理学療法士・作業療法士も知っておきたい糖質制限ダイエット

運動療法・物理療法
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目次

 理学療法士・作業療法士も知っておきたい糖質制限ダイエット 

数年前から日本では糖質制限ダイエットが流行しています.

夜は炭水化物を抜いた食事を摂取している方も多いと思います.

しかしながらこの糖質制限ダイエットには大きな落とし穴があるのをご存知でしょうか?

今回は理学療法士・作業療法士も知っておきたい糖質制限ダイエットについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 

 

 糖質制限ダイエットとは? 

糖質制限ダイエットとはご飯やパンといった炭水化物の摂取量を減らすダイエットの方法です.

炭水化物さえ減らせばいいというのはシンプルで魅力的な方法ではありますが,実は糖質制限ダイエットは必ずしもやせる食事ではないのです.

これはあまり知られていないことですが,炭水化物の中にも摂取することで太ってしまう炭水化物と摂取することで太ることのない炭水化物があるのです.

 

 

 

 

 

 低脂肪食ダイエットが主流の時代があった 

ハーバード公衆衛生大学院の研究者は,食事でダイエットしようとしている人たちがカロリーにばかり注目していることに警鐘を鳴らしております.

最新の研究によると,ダイエットにとって摂取するカロリーの量と同じくらい重要なのが,カロリーの質です.

つまり重要なのは,何キロカロリー摂取するかだけでなく,どのような食品でカロリーを摂取するのかといった点です.

食事は大きく分類すると,たんぱく質・炭水化物(糖質)・脂質の3つに分類できます.

たんぱく質と炭水化物は1gあたり4キロカロリーであるのに対して,脂質は1gあたり9キロカロリーもあります.

同じ重さでも脂質のほうが2倍以上カロリーが高いので,ダイエットのために摂取カロリーを減らそうと思ったら脂質の量を減らすのが一見すると合理的だと考えられます.

この考えを基に,昔は食事の中の脂質の量を減らす(低脂質食)ことでダイエットができるのではないかと考えられており,実際にそのようなダイエットが行われていました.

しかしながら研究に参加した人たちを低脂肪食と高脂肪食に無作為に割り付けたランダム化比較試験の結果,低脂肪食を食べていた人も,高脂肪食を食べていた人も体重の変化に差がないことが明らかにされております.

つまり低脂肪食は必ずしもやせる食事ではなかったということになります.

 

 

 

 

 

 やせる炭水化物はあるのか? 

最近の流行は食事の中の炭水化物の量を減らすことでやせることができるのではないかといった糖質制限ダイエットです.

元々は1972年にアメリカ人医師のロバート・アトキンスが著書の中で提唱したため,アトキンスダイエットとも呼ばれます.

日本では糖質制限ダイエットと呼称されることが多いですが,低炭水化物ダイエット,ケトン式ダイエットという名前で呼ばれることもあります.

これらのダイエット法は,程度の差こそあれ,いずれも炭水化物の量を減らすことでやせようといったダイエット方法です.

では食事の中の炭水化物の量を減らせば本当にやせることができるのでしょうか?

実は炭水化物を減らせばやせるという考え方は誤りです.

確かに単純に炭水化物の摂取量が多い人と少ない人を比較すると,炭水化物の摂取量が少ない人のほうが体重が減少することがランダム化比較試験で報告されております.

しかしながらわれわれが普段摂取している炭水化物の多くは白い炭水化物(精製された炭水化物のこと)ですので,これらの研究で低炭水化物食を摂取している人たちの体重が減少しているのは,白い炭水化物の摂取量が減少していることの影響を見ているにすぎないわけです.

ここで重要なのは炭水化物の量ではなくどのような炭水化物を摂取するかであるということはあまり認識されておりません.

白米や麺類のように精製された炭水化物は体重増加につながるものの,玄米や蕎麦のように精製されていない炭水化物を食べても体重は増えないのです.

ここでは食事内容と体重変化の関係を紹介したいと思います.

アメリカ人約12万人を12-20年間追跡して,食事内容が体重にどのような影響を与えるかを調査した観察研究によると,精製された炭水化物を摂取している人は体重が増加しているのに対して,精製されていない炭水化物を摂取している人は体重が減っていることが明らかにされております.

 

 

 

 

 

 フライドポテトを食べると太る? 

さらにじゃがいも,加糖飲料(糖分を含む炭酸飲料など),赤い肉,フルーツジュースなどをとっていた人ほど体重が増加することも明らかにされており,逆に野菜や果物,ヨーグルトを摂取している人の体重は減少することが明らかにされております.

注意が必要なのは,これは観察研究の結果であるので,因果関係があるかどうかは明らかではないといった点です.

したがってこれらの食品を食べると体重が減る(もしくは増える)と結論付けることはできず,体重が減った(増えた)人がこれらの食品の摂取量が多くなっていたということまでしか言及できないわけです.

それにしても精製された炭水化物と精製されていない炭水化物とでは体重変化との関係が真逆であったというのは非常に興味深い結果ではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 炭水化物を減らした分,何を食べるか 

同じ1g当たり4キロカロリーの炭水化物であっても,白米を食べていた人ほど体重が増加して,玄米を食べていた人ほど体重が減少したということは,摂取しているカロリーの量よりも何からそのカロリーを摂取しているか,つまりカロリーの質のほうが重要なのです.

最近,流行している糖質制限食の最大の問題点は,炭水化物を減らした分,代わりに何を食べるかに関して,間違った指導が行われていることが多いといった点です.

炭水化物さえ減らせばステーキでも焼肉でも好きな物を食べてもいいとアドバイスされてしまうと,その食事療法では確実に体重が増えてしまうでしょう.

逆に精製された炭水化物を減らして,その代わりに野菜や果物をたくさん食べれば体重は減少します.

精製された炭水化物を精製されていない炭水化物に置き換えるというのも正しい方法です.

このように糖質制限ダイエットが悪いわけではありませんが,糖質の代わりに何を食べるかに注目することが重要です.

 

 

参考文献

1)Ludwig DS, Friedman MI: Increasing adiposity: consequence or cause of overeating?. JAMA. 2014 Jun 4;311(21):2167-8.

2)Stern L, et al: The effects of low-carbohydrate versus conventional weight loss diets in severely obese adults: one-year follow-up of a randomized trial. Ann Intern Med. 2004 May 18;140(10):778-85.

3)Foster GD, et al: A randomized trial of a low-carbohydrate diet for obesity. N Engl J Med. 2003 May 22;348(21):2082-90.

4)Bertoia ML, et al: A randomized trial of a low-carbohydrate diet for obesity. PLoS Med. 2015 Sep 22;12(9):e1001878.

5)Flores-Mateo G, et al: Nut intake and adiposity: meta-analysis of clinical trials. Am J Clin Nutr. 2013 Jun;97(6):1346-55.

6)Gardner CD, et al: Effect of Low-Fat vs Low-Carbohydrate Diet on 12-Month Weight Loss in Overweight Adults and the Association With Genotype Pattern or Insulin Secretion: The DIETFITS Randomized Clinical Trial. JAMA. 2018 Feb 20;319(7):667-679

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