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半月板損傷例に対する整形外科的治療
半月板損傷に対して半月板切除術・半月板縫合術が施行され,その後に理学療法開始となるクライアントは少なくないと思います.
半月板損傷例に対して理学療法を行う上では,半月板の構造や機能を理解するとともに,半月板損傷の整形外科的治療について理解しておく必要があります.
今回は半月板損傷例に対する整形外科的治療について考えてみたいと思います.
半月板損傷とは?
半月板損傷を引き起こすと,疼痛・関節可動域制限・腫張・関節水腫・ロッキング・キャッチング(引っかかり)などを起こし,歩行や階段昇降,スポーツ動作での障害が発生し日常生活に制限が出現します.
徒手的な検査や症状,画像所見などを用いて判断し,治療方法を選択する必要があります.
半月板損傷の診断に特徴的な点として,MRI画像による半月板損傷の所見と臨床症状が一致しない点が挙げられます.
そのためMRI画像のみならず多角的に評価を行うことが重要となります.
半月板損傷は組織形態や損傷部位,受傷機転などで複合的に半月板の状態を知ることが,クライアントの身体特徴の理解や受傷原因を知るために重要となります.
半月板の損傷形態によって,縦・水平・横・弁状・バケツ柄状断裂などに分類されます.
縦断裂は関節包側や中節に多い損傷のタイプです.
縦断裂の場合には縫合術の適応になることが多くなります.
長い縦断裂で断裂部が広がったものをバケツ柄状断裂と呼びます.
損傷部が大腿骨の顆間部を超える場合は,ロッキングの原因にもなります.
水平断裂は,半月板関節面から半月板関節包移行部へと広がっている水平面での損傷で,変性によって起こることが多くなります.
横断製は半月板円周部に横行する損傷内側半月板hoop構造が破綻する損傷です.
このタイプは半月板縫合術の適応になりづらく切除術による治療が行われることが多いです.
損傷部位では外側半月板損傷は中後節は屈曲位でのスポーツ外傷による断裂が多く,前十字靭帯新鮮損傷に伴って受傷することが多くなります.
円板状半月も本邦では内側に比較して外側に多く,小児の半月板損傷の多くに認めら,水平断裂が多いといった特徴があります.
水泳などのキック動作やボールを蹴る動作では,膝関節伸展時に回旋ストレスによる前節の外傷がみられることが多いです.
内側半月板損傷は後節が多く,同年齢層の受傷機転が明らかでない退行変性に’起因するものが多いです.
損傷のタイプとしては水平断裂が多いですが横断裂なども少なくありません.
前十字靭帯損傷や前十字靭帯機能不全に二次的な損傷が多いのも特徴です.
ングを生じることがあります。
治療方法の選択
半月板損傷の治療方法は,半月板縫合術・半月板切除術・保存療法に大きく分類できます.
縫合術 | 切除術 | 保存療法 | |
荷重時期 | 免荷が長い | 早期荷重 | 疼痛や炎症に合わせて |
半月板機能 | 可能な限り温存 | 減少 | 残存するが再受傷の可能性 |
適応年齢 | 若者から中高年 | 若者から中高年 | 全しょうれい |
治療期間 | 長い | 短い | 場合による |
注意点 | 再断裂による再手術の可能性 | スポーツ復帰率が低い | 疼痛の再燃の可能性 |
手術部位 | 変性の無い血行野の断裂部 | 無血行野以外も幅広い | ロッキングを有さない |
この選択は損傷形態や症状を考慮し,生活スタイル,治療方法の特徴などにより複合的に考え決定する必要があります.
ご存じの方も多いと思いますが,半月板切除術を行った後に変形性膝関節症に移行するケースが多く報告されております.
最近では保存療法を含め,手術方法も工夫されてきており,可能な限り半月板を温存する傾向にあります.
治療方針の判断は医師により非常に差異があり,スポーツなど活動性が高い若い症例でも保存療法で経過を観察する場合もあれば,半月板損傷が疑われれば関節鏡を勧める場合もあります.
各治療方法の特徴を理解し介入することや,医師やクライアントと積極的にコミュニケーションをとり,経過を把握し治療方針を随時変えていくことが重要です.
新鮮前十字靭帯損傷との合併の場合は,半月板の修復を行わないこともあり,前十字靭帯損傷に対する再建術によって,半月板に処置を行わなくても修復されることもあります.
半月板縫合術
半月板縫合術は,半月板切除術と比較すると変形性関節症への移行が少ないため半月板の機能を温存させるためには重要な手術です.
一般的な適応は半月板外縁の血行野で休部に変性が少ない縦・斜断裂が主な適応です.
術式はall-inside法,inside-out法、outside-in法に大別でき様々な方法があります.各方法とも断裂の種類や部位などにあわせて応用し選択されています.
近年では,半月板温存のメリットを最大限に活かすため,半月板縫合術の適応範囲が拡大しております.
理学療法を行う際には,縫合部の再断裂のリスクがあるため荷重時期と可動域獲得には注意が必要です.
免荷時期における廃用症候群を予防するための介入や,荷重のための身体反応を評価し,不良姿勢を修正しておく必要があります.
荷重時期も,手術方法の変化などによって早期から行う機会も増えているため,医師と連携しクライアントの早期復帰を安全かつ積極的に目指すべきです.
半月板切除術
半月板切除術は水平断裂や横断裂などが主に適応となります.
縫合術に比較し,適応が広く半月板手術の8割程度が切除術です.
損傷形態にもよりますが,損傷部だけの切除の場合にはキャッチングなどの症状が残存しやすいため,滑らかな関節運動が行えるように広範に切除することが多くなっております.
そのため切除することにより半月板の荷重分散機能を低ドさせることになります.
以前は縫合術に比較し,免荷時期や関節可動域獲得の制限期間が少ない,機能低下予防と術後早期スポーツ復帰などを考え,半月板切除術が好まれやすい傾向にありましたが,最近では半月板切除術のデメリットも考慮し,長期経過を含めた判断が重要と考えられます.
今回は半月板損傷例に対する整形外科的治療について考えてみました.
半月板損傷に対する手術療法は半月板切除術が主流でしたが,ここ数年縫合術の適応が拡大されてきており,半月板温存の重要性が見直されてきております.
後療法を担うわれわれ理学療法士の半月板切除術と半月板温存術の特徴を十分に理解した上で理学療法を行う必要がありますね.
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