目次
スマートフォン(スマホ)を使った動作分析ってあり?
最近はスマートフォンの機能も素晴らしく向上しておりますので,学会なんかを見てもスマホを使った動作分析に関する報告も増えてきております.
今回はアプリケーションも含めてスマホやデジカメを使った動作分析について考えてみたいと思います.
スマートフォン搭載のカメラの機能
スマートフォンの普及に伴い,搭載するカメラの性能が製品の価値の一部となり,廉価な専用機と比較しても遜色なくなりました.
最近は一眼レフカメラ等は別としてコンパクトデジタルカメラを購入する方というのはかなり少なくなってきていると思います.
またスマホのカメラ機能を利用したアプリケーションの入手も容易となりました.
種類も非常に多くのアプリが出てますね.
理学療法士が用いているアプリの中で多いのが,Dartfish Express (http://www.dartfish.com/mobile)です.
このアプリはiOS,Androidに対応したスポーツ向けに開発された分析アプリケーションです.
臨床で必要な簡便性と計測精度を両立させております.
またこのアプリの素晴らしいのは治療前後や装具装着の有無などの2画面比較や,スロー再生による動きのフィードバック,任意の歩行周期での関節角度の計測が可能な点です.
加速度計を使ったアプリ
動作分析だけでなく加速度センサをつかったアプリも増えていますね.
リグレックス社のiPhoneアプリ加速度センサーロガー v1.3((http://www.regrexjp/works/)はiPhoneに内蔵された3軸加速度計,ジャイロセンサの数値を表示するアプリケーションです.
臨床応用例として,階段降り,ジャンプ動作の際に瘤痛を発生する脛骨粗面などにベルクロなどでスマートフオンを固定すると,同部位にかかる衝撃の指標として加速度の計測が可能となります.
またジャイロセンサは空間中の姿勢変化(ロール,ピッチ,ヨーの3方向で表示)を計測します.
健常歩行において体幹は直立位で移動しているため,胸腰部に添付したセンサのロール,ピッチ,ヨー角の変化から,歩行時の体幹の傾斜,動揺の状態を検出することができます.
2次元動作解析装置
臨床家の立場で考えると動作解析装置に求める機能は,「動作に必要な筋力(筋張力)が分かる機能」,「動作中に関節にかかる負担(関節間力)が分かる機能」です.
1950年代より続いている計測技術的には,その前段階の関節モーメントも有用なパラメータとなります.
1990年代になり,臨床家でも関節モーメントを計測し計算することが可能となりました.
21世紀における発展は主にHDデジタルビデオカメラの登場と,イメージレジストレーションの登場です.
HDデジタルビデオカメラ
HDデジタルビデオカメラの撮影性能は向上し続け,現在,有効画素数4,000万を超えるコンパクトカメラすら市販されています.したがって,計測精度の限界はアプリケーションとデジタイズの際のヒューマンエラー次第となります.
既に誤差1mm以下までの計測精度が可能となっている状況です.
貼付する赤外線反射マーカーも直径1~4mmのものを使用し,歩行中の足部アーチの変形までも計測可能となりました.
HDデジタルビデオカメラの性能向上は,個人向けの製品でも, 300Hz以上の高速撮影すなわちスーパースロー撮影を可能としており,走行あるいはスポーツ動作の計測にも利用されております.
関節モーメントの計算には従来,剛体リンクモデルが適用されてきました.
一方で筋張力の推定計算には,より精細な筋骨格モデルが適用されるため,HDデジタルビデオカメラの性能向上によって真値に近づいています.
さらに筋電図計測による筋骨格モデル自体の高精度化が進められている点も最近の進歩の1つです.
イメージレジストレーション
近年,ゲームなどのエンターテイメントの分野で応用されている方法が,イメージレジストレーションあるいは画像マッチングによる動作のデジタル化です.
この方法は,最初にT-postureなどのモデルにマッチングさせた対象者のアバターを生成し,動作中,ほぼリアルタイムで対象者の映像にアバターをマッチングさせると,モニタ上のアバターが対象者の動きに追従するものです.
一番有名なのはMicrosoft社のKinectではないでしょうか?
現在のところMicrosoft社の開発は終了していますが,Kinectを用いた動作解析アプリケーションソフトに関してはまだまだ市販されています.
また,独自のカメラ,計測システムを使用する製品も公開されています.
計測空間の校正,マーカーの貼付,デジタイズなどの繁雑な作業が不要で,しかも臨床での普及に適した点が多く,今後の展開に期待したいところです.
今回はアプリケーションも含めてスマホやデジカメを使った動作分析について考えてみました.
一昔前までは動作解析というと臨床で勤務する理学療法士からすると馴染みのないものでしたが,スマホやHDデジタルカメラの登場によりかなり身近なものになってきました.
定量的にクライアントの歩行を評価することが可能な時代になってきておりますので,臨床からの動作解析に関する報告も今後さらに多くなっていくことでしょう.
コメント