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理学療法士が考えるダイエット(減量)に効果的なウォーキングのコツ
腕振りがダイエット(減量)に効果的?
理学療法士であればクライアントの歩行に関して様々な指導を行う機会が多いと思います.
ウォーキングに関してもさまざまな指導をされると思いますが,クライアントに腕を振るようにアドバイスしたことはありますよね?
でもこの腕を振る指導がどんな効果をもたらすか知っていますか?
今回はダイエット(減量)に効果的な腕振りについて理学療法士の視点で考えてみたいと思います.
腕振りの効果
一般的に腕を振る理由は「推進力を得るため」と説明がなされることが多いです.
歩行中の腕振りには他にも,バランスをとるため,衝撃吸収のためなど様々な意味がありますが,一番大きいのは推進力を得るためと考えることができます.
歩行中に腕を振るとどうなるかを考えてみたいと思います.
腕を振るというのは肩関節を伸展させることになりますので,肩甲胸郭関節を通して胸郭と脊柱の回旋が起こります.
肩関節の運動が胸郭・脊柱に運動が波及し,さらに胸郭・脊柱から骨盤へ運動が波及され,推進力が得られます.
これは短距離走のランナーを考えると理解しやすいです.
一般的に短距離走のランナーは腕の振りがかなり大きくて速いです.
短距離ランナーは腕を大きく速く振って推進力を作っているわけです.
一方でマラソンランナーの腕の振りは短距離ランナーと比べると小さくゆっくりです.
これは腕の振りを抑えて消費エネルギー量をできるだけ少なくしようとする方策です.
ダイエット(減量)を目的としてウォーキングを行う場合には,消費エネルギー量を増やす必要がありますの,マラソンランナーとは逆に腕の振りを大きくする必要があります.
歩行時の腕振りが下肢筋活動に与える影響
人間は歩行中,両側の腕を無意識のうちに振りますが,これは単なる振り子運動ではなく,歩行を円滑に行うために中枢神経系に組み込まれた機構の一つであると考えられております.
最近では下肢の振りに合わせて対側ではなく同側の上肢を振った方が歩行速度の改善や歩行耐久性の向上につながることも報告されております.
今回ご紹介する研究では,歩行中の腕振りの状態が下肢筋活動にどのような影響を及ぼすかを検討しております.
結果ですが,遊脚相における大腿直筋と立脚相における中殿筋の筋活動は腕の振りを制限しない自由歩行に比べて,腕の振りを制限した固定歩行では,有意に低下しております.
したがってダイエット(減量)を目的としてウォーキングを行う場合には,腕の振りを意識して下肢筋活動を増やした方が消費エネルギー量を増加させることにつながり,より高いダイエット効果が得られると考えられます.
腕の振り方も重要
腕振りを考える際には腕の振り方が重要となります.
腕振りの意義は肩甲胸郭関節を動かして,肩甲胸郭関節の運動を骨盤へ波及させることで,推進力を高めるところにあります.
したがって兵隊の行進のように,腕を大きく前に振っても肩甲骨は動きませんのであまり意味がありません.
重要なのは腕を後ろにしっかり引いて,肩甲骨を内転させることです.
ですのでクライアントに対して腕振りの指導を行う場合には,腕をしっかり引いて肩甲骨が内転することを意識してもらうことが重要です.
肩甲骨が動くようになれば,骨盤にも運動が連動しより多くのエネルギーを消費することが可能となります.
腕を後方へ大きく動かすことがダイエット(減量)に効果的なウォーキングの方法といえるでしょう.
参考文献
1)清水麻由子,小池英晃,湯浅健人,小山桂史,山内潤一郎:歩行時の腕振りがエネルギー消費に及ぼす影響.体力科学 64:562,2015
2)吉村洋輔:腕振りの有無が連続歩行での下肢筋活動に及ぼす影響.理学療法学39:417,2012
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