認定理学療法士症例報告レポート記載例 スポーツ理学療法

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 認定理学療法士症例報告レポート記載例 スポーツ理学療法 

このブログの中でも数回に分けて取り上げさせていただきましたが,2021年以降,日本理学療法士協会の認定理学療法士制度は大きく変わることが明らかにされております.

そのため昨年度もものすごい数の認定理学療法士受験者数となりました.

今年度もまたかなりの数の理学療法士が認定理学療法士取得に向け,試験を受けることが予測されます.

認定理学療法士取得に当たっては,ポイント・症例報告レポート・認定試験といった3つのハードルをクリアする必要があります.

症例報告レポートに関してはどういった形式で記述すべきかといったご質問をいただきますが,具体例のようなものも出されていないのが現状です.

今回は認定理学療法士(スポーツ理学療法)症例報告レポートの記載例をご紹介させていただきます.

 

 

 

 

 症例報告を記載する前に審査指標項目を把握しよう 

症例報告の審査に関しては審査指標項目というのが決められております.

認定理学療法士(スポーツ理学療法)に関しては,以下の5つのポイントが審査指標項目となっております.

実は認定理学療法士(スポーツ理学療法)に関しては,審査指標項目が認定理学療法士(運動器)と同じなのです.

闇雲に記載するのではなく,まずはこの審査指標項目を把握することが重要です.

 

 

 

 

 

1.事例・症例の疾患もしくは状況課題が申請認定領域として適切に選択されているか,および事例・症例紹介・経過・(現)病歴が的確かつ明確に述べられている

まずは当然ですが,スポーツ障害を合併したクライアントを対象としているかといったところです.

スポーツ障害というとアキレス腱断裂,膝靭帯損傷,足関節捻挫といった急性外傷から,アキレス腱炎,ジャンパー膝,投球障害肩,テニス肘等の慢性疾病までさまざまな病態が挙げられます.

いずれにしてもスポーツ復帰に向けた理学療法や,スポーツ動作によるマルアライメントに伴う障害発生機序を考慮した上で再発予防に向けた介入経過を記すことが重要であると考えられます.

特に明らかな疾病が無くとも,予防的な介入を行った場合でもこのスポーツ理学療法領域における状況課題として妥当だと考えることができます.

 

 

 

 

 

2.評価および問題点が的確かつ明確に述べられているか

評価結果をもとに問題点を抽出できているかどうかがポイントとなります.

評価結果は客観的である必要がありますので,できるだけ数値で表せるような尺度を用いて評価を行うことが重要です.

一般的な運動器理学療法における理学所見はもちろんですが,スポーツ動作に特化した指標を用いてスポーツ理学療法評価を行っておくことをお勧めします.

具体的には病態と機能低下,あるいは機能低下と能力低下を関連付けた上で問題点を抽出することが重要となります.

理学療法士の視点で記述することが重要ですので,最終的にはスポーツ動作と関連付ける視点も重要です.

 

 

 

 

 

3.介入内容が十分に的確であり明確に述べられているか

評価から導き出された問題点に対してどういった介入を行ったのかを具体的に記載します.

この介入内容が評価から導き出した問題点とかけ離れたものであれば審査は低い点数となってしまうでしょう.

介入ありきではなく評価ありきでどういった介入を行ったかを記載することが重要です.

 

 

 

 

 

4.結果・成果が客観的かつ的確であり,明確に述べられているか

評価結果は客観的である必要がありますので,できるだけ数値で表せるような尺度を用いて評価を行うことが重要です.

可能であれば初回介入時の客観的データと照らし合わせながら,記述できるとよいでしょう.

 

 

 

 

 

5.考察において論理的であり明確に述べられているか

具体的には疾病や手術と機能低下,あるいは機能低下とスポーツ動作を関連付けた上で問題点を抽出した流れ,そして問題点に介入を行ったことでどのような結果・成果が得られたかを論理的に記述します.

ここで日々の臨床の中で頭の中で行っているクリニカルリーズニングを言語化することが重要となります.

 

 

 

 

 

 

 認定理学療法士事例・症例報告サマリー用紙不適切な記入の例 

こんなのはNGですので,気をつけましょう.

 

  • 字数が不足している,または字数が多すぎる(1症例につき全体の文字数は 1,000~1,200 程度)
  • 書式が古い(HP に掲載の最新の書式で作成してください)
  • 客観的評価項目や数値が不十分である(検査結果に単位が記載されていることが望ましい)
  • 開始時所見や終了時(報告時)所見の理学所見が不十分
  • 考察について内容が経過報告になっていて,考察になっていない(ただ客観的データを並べるだけではダメです)

 

 

 

 

 

 認定理学療法士症例報告レポート記載例 スポーツ理学療法 

診断名・障害名:アキレス腱断裂

年齢:30歳代前半

性別:男性

区分:外来

 

 

 

 

 

病歴

フットサルのジョギング時にアキレス腱痛とともに,下腿部の脱力感があり,近医を受診後に左アキレス腱断裂と診断される.

近医にてギプス固定を行い,第14病日目に腱縫合術施行となる.

術後は2週目よりアキレス腱治療用装具を装着し,自宅退院となる.

術後6週で装具を完全に除去し,当院での外来理学療法開始となる.

 

 

 

 

 

評価

外来理学療法開始時には,安静時痛は認めなかったが,足関節背屈運動時にアキレス腱内側にNRSで2/10の疼痛を認め,カーフレイズ時にもアキレス腱内側にNRSで3/10の疼痛を認めた.

また軽いジョギング時にはアキレス腱内側にNRSで7/10の疼痛が出現し,走行が困難であった.

Thompson testは陰性であり,左距骨下関節は回外位であった.

左アキレス腱下端内側部と深層部および,左後脛骨筋と長母趾屈筋の筋腹に圧痛を認めた.

左アキレス腱は肥厚しており,創部と左アキレス腱周囲の滑走性・伸張性低下が顕著であった.

下腿周径は最大周径に3cmの左右差を認めた.

最小周径に左右差は無かった.関節可動域は両側とも足関節背屈(膝関節伸展位)20°,足関節背屈(膝関節屈曲位)25°,足関節底屈45°,足関節内反35°であった.

足関節内反のみ左右差を認め,右足関節外反10°・左足関節外反10°であった.筋力はMMTにて足関節底屈(膝関節仲展位)右5/左3,足関節底屈(膝関節屈曲位)右5/左3,足関節背屈両側とも5であった.

左片脚立位では足部外反位を呈しており後足部回内が顕著であった.

骨盤は前傾位,であり骨盤が右側挙上位,体幹側屈位であった.

両脚カーフレイズ時には踵骨挙上量は左低位であり,左片脚カーフレイズには足部外転位での過剰な足趾屈曲と踵骨回外を伴う足関節底屈連動を認めた.

底屈時に右側骨盤挙上および体幹左側屈運動を認めた.

ジョギング時には前額面では.前足部接地から荷重応答期に足部外転と後足部回内を呈し,蹴り出しは後足部回外を伴う足関節底屈と左体幹側屈と右側骨盤挙上が顕著であった.

矢状面では,前足部接地から荷重応答期にかけて下腿前傾量が少なく,体幹前傾量の増加と股関節伸展の不足を認めた.

 

 

 

 

 

 

問題点

#1.足関節背屈運動時の疼痛

#2.足関節底屈筋力低下

#3.走行時の前足部接地~荷重応答期における後足部回内

#4.走行困難・競技(フットサル)復帰困難

 

 

 

 

 

介入内容

介入当初はアキレス腱内側部の瘢痕組織の滑走性・伸張性の改善を目的に徒手的な介入を選択した.

下腿三頭筋の筋力トレーニングは荷重下での足関節底屈運動から開始し,長母趾屈筋や後脛骨筋の代償を抑制させるように上昇局面で踵骨回外を,下降局面では踵骨回内を抑制して行った.

筋力回復に従い,動作パターンを修正しながら,足関節底屈と股関節伸展を複合したホップエクササイズやその場でのジョギング,最終的にはジャンプや連続ホップエクササイズとプライオメトリックな要素を取り入れたトレーニングを行った.

 

 

 

 

 

介入結果

最終的に術後3か月の段階で,他動運動時の圧痛・他動運動時痛・ジョギング時の圧痛は完全に消失した.

左後足部回内可動性にも改善が得られ,下腿周径(最大周径)の左右差も0.5cmとなった.MMTによる左足関節底屈筋力も膝関節伸展位・膝関節屈曲位ともに5レベルまで改善した.

左片脚カーフレイズ時の足部外転・踵骨回内位にも改善が得られ,それに伴い,下肢の不良動作パターンも改善した.ジョギング時の左前足部接地から荷重応答期の後足部回内も消失した.

最終的に70~80%まで走行が可能となった.

 

 

 

 

 

考察

本症例は足関節可動域の改善は良好であったが,足関節底屈筋力低下が著明であり,疼痛のため走行が困難であった.

下腿三頭筋の筋萎縮および筋力低下に加えてアキレス腱とその周囲の軟部組織の伸張性低下を認めた.

長期固定や炎症によりKager’s fat padに線維化が生じ,足関節底屈時のアキレス腱や後踵骨滑液包との滑走障害を引き起こしていたものと推測する.

ジョギング時の疼痛の発生機序として,前足部接地から荷重応答期で生じる後足部回内運動の際に,滑走障害を有するアキレス腱内側部の瘢痕組織の伸張ストレスが一因であると考え,後足部回内アライメントの改善を図った.

結果として走行時の不良動作パターンにも改善が得られ,走行時の疼痛は消失し,70~80%までの走行が可能なものになったと考える.

今後はキック動作やカッティングや切り返しおよびバック動作などのステップ動作ジャンプ動作といった競技特異的な動作の再独得を図り,段階的な競技復帰を進めていく必要があると考える.

 

 

今回は認定理学療法士(スポーツ理学療法)症例報告レポートの例をご紹介させていただきました.

私なりに仮想症例で記載してみたものの不十分なところもあると思います.

あくまで1つの参考にしていただけると嬉しいです.

 

その他にも認定理学療法士に関する記事をまとめておりますので是非参考にしていただければと思います.

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