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10代の背部痛が増えている
背部痛や腰痛と聞くと中高齢者に多いといったイメージをお持ちだと思います.
本邦における国民基礎調査でも腰痛の有訴症率は非常に高く,腰痛によって休職を余儀なくされる勤労者も少なくないため,社会系的にも大きな問題となっております.
今回は米国の調査で10代の若者の背部痛が増加しているといった報告を紹介させていただきます.
Hospital for Special Surgeryによる研究報告によると
米国では,10代の若者の約3人に1人が背中から腰にかけて痛みを抱えた経験があることが,米ニューヨークHospital for Special Surgery(HSS)が行った研究で明らかにされております.
米国立衛生研究所(NIH)の推計では,米国成人の約80%がある時期に背部痛に苦しむとされております.
今回の報告では10歳から18歳の若者を対象に背部痛の実態に関して調査がなされております.
これだけ大規模に若年者の背部痛を調査した報告はこれまでに無かったのです.
研究報告の詳細
3,669人の若者(男児と女児がほぼ半数ずつ,平均年齢は14.0歳)を年齢と性別により均等に分けて分析した結果,約3人に1人(33.7%)が「過去1年以内に背部痛を経験したことがある」と回答しておりました.
背部痛を経験した若者は,そうでない若者に比べて体重が重く,肥満度(BMI)が高いことが明らかにされております.
また背部痛の頻度は男児よりも女児で高いことも明らかにされております.
さらに年齢が上がるごとに,背部痛を経験した若者の割合は約4%増加しております.
背部痛を訴える若者の約半数(48.9%)が「夕方に痛みを経験した」と報告しており,15.1%は「痛みが原因で睡眠が妨げられた」と報告しております.
参加者全体の40.9%が背部痛の治療を求めており,治療を受けた505人のうち44.0%が理学療法を,34.1%がカイロプラクティックを,33.9%がマッサージ療法を受けておりました.
調査に参加した若者のほとんど(79.3%)は活動的で,最も一般的だったバスケットボールのほか,ダンスや野球,フットボール,サッカーなどの運動に参加しておりました.
中でも競技スポーツは背部痛と強く関連しており,趣味でスポーツをする若者と比べて,本格的な運動選手で背部痛の発症頻度が高かったと報告されております.
さらにこの研究では,背中に背負うバックパックも若者の背部痛の原因に挙げられております.
興味深いことに特に片方のストラップだけでバックパックを背負う若者は,ストラップを両方使う若者よりも背部痛を経験する割合が高いことも明らかにされております.
今回は米国の調査で10代の若者の背部痛が増加しているといった報告を紹介させていただきました.
これはあくまで米国のデータではありますので,本邦の10代の若者にあてはめるのは危険なところがありますが,本邦でも10代の若者の肥満症の有症率が増加していることを考えると,本邦でも10代の若者の中で腰背部痛を訴える者が増加している可能性もあります.
いずれにしても10代の若者であっても背部痛が発生する可能性があるといった認識を持つとともに,若者が背部痛の原因になりそうなスポーツや活動をしないように促す必要があります.
また片方の肩でバックパックを背負うのはやめた方が賢明だと考えられます.
さらに最近の若者と言えばスマホです.
スマホ・タブレットの画面を眺める時間が長くなると,頸部をはじめとする背部の疼痛の原因に過ぎると背部痛が出現しやすくなる可能性もあります.
理学療法士であれば今後10代の若者の腰背部痛に着目しておく必要があるでしょう.
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