臨床実習で学生がクライアント対応した場合には診療報酬を算定していいの?

臨床実習・国家試験
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臨床実習で学生が対応した場合に診療報酬を算定していいの?

理学療法士の臨床実習で臨床実習生がクライアントに触れる機会は少なくないと思います.

ここで問題になるのが無資格である理学療法士の臨床実習生がクライアントに理学療法を行った場合に,診療報酬を算定してよいのかどうかといった点です.

今回は臨床実習で無資格である学生がクライアント対応することに問題が無いのか,仮にクライアントに対応した場合には診療報酬を算定していいのかどうかについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 

臨床実習における無資格診療の問題

理学療法士の臨床実習の一番の問題点は,資格を持たない学生が臨床実習において担当と称して患者を受け持ち,場合によっては単独で患者に関わり検査測定や施術を行っていることです.

さらに学生が単独で行っている行為を診療行為と捉え,その事実によって診療報酬請求を行っている場合もあり,クライアントにとって公正な診療になっていると思われないケースもあります.

 

 

 

 

厚生労働省からの無資格診療に関する答弁

平成28年に小児科医である阿部知子議員がこの無資格診療に関して国に質問主意書を提出しております.

これに対する厚生労働省からの返答は以下の通りです.

 

理学療法士等の学校養成施設の学生が臨床実習において行う理学療法等については,医師の指示及び相当の経験を有する理学療法士または作業療法士による指導ならびに患者の同意の下,その目的・手段および方法が社会通念から見て相当であり,理学療法士等が行う理学療法等と同程度の安全性が確保される範囲内にあれば,医学部の学生が臨床実習で行う医行為および看護学生が臨地実習で行う診療の補助と同様,違法性は無いと解することができる.

 

つまり理学療法士の指導の下,患者の同意を得て,患者の安全性を確保した上で実施すれば違法ではないと解釈できます.

これがいわゆる違法性阻却です.

違法性阻却というのはあくまで違法ではないというだけであって合法ではないとも考えられます.

ただこの回答からわかるように医師・看護師にならって理学療法士も実習を行いなさいといった回答を国がしているわけです.

 

 

 

 

臨床実習における学生が行う理学療法行為の違法性阻却に必要な項目

医療職の臨床実習では,学生が医行為を行うことに対する法的根拠(違法性を阻却する)が重要となります.

医学生の臨床実習では、4 つの基本的条件下で行う行為については違法性が阻却されるという考えが示されています.

つまり理学療法の臨床実習においても4 つの基本的条件を満たせば違法性が阻却できると考えられます.

 

 

 

 

 

違法性を阻却するための4つの基本的条件とは?

1.事前評価

2.理学療法士の臨床実習生が行ってもよい診療の補助行為(水準)の明確化

3.教育指導体制の完備

4.患者もしくは患者の保護者などからの同意と事故補償

 

 

 

 

事前評価

まず理学療法士の臨床実習生がクライアントに触れるためには,実習前に最低限の臨床実習に必要な知識・技術を備えておく必要があります.

理学療法士養成校によって実習前に実習性を評価する方法は様々ですが,OSCEやCBTを導入して事前評価を行っているところが多いと思います.

しかしながらOSCEの内容も養成校によって形式や内容が様々ですので,今後はこれがある程度統一される必要があります.

 

 

 

 

臨床実習生が行ってもよい診療の補助行為(水準)の明確化

これまで理学療法の実習においてはここまでは学生が行って良いけれども,ここは見学に留めておくべきであるといったような理学療法士の臨床実習生が実施可能な基本技術の水準というのが明確にされておりませんでした

現段階で理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会の中で,この水準が明確にされつつあります.

理学療法士の臨床実習生に許容される行為の範囲については3つの水準で構成されます.

 

 

 

 

 

水準1:指導者の直接監視下で学生により実施されるべき項目

これは資格取得までに確実に習得しておくことが求められる水準ということになります.

例えば基本動作・移動動作の介助や関節可動域検査・筋力検査などが含まれます.

 

 

 

 

 

水準2:指導者の補助として実施されるべき項目及び状態

水準2については行為の侵襲性やリスクが高いため指導者の補助として実施されるべき水準ということになります.

例えば急性期やリスクの高い状態のクライアントに対する基本動作・移動動作の介助や関節可動域検査・筋力検査などが含まれます.

その他にも超音波療法等の一部の物理療法や義肢・装具の調節等も水準2に含まれます.

 

 

 

 

 

水準3:見学にとどめておくべき項目および状態

水準3については行為の侵襲性やリスクが著しく高いため,見学にとどめておくべき水準ということになります.

例えば,クライアントに対する障害や予後に関する説明,人工呼吸器の操作,感染のリスクがある場合の物理療法,装具の選定などが水準3に該当します.

 

 

 

教育指導体制の完備

これは主には指導者の要件ということになります.

これまでの理学療法士の臨床実習では指導者要件は臨床経験3年以上という条件のみでしたが,今後は臨床経験5年以上に厚生労働省が定める臨床実習に関する研修会の受講が義務付けられました

これで教育指導体制の質を担保した上で違法性が阻却できるわけです.

 

患者もしくは患者の保護者などからの同意と事故補償 

これは当然ですが,クライアントから同意が得られなければクライアントに触れることはできません.

診療報酬の算定も同様です.

 

 

 

 

今回は臨床実習で無資格である学生がクライアント対応することに問題が無いのか,仮にクライアントに対応した場合には診療報酬を算定していいのかどうかについて考えてみました.

今回ご紹介した4つの条件を満たせば,医師・看護師の実習と同様に違法性阻却の原則に則って実習生がクライアントに触れることは問題ないわけです.

ただしこの4つの条件に加えて,指導者の管理・監督の下といった条件がありますので,われわれに課せられた責任を十分に理解した上で,臨床実習を行う必要があるでしょう.

今のところこの4つの条件が満たせてないことを考えると診療報酬の算定は非常にグレーに近いと考えてよいと思います.

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