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残念ながら運動はダイエットの主役ではない
理学療法士であればクライアントのダイエット(減量)に向けて,運動指導を行うことも少なくないと思います.
ダイエット(減量)に向けては有酸素運動やレジスタンストレーニングの指導を行うことが多いと思いますが,運動を十分に実践していてもなかなか減量できないといった方は少なくないと思います.
残念ながら運動療法というのはダイエット(減量)の主役にはなりえないのです.
運動を謳うダイエット(減量)必ず食事指導をしている
テレビでこんな芸能人が運動を一定の期間継続したら体重が10kgも減りましたなんて番組がありますが,これって絶対運動だけの効果ではないのです.
運動を謳うダイエット(減量)法でも必ずといってもいいほど食事療法を併行して実践しています.
運動してもなかなか痩せない人の多くは,好きな物を食べながら痩せたい,運動は実践しても良いけど食生活は変えたくないといった風に食生活に問題のある人が多いのです.
そもそもダイエット(減量)のメカニズムを考えると,食事のコントロール以上に効果的なダイエット法はなく,そこに必要な分の運動を足すという考え方が適切です.
最近のダイエット本を手に取ってみても,ある特定の運動法の説明をしている書籍で,食事についても少なからず記載のあるものがほとんどです.
ダイエット成功者は運動療法ではなく,食事療法で瘠せていることがほとんどです.
これはわれわれ理学療法士にとっては悲しい話かもしれませんが,事実ですので仕方ありません.
消費するカロリーの僅かな利益
定期的な運動(身体活動)が健康のためによいといった話は,最近ではわれわれ理学療法士に限らず多くの日本人が知識としては持っていることがほとんどだと思います.
1942年にミシガン大学のルイス・ニューバーグ(Louis Newburg)による調査によると,体重110kgの男性がひと続きの階段を上がるのに消費するのはたったの3kcalなのです.
つまりパン1切れに含まれるエネルギーを消費するために20の階段(1続きの階段×20)を昇降する必要があるのです.
私がクライアントによく説明する例としては240kcalのショートケーキを1つ食べると,自転車エルゴメーターを60分比較的強い運動負荷でこぎ続けなければ,ショートケーキ分のカロリーを消費することができないのです.
またウォーキングのような有酸素運動よりも,レジスタンストレーニングのように筋肉を増やす運動でダイエット(減量)を図ることが可能であるといった話もありますが本当でしょうか?
筋肉は脂肪よりも代謝的に活発で,より多くのカロリーを消費するため,脂肪を減少させることに役立ちます.
しかしながら仮にレジスタンストレーニングを継続して2kgの体脂肪を2kgの筋肉に置き換えたとしても,エネルギー消費の増加量は1日当たりたったの24kcalにすぎません.
これはゆで卵1/4程度の消費カロリーに過ぎないわけです.
このように消費カロリーを考えても運動はダイエット(減量)の主役にはなりえないことを理解していただけると思います.
運動しても体脂肪は減らない
ダイエット(減量)といえば体脂肪を燃焼させることに主眼が置かれがちです.
もともと体脂肪というのは備蓄型のエネルギーですので,すぐには消費しないような仕組みになっています.
そのため強度の高い運動を行ったり,短期的に痩せようと頑張って運動しても,消費しているのは肝臓や筋肉に蓄えられている即効型エネルギーであるグリコーゲンなのです.
つまり糖質が消費されるだけなのです.
また糖質が使われると,人間はは早くそれを元の状態に戻したがるので糖質を欲するようになります.
一般的に体脂肪が燃えやすいと言われている有酸素運動であっても,消費しているカロリーの約半分は糖質なわけです.
30分のウォーキングで消費されるカロリーが100kcalだとしても,これは体脂肪ばかりが燃焼されているわけではなくて,消費されているエネルギーの半分は糖質なわけです.
燃焼効率の良い有酸素運動でさえもその程度なのです.
食事制限と運動が続かないのはなぜか?
ダイエット(減量)には食事療法と運動療法を行っていく必要があるわけですが,食べないで動き続ければ痩せるわけです.
ただ実際には日常の生活を営む以上,最低でも2~3回の食事は必要ですので,そんなことは難しいわけです.
運動に関しても好きな運動なら継続できますが,嫌いな運動を継続するのは苦痛でしかありません.
また運動によって食欲が増し,さらに食べたいという気持ちは増幅されストレスだけが溜まっていきます.
さらに人間は運動量を増やすと,自然にそれ以外の生活で運動しないようになる傾向があります.
昨日ウォーキングを頑張ったから今日は仕事中はエレベーターを使おうといった考えに陥る傾向にあります.
加えて長時間の運動はコルチゾール濃度を持続的に上げることにもつながる可能性があり,このホルモンは体脂肪の蓄積を促します.
一旦は痩せるかもしれませんが,ボクサーの減量と同じ一時的に絞るという行為なわけです.
その上,空腹で運動を行うと飢餓のメカニズムが形成されやすくなり,リバウンドしやすくなります.
残念ながら運動療法というのはダイエット(減量)の主役にはなりえないのです.
われわれ理学療法士は運動療法で消費できるエネルギー量が非常にわずかであることをクライアントに伝えた上で,運動指導と合わせて食事療法の重要性をといていく必要がありそうですね.
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