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PNF=対角線パターンといった誤解をしていませんか?
PNF(Proprioceptive Neuromusclar Facilitation)は理学療法士の手技の中でも古くからある手技の1つで,今もなお多くの理学療法士に使用されている治療技術の1つです.
養成校の授業の中でもこのPNFを運動療法技術の1つとして取り扱っている養成校も多く,治療手技の中でも最も一般化した治療技術ではないでしょうか?
今回からは理学療法士の視点で数回に分けてPNFの促通の要素についてご紹介させていただきます.
PNF=対角線パターン?
PNFというと対角線パターンをイメージされる方も多いと思います.
実際にコースでは宗教のようにこのパターンの練習を繰り返します.
おそらく養成校の授業でもひたすら実技と称してこの運動パターンを繰り返すと思います.
もちろんかなり難しい手技ですので繰り返し練習することは重要なのですが,私自身はPNFというとこの対角線パターンばかりに目が向けられ,固有受容器をはじめとする感覚受容器を促通するといった点が忘れ去られているところに大きな問題を感じております.
PNFには対角線パターン以外にも多くの促通要素が含まれており,PNFを使用しなくてもこの促通の要素を治療の中に取り入れることで,効果的に運動単位の動員を促通することが可能となります.
もちろん対角線パターンも促通の要素の1つですし,促通の要素の中でも重要なものであることには間違いありません.
しかしながらその他の促通の要素というのも非常に重要ですので,対角線パターンはあくまで促通の要素の1つであるといった認識が必要だと思います.
またPNFというと上肢・下肢のパターンを想像される方が多いと思いますが,PNFには頭頚部のパターン,肩甲骨のパターンや骨盤のパターン,下部体幹のパターン,上部体幹のパターンと四肢のパターン以外にも多くのパターンがあるわけです.
PNFの促通の要素
PNFは固有受容器をはじめとする感覚受容器(触覚・聴覚・視覚器も含む)を刺激し,神経筋機能を促通する方法と定義されます.
つまり対角線パターンが重要なのではなくて固有受容器をはじめとする感覚受容器を刺激することが重要なわけです.
感覚受容器を刺激する方法としてPNFの促通要素があります.
促通の要素には,運動パターン・筋伸張・関節牽引・関節圧縮・抵抗・発散と強化・正常なタイミング・用手接触・口頭指示・視覚刺激とかなり多くの要素があります.
実際にPNFを行う中ではこれらの促通要素をすべての運動パターンで考慮しながら,固有受容器を刺激して神経筋機能を促通するわけです.
実際にはPNFのパターンに拘ることなく,通常の抵抗運動にこれらの促通要素を入れ込むだけでも,神経筋機能の促通を図ることができるわけです.
したがってPNFを学ばなくてもこれらの促通の要素を学習しておけば,より効果的にクライアントの神経筋機能の促通を図ることができるということになります.
Gelhornの皮質刺激と促通
でも皆さん不思議に思いませんか?
本当に固有受容器をはじめとする感覚受容器を刺激することで神経筋機能は促通できるのでしょうか?
この理論の下になっているのがGelhornの皮質刺激という理論です.
この理論ではサルの皮質に電気刺激を加え,EMG電位の大きさを比較しております.
固有受容性の刺激無しの条件と固有受容性の刺激として関節圧縮や筋伸張を加えた条件では固有受容性刺激を加えた時の方がEMG電位が大きくなることが明らかにされております.
しかしながら脊髄後根を切除し,末梢の求心性刺激を除去するとこの現象が見られなくなります.
固有受容感覚系のインパルスが皮質刺激による運動に促通効果を持つ.
すなわち関節圧縮や筋伸張といった固有受容性刺激は皮質刺激に対する反応性を高めると考えられます.
この実験こそが固有受容器をはじめとする感覚受容器を刺激することで神経筋機能は促通できるといったもとになっているわけです.
今回はまず理学療法士の視点でPNFの促通の要素についてご紹介させていただきました.
次回以降,理学療法士の視点で促通の要素について1つずつ整理をしていきたいと思いますので引き続きお付き合いください.
参考文献
1)Gelhorn E:Proprioception and the motor cortex.Brain72:35-62,1949.
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