理学療法士であればおさえておきたい関節可動域制限因子の種類

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理学療法士であればおさえておきたい関節可動域制限因子の種類

皆さんも経験ありませんか?

実習中に関節可動域を計測したら,「関節可動域制限の原因は何だと思う?」なんて指導者から問われたという経験は少なくないと思います.

また実際に関節可動域制限に対してアプローチを行う上では,関節可動域制限の原因を考えた上で,アプローチを行う必要があります.

関節可動域制限の原因によってアプローチは全く異なるものとなりますので,end feelや疼痛の訴え方等を十分に評価した上で,関節可動域制限の原因を考えることが重要です.

今回は理学療法士の視点で関節可動域制限の原因について考えてみたいと思います.

 

 

 

 

目次

 関節可動域制限の原因 

関節可動域制限の原因は大きく分類すると,8つに分類できます.

関節可動域制限因子の違いによって,可動域制限に対するアプローチは異なりますので,関節可動城制限が何によって起こっているのかを理解することは,理学療法を行ううえで非常に重要となります.

関節可動域制限因子以下の8つに分類することができます.

 

  • 痛み

  • 皮膚の癒着や可動性(伸張性)の低下

  • 関節包の癒着や短縮

  • 筋・腱の短縮および筋脱の癒着

  • 筋緊張増力(筋スパズム)

  • 関節内運動の障害

  • 腫張・浮腫

  • 骨の衝突

 

実際には可動域制限因子は1つではなく,多くの因子が混在していることも少なくありません.

ここからは1つずつ関節可動域制限の原因について考えていきたいと思います.

 

 

 

 

 痛みによる関節可動域制限 

手術直後や有痛性の疾患などの痛みにより関節可動域が制限されことは非常に多いです.

特徴としては無抵抗性のエンドフィールが感じられ,クライアントの痛みの訴えにより,それ以上,他動可動域を増すことができない場合は,痛みが制限因子であると考えられます.

術直後に関節可動域運動を行う場合や,有痛性疾患における可動域運動時の制限因子として頻繁に見られます.

さらに可動域を増そうとすると防御収縮を起こし,痛みは増加します.

痛みが制限因子ですので,アプローチとしては痛みを軽減させることにより可動域は改善します.

しかしながら他の新たな制限因子が出現することも多いといった点も非常に重要な視点です.

痛みの軽減のためには物理療法を利用したり,リラクセーションを図ることが重要となります.

また,痛みが制限因子の場合には重力を利用するのも効果的です.

具体的には,膝の屈曲では90°までは椅子座位とし,下腿を理学療法士が支え,重力の作用によりゆっくり屈曲していきます.

痛みをクライアントが訴えたら,それ以上屈曲せず,リラックスさせ徐々に力を抜かせます.

リラックスできたら,保持する力を緩め,さらに重力を利用し屈曲していきます.

肩関節の屈曲の場合には,腹臥位とし上肢をベッドから垂らし,膝と同様に重力を利用し徐々に屈曲していくと浦みを訴えない場合が多いです.

力を抜いて体幹を前屈することでも肩の屈曲は可能です.

コッドマンの振り子運動もこれを利用していると考えられます.

 

 

 

 

 皮膚の癒着や可動性の低下による関節可動域制限 

外傷による傷や手術による術創熱傷などにより皮膚の癒着や伸張性の低下が起こり,関節可動域が制限されることが多いです.

エンドフィールは軟部組織伸張性であり,皮膚が突っ張った感じがするといった特徴があります.

可動域運動時に傷の周辺に痛みを訴えることが多いです.

特に術創の部位の皮膚は癒着していることが多く,傷の周辺の皮膚を指で押し,癒着を剥がし,伸張性を改善することが重要となります.

こういった場合には,関節を介さず直接皮膚のストレッチを行う方法が効果的です.

 

 

 

 

 関節包の癒着や拘縮による関節可動域制限 

関節周囲の手術や長期間の固定による関節包の癒着や短縮により関節可動域が制限されることがあります.

エンドフィールは,かなり硬い軟部組織伸張性(最終域で急に硬くなる最終域感)であることが多いです.

スタティックストレッチングが適応となります.

スタティックストレッチングを行う場合には,肩関節であれば肩甲骨の固定を,股関節であれば骨盤の固定を十分行う必要があります.

関節包の癒着や拘縮によって関節可動域制限が起こっている場合には,関節包内運動の障害が起こっている場合が多いのも特徴です.

 

 

 

 

 筋・腱の短縮および筋膜の癒着による関節可動域制限 

ギプス固定,外傷手術による筋・腱の短縮や筋膜の癒着により関節可動域が制限されることがあります.

エンドフィールは軟部組織伸張性であり,最終域に近づくに従って徐々に抵抗は大きくなる.

可動城制限因子のなかでも割合の多い因子の1つです.

スタティックストレッチングやホールドリラックスが適応となります.

 

 

 

 筋スパズムによる関節可動域制限 

局所的で持続的な筋緊張の亢進状態(筋スパズム)によって,関節可動域が制限されることもあります.

エンドフィールは筋スパズム性であり,最終域で急に制限される場合と全体的に筋緊張が亢進している場合があります.

持続的な痛みや姿勢異常(アライメントの異常)によって起こることが多いです.

筋の収縮(緊張)により短縮しており,コラーゲン線維の架橋形成などの構造的な短縮はありません.

軽い負荷での筋収縮の繰り返しやPNF応用ストレッチングが効果的なことが多いです.

痛みやアライメント異常などのスパズムの根本原因にアプローチしないと直後の関節可動域が改善するだけで,数時間後には可動域が元に戻ってしまうというのも大きな特徴です.

 

 

 

 

 関節包内運動の障害による関節可動域制限 

関節の遊びJoint playや構成運動の障害によって関節可動域が制限されることもあります.

多くは関節包の短縮に起因することが多いです.

エンドフィールは無抵抗性や軟部組織伸張性,スパズム性,弾性,制止性とさまざまです.

関節包のストレッチ,モビライゼーションが適応となります.

 

 

 

 

 腫張・浮腫による関節可動域制限 

外傷後の腫脹やさまざまな原因による浮腫によって関節可動域が制限されることもあります.

腫張や浮腫が強いとエンドフィールは軟部組織按触性に近くなります.

腫張や浮腫を除去することが可動城の權得に最も重要となります.

寒冷療法,弾性包帯による圧迫,ハドマーなどを行い,腫張や浮腫を軽減してから関節可動域運動を行うことが重要となります

 

 

 

 骨の衝突による関節可動域制限 

関節構成体の変形などによる骨の衝突によって関節可動域は制限されることがあります.

この場合には,エンドフィールは骨性のエンドフィールとなります.

強直を呈している場合がこれに該当しますが,理学療法の対象ではなく,ストレッチングは禁忌となります.

 

 

 

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