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気になる今後の認定理学療法士制度
ご存じの方も多いと思いますが,2020年度(令和2年)に理学療法士の生涯学習制度が変更となります.
理学療法士の生涯学習制度が変わることによって,われわれ理学療法士を取り巻く環境も大きく変わってきます.
まだ定かでない部分も多いのですが,今回は理学療法士の生涯学習制度の変更について考えてみたいと思います.
現行の生涯学習制度
現行の生涯学習制度は1997年(平成9年)に開始され,現在に至ります.
これまでにも制度改正は行われてきましたが,minor changeがほとんどで,今回のように大幅な制度改正が行われたのは,約20年ぶりということになります.
これまでの認定理学療法士制度では,各種専門分野に登録した後に,各領域で定められている必要な研修会へ参加し,ポイントを集めた上で,10例分の症例レポートを提出します.
最終的に年度末の筆記試験に合格すれば認定理学療法士を取得できるといった流れです.
認定理学療法士の合格率は?
ここ最近の認定理学療法士試験の合格率を見てみてみたいと思います.
H28年度は1669名が受験し,そのうち1081名が合格しておりますので,合格率は64.7%となっております.
H29年度は2343名が受験し,そのうち1510名が合格しておりますので,合格率は64.4%となっております.
H30年度は3473名が受験し,そのうち2987名が合格しておりますので,合格率は86.0%となっております.
驚くべきはH30年度の合格率が非常に高いといった点です.
それまでなんとなく受験していた理学療法士が多かったのでしょうが,生涯学習制度の変更に向けて,本腰を入れて勉強をされた理学療法士が多かったといえるでしょう.
2020年以降どのように変わるのか?
では2020年度(令和2年)以降にこの制度がどのように変更されるのでしょうか?
日本理学療法士協会は今回の改定の目的として,理学療法士の臨床能力の底上げと努力(研鑽)をした会員が正当に評価されるといった点を挙げております.
つまり全体的な理学療法士の質を上げ,努力している会員に何かしらのインセンティブを与えようといった目的です.
今回の改定ではいくつか大幅に制度が変わる
①研修理学療法士プログラム(現新人教育プログラム)および認定理学療法士プログラムの時間が大幅に延長されます.
②登録理学療法士制度の新設により実質的な免許更新制を目指すこととなります.
③外部評価が得られる水準に進化させ,認定理学療法士制度を医療広告ガイドラインにも合致するものにすることを目標としております.
簡単に言えば,現行の認定理学療法士制度ではプログラム時間が短すぎるため,医療広告ガイドラインに合致しないので,時間を延長するといったところでしょうか?
さらに今回の制度改訂の大きな特徴としては,On the Job Trainingの導入,e-Learningの積極的活用,外部評価機構の構築が挙げられます.
主に特記すべきは研修理学療法士と登録理学療法士の創設です.
研修理学療法士は卒後2年程度を想定しており,現制度でいう新人教育プログラムに相当します.
そして研修理学療法士を修了した後は,登録理学療法士として認定理学療法士の取得を目指すこととなります.
現行の制度では,専門分野登録後約効率よく研修会に参加し,レポートを作成すれば,最短で2年あれば認定理学療法士を取得できるわけですが,新制度では登録理学療法士になった後,最低でも3年間(卒後5年を想定)研修に参加する必要があります.
つまり認定理学療法士を取得するハードルが非常に高くなったと言えます.
時間にすると約638時間程度の増加ですので,逆に取得しようとする理学療法士が少なくなることも危惧されます.
今年度のうちに取得できる可能性がある方は,今年度中に取得することが勧められます.
もう1点,非常に重要なのは新制度になると,現行の新人教育プログラムは打ち切られ,履修途中の場合でもこれまで取得した単位は無効になってしまいます.
理学療法士間の格差拡大につながる
日本理学療法士会は最終的には認定理学療法士に対して診療報酬上のインセンティブを与えるところまで考えているようです.
例えば,現行の疾患別リハビリテーションで160点を算定できる場合に,認定理学療法士を取得している理学療法士が20分間の理学療法を行うと170点算定できるものの,認定理学療法士を取得していない理学療法士が20分間の理学療法を行っても150点しか取得できないといったような形式です.
こうすればトータルの診療報酬は変わらないので国としても困ることはありません.
この制度が本当に実現すると,認定理学療法士を取得しているセラピストと取得していないセラピストで,同じ単位数でも売り上げに差が出ることになります.
日本理学療法士協会は理学療法士の中で競争社会を作り出したいわけです.
国にとってもメリットがある
今年の秋から消費税が増税とはなりますが,国としてはとにかく医療費を抑制したいわけです.
例えばより高い疾患別リハビリテーション料を算定する要件として,その疾患領域に相当する知識・技術を有した専門職(認定理学療法士等)が〇名配置されていることといった記載が加われば,その1文で認定理学療法士を取得していない事で疾患別リハの算定料が実質的な減算をされてしまうことになります.
現状での会員の認定理学療法士の取得割合が非常に低いことを考えると,国からすれば医療費の抑制につながると考えられるでしょう.
ただあくまで診療報酬の形式で評価されるといったものですので,それがそのまま理学療法士の給料に還元される訳ではないわけです.
ただ雇用する医療機関側からすれば,認定を持っていない=金にならないとなる訳ですので必然的に賃金格差が広がっていくことが予想されます.
今回は理学療法士の生涯学習制度の変更について考えてみました.
今後の生涯学習制度の変革に期待をすると同時に,新制度が開始する前に認定理学療法士を取得できる人は取得をしておいた方がよさそうですね.
その他にも認定理学療法士に関する記事をまとめておりますので是非参考にしていただければと思います.
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