどうかがポイントとなります.
評価結果は客観的である必要がありますので,できるだけ数値で表せるような尺度を用いて評価を行うことが重要です.
呼吸器疾患であれば生化学的な血液データやモニタリングしている生体指標を記載しておくことことをお勧めします.
具体的には病態と機能低下,あるいは機能低下と能力低下を関連付けた上で問題点を抽出することが重要となります.
理学療法士の視点で記述することが重要ですので,最終的には動作や日常生活動作と関連付ける視点も重要です.
3.介入内容が十分に的確であり明確に述べられているか
評価から導き出された問題点に対してどういった介入を行ったのかを具体的に記載します.
この介入内容が評価から導き出した問題点とかけ離れたものであれば審査は低い点数となってしまうでしょう.
介入ありきではなく評価ありきでどういった介入を行ったかを記載することが重要です.
4.結果・成果が客観的かつ的確であり,明確に述べられているか
評価結果は客観的である必要がありますので,できるだけ数値で表せるような尺度を用いて評価を行うことが重要です.
可能であれば初回介入時の客観的データと照らし合わせながら,記述できるとよいでしょう.
5.考察において論理的であり明確に述べられているか
具体的には疾病や手術と機能低下,あるいは機能低下と能力低下を関連付けた上で問題点を抽出した流れ,そして問題点に介入を行ったことでどのような結果・成果が得られたかを論理的に記述します.
ここで日々の臨床の中で頭の中で行っているクリニカルリーズニングを言語化することが重要となります.
認定理学療法士事例・症例報告サマリー用紙不適切な記入の例
こんなのはNGですので,気をつけましょう.
- 字数が不足している,または字数が多すぎる(1症例につき全体の文字数は 1,000~1,200 程度)
- 書式が古い(HP に掲載の最新の書式で作成してください)
- 客観的評価項目や数値が不十分である(検査結果に単位が記載されていることが望ましい)
- 開始時所見や終了時(報告時)所見の理学所見が不十分
- 考察について内容が経過報告になっていて,考察になっていない(ただ客観的データを並べるだけではダメです)
認定理学療法士症例報告レポート記載例 呼吸器
診断名・障害名:直腸癌術後
年齢:80歳代後半
性別:男性
区分:入院
病歴
30代の頃に結核で左胸郭形成術を施行.15年前から慢性気管支炎で在宅酸素療法を使用(日中は1ℓの酸素吸入が必要な状況だがroom airで過ごしていることが多い).○年○月に直腸局所切除術を施行.術後は気管内挿管となる.人工呼吸器の設定はTV:300ml,f:12bpm,PEEP:3cmH2O,FiO2:0.35,酸素1~5ℓであった.
評価
術前呼吸機能検査は,%VC:31.8,FEV1%:70.2,であり,術前のCTでは左胸郭形成術により左肺は喪失しており,右肺に石灰化病変や索状変化が散見された.
また一元的にold TBを疑わせる病変であった.
術後の血液ガスデータでは,FiO2:0.35,PaO2:144mmHg,PaCO2:45mmHg,HCO3-:28.7mEqであった.
また術前に測定した6分間歩行試験では酸素1ℓで160mであり,自覚症状は乏しいものの3分程度の歩行でSpO2が82%まで低下する状況であった.
胸郭の可動性低下が著しく,胸郭拡張差は0.5cmであった.
ADLは自立しており,NRADL尺度において動作速度・呼吸困難感ともに0点の項目は無く,入浴と外出の項目が1点,その他は2点であった.
術後3日目までは鎮静中であり,人工呼吸器管理であった.呼吸音は下側肺で減弱しており,明らかな左右差は認めなかった.術後4日目より鎮静解除となり,四肢の自動運動も可能であった.
問題点
#1.在宅酸素療法に対するコンプライアンス低下
#2.術後肺合併症のリスク大
#3.胸郭可動性低下
介入内容
術前
program1.胸郭ストレッチ・呼吸法指導
program2.自転車エルゴメータ―
術後(人工呼吸器管理中)
program1.Positioningと排痰援助
術後(抜管後)
program1.Mobilization(離床・歩行練習)
program2.酸素ボンベ使用方法の指導,在宅酸素療法の必要性に関する指導,ADL指導
介入結果
術後4日目には抜管でき,術後10日目には病棟内歩行が自立となった.
術後4週で6分間歩行試験も275mまで改善が見られ,ADLは全て自立した.
また胸郭拡張差も3cmまで改善した.
術後より身体が楽になったといった発言が増え,在宅酸素療法に対するコンプライアンスにも改善が得られた.
考察
本症例は術前より在宅酸素療法の必要性を指摘されていたにもかかわらず,在宅酸素療法に対するコンプライアンスが不良であった.
術前の6分間歩行試験の結果からも低酸素血症が進行しており,胸郭の柔軟性低下も著しい状況であり,術後も肺合併症のリスクが高い状況であった.
術前より胸郭の窩可動性改善と耐久性向上を目的としたプログラムを行ったことで,術後も肺合併症を併発することなく歩行・ADLの自立に至ったと考える.
また入院中の適切な酸素療法の徹底により自覚的疲労感に軽減が得られことで,在宅酸素療法に対するコンプライアンスにも改善が得られたものと考える.
今回は認定理学療法士(呼吸器)症例報告レポートの例をご紹介させていただきました.
私なりに仮想症例で記載してみたものの不十分なところもあると思います.
あくまで1つの参考にしていただけると嬉しいです.
その他にも認定理学療法士に関する記事をまとめておりますので是非参考にしていただければと思います.
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