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日本における現代病への罹患
今や糖尿病が950万人に,高血圧症は4000万人に,高脂血症は2000万人に,認知症は460万人にそして毎年100万人が新たにがんに罹患し,年間で37万人ががんで命を落としている状況です.
こういった話を聞いてもあまりピンとこないかもしれませんが,日本人の人口が1億2000万人を下回っているということを考えれば非常に多い数字ですし,これらすべての疾病が10年後にはさらに増加することが予測されております.
今回ご紹介するのは,これらすべての病気の1つの原因として歩かなくなったことが挙げられるといった話です.
歩かないことだけが直接的に病気を発生させるたった1つの原因ではないわけで,あくまで原因の1つであるといったことが重要です.
沖縄クライシス
沖縄クライシスという言葉を聞いたことありますか?
沖縄県と言えば一昔前までは,日本一長寿な都道府県として有名でした.
実際に1985年には男女とも平均寿命が第1位だったわけです.
ところが2000年には沖縄県の男性の平均寿命は全国26位となり,2010年の調査では30位にまで転落している状況です.
興味深いのは沖縄県の女性は2005年まで平均寿命全国1位を保持しており,2010年の調査でも3位と上位のままなのですが,これは長寿の高齢女性が平均寿命を引き上げているだけです.
恐ろしいのは65歳未満の死亡率は男女ともにワースト1位なのです.
どうしてこのように死亡率が高くなってしまったのかというと原因の1つとして車社会になったことが挙げられます.
実は沖縄の人というのは暑さが厳しいうえにタクシー料金が安いので子供のころからタクシーを使う人が多く,身体活動量が1980年代に比較すると著しく低下しているようです.
つまり歩かなくなったことが死亡率を挙げている可能性があります.
江戸時代には日本人は30,000歩歩いていた
日本人があるか無くなったと言いますが,昔の人はどのくらい歩いていたのでしょうか?
実は江戸時代には日本人は現代の人たちより約6倍,30000歩も歩いていたと言われております.
もちろん江戸時代には自動車もありませんでしたし,デスクワークなんてなかったわけです.
明治や大正時代の人たちも同じように30000歩くらい歩いていたと言われております.
ところが公共交通機関が発達して,自転車やバイク,自動車と便利な乗り物が普及してからというもの,歩こうと意識しなければ歩く機会がないわけです.
サラリーマンは地位が上がるほど歩かなくなるといった研究結果も出ているほどで,ある調査によると課長・係長クラスが1日7000歩歩くのに対して,部長クラスは1日5000歩,重役クラスになると1日3000歩しか歩いていないようです.
江戸時代の健康法 養生訓
今やさまざまな健康法がありますが,江戸時代における健康法として有名なのは貝原益軒の養生訓です.
この養生訓には食事や性生活のことなどが記されておりますが,実は運動に関することはなにも記載されていないのです.
なぜかと考えてみますと,この時代には歩くしか移動手段がなかったわけですので運動の重要性をわざわざ記す必要が無かったと考えられます.
つまり歩くこと,体を動かすことは当たり前すぎて意識することもなかったわけです.
今回は日本人がどれだけ歩かなくなったのかについて考えてみました.
冒頭でも述べましたが,歩かないことだけが直接的に病気を発生させるたった1つの原因ではありません.
しかしながら現代病の原因の1つであることは間違いありません.
病態的に歩くことを積極的に勧められないクライアントもいるとは思いますが,理学療法士として歩くといった行為を改めて見つめなおす必要があると思います.
クライアントの身体活動量を増やすことも理学療法士の役割の1つだと思いますので,こういった知識をベースにいかにクライアントに歩いてもらうかを改めて考えてみる必要があると思います.
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