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理学療法士・作業療法士も意外と知らないトレーニングに関する迷信
昔は高校野球児が水を飲まずにトレーニングをしたり,ウサギ跳びをひたすら繰り返したり,根性をつけるといったような目的でそういった理にかなっていないトレーニングが行われてきました.
最近はさまざまな科学的データをもとに,従来から迷信として信じられてきたトレーニングの誤りが明らかとってきました.
今回は意外と知らないトレーングに関する迷信をいくつか紹介させていただきます.
痛みがないと効果がない
筋力トレーニングにしてもストレッチにしても痛みが出るまで行わないと効果が出ないなんて話がありますが,そんな馬鹿な話はありません.
痛みがなければ効いていないなんていうのは迷信です.
むしろ痛みは運動をやめたほうがよいサインだと考えた方がよいでしょう.
運動中はともかく運動後や翌朝まで強い疼痛が残るような場合には,運動負荷が過大であると考えた方がよいでしょう.
しかしながら筋力トレーニング後の筋肉痛は別です.
しっかりと筋力トレーニングを行うと,遅発性筋痛と呼ばれる筋肉痛が出現するのは仕方のないことです.
筋肉が強化される過程では,筋肉に微細損傷が起こります.
筋力トレーニングでは,この筋組織の備讃損傷と修復が繰り返されることで筋が強くなります.
この遅発性筋痛は運動後24時間から48時間で起こることが多いですが,運動後にアイシングをしたり,血行をよくしたり,圧迫を加えることによってやわらげることもできます.
腹筋運動をすればおなかまわりがすっきりする
腹筋をやっておなかの脂肪を減らすのは一見論理的に思えるかもしれません.
しかしながらこれは大きな間違いです.
ある特定の部位を動かしても,全身のカロリーを燃やすことになりますので,腹部といった狙った部位だけの脂肪を燃焼させられるわけではありません.
チリで行われた研究によると,被験者に週3回,利き脚ではない脚で一日約1,000回ずつレッグプレスを行わせると,エクササイズをした方の脚が細くなると思うかもしれませんが,実はその反対で,被験者の脂肪量は全体で5%減りましたが,運動した脚の脂肪はほとんど減っていなかったと報告されております.
つまり運動を行った部分の脂肪が燃焼されるわけではないということです.
ダイエット(減量)するなら最低でも1時間は運動しないといけない
昔からこういった話をよく聞きますが,実はこれも大間違いです.
運動量よりも運動の質の方が重要です.
ある研究によると,激しい運動を短時間行うのと,それよりも長く時間をかけてゆっくりしたペースで運動をするのでは,同じくらいの効果があるということが明らかにされております.
また最近の研究によると,週3回高負荷をかけた状態でバイクをこいだ成人グループと,50分間ゆっくりのペースでバイクをこいだグループを比べと心臓血管への影響は同程度であることが明らかにされております.
一番効果が得られるのは,心拍数を最大心拍数の80%に保って運動することです.
運動前に時間をかけてゆっくりストレッチすればケガの予防になる
理学療法士であれば静的ストレッチが運動パフォーマンスを低下させるということはよくご存じだと思います.
運動前にストレッチをすることは重要ですが,静的ストレッチはIb抑制により筋出力の低下を招いてしまいますので,逆効果です.
運動前にストレッチを行うのであれば,動的ストレッチが有効です.
動的ストレッチであれば運動パフォーマンスを低下させることなく,障害予防のための準備運動にもなります.
減量には有酸素運動よりも筋力トレーニングが効果的
心臓や血管を刺激するような有酸素運動は,筋力トレーニングよりも時間あたりの燃焼カロリーが多いのです.
ダイエット(減量)のために行うのであれば,どちらが効果的果は明らかです.
2012年にデューク大学が有酸素運動と筋力トレーニングとを比べた研究では,119例の肥満患者を有酸素運動単独,筋力トレーニング単独,有酸素運動と筋力トレーニングとの組み合わせの3群に分類してダイエット効果に関して比較を行っております.
その結果,8ヵ月後には有酸素運動を行った群はウエストと体重の両方を減らすことができたのに対して,筋力トレーニングしか行わなかった群は筋肉量は増えたものの体脂肪は減少しておりません.
さらに有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせて運動を行った群は,体脂肪・体重・ウエストサイズのすべてが減少しており,運動時間も一番多かったと報告されております.
したがって理学療法士にとっては常識かもしれませんが,ダイエット(減量)を図るためには,筋力トレーニングよりも有酸素運動が効果的であり,有酸素運動に筋力トレーニングを併用することが重要であると考えられます.
今回は意外と知らないトレーングに関する迷信をいくつか紹介させていただきます.
当たり前に思える内容がほとんどかもしれませんがいまだにこのような迷信を信じている一般の方が多いのも事実です.
われわれ理学療法士は運動の専門家としてきちんとこの迷信が間違っていることを伝えていく必要があるでしょう.
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