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理学療法士・作業療法士も「バイト敬語」に注意しよう
理学療法士・作業療法士も学生時代にさまざまなバイトを経験している方は多いと思います.
近年耳にすることも多い「バイト敬語」という言葉ですが,これは学生アルバイトの人がよく使う誤った敬語のことを指します.
一般化しているものも少なくありませんが,敬語としては間違いであることに変わりありません.
バイト敬語が正しいと思って,理学療法士・作業療法士として就職後もバイト敬語を使っている場合もありますが,これは社会人としては恥ずかしい話です.
今回はこのバイト敬語について考えてみたいと思います.
理学療法士・作業療法士とバイト敬語
理学療法士・作業療法士として勤務するということは社会人として,そして医療人として働くということです.
バイト敬語を使ってしまうようでは,すぐれた技術や知識を身につけていても,クライアントに「この人で本当に大丈夫なのだろうか?」という不信感を抱かせてしまう可能性があります.
クライアントに「私は信頼できる理学療法士・作業療法士に自分のリハビリテーションを担当してもらっている」という安心感を持っていただくためにも,言葉遣いには注意したいところです.
「~の方(ほう)になります」
飲食店に行くと耳にすることが多いのが,「こちら本日の焼肉定食の方になります」,「お飲物の方はいかがいたしますか?」などといった「~の方(ほう)」といった表現です.
バイト敬語の代表ともいえる「~の方(ほう)」ですが,例えば「次回の予約の方はどうされますか?」,「昨日お渡しした書類の方はご確認いただけましたか?」など,「~の方」を入れることによって柔らかさが出るため,丁寧に話しているように感じられます.
言葉遣いに自信がない気持ちの表れかもしれませんが,「次回の予約はどうされますか?」,「昨日お渡しした書類はご確認いただけましたか?」と言うのが正しい表現になります.
「よろしかったでしょうか?」
「よろしかったでしょうか?」も立派なバイト敬語です.
例えば「担当は小林さんでよろしかったでしょうか?」というのは間違いです.
この場合は「よろしかった」と過去形にしていることに加えて,身内のスタッフに「さん」づけをしている点も間違いなので,「担当は小林でよろしいでしょうか?」が正しい表現です.
「~になります」や「どちらにいたしますか?」
「~になります」もよく耳にする言いまわしです.
例えば「受付はこちらになります」は,「これから受付に「なる」(変化する)」わけではないので,「受付はこちらです(でございます)」が正しい表現です.
同じように「申込書はこちらになります」は「申込書はこちらです(でございます)」が正しい表現です.
「~の形になります」も同様です.
「お待ちいただく形になります」は,お待ちいただく「形」があるわけではなく,変化するわけでもないのでNGです.
正しくは「お待ちいただきます」もしくは「お待ちいただくことになります」というのが正しい表現です.
敬語の中でも最も使い方が難しいのが謙譲語の使い方です.
謙譲語の誤りとしては,「どちらにいたしますか?」があります.
「次回の予約は火曜日と木曜日のどちらにいたしますか?」は、「いたしますか?」が「する→いたす」という謙譲語なので相手をたてる言葉ではありません.
謙譲語というのは自身を下げて相手を上げる表現です.
ですので,クライアントに対して「いたしますか?」と問うのは表現として間違いです.
「する」の尊敬語は「なさる」なので,この場合は「どちらになさいますか?」が正解です.
今回は理学療法士・作業療法士がついつい使ってしまいがちな「バイト敬語」について紹介させていただきました.
例に挙げた言葉の中には,「うっかり使っていた」というものもあったのではないでしょうか.
クライアントやクライアントのご家族の方が言葉の間違いについて,指摘することはまずありません.
心の中で静かに不信感を募らせるだけです.
また周りの上司や先輩が必ずしも注意してくれるとも限りません.
理学療法士・作業療法士の場合には,現場の上司の多くはプレイングマネージャーであることが多いため,後輩や部下の言葉遣いにまで気を配る余裕はないことが多いでしょう.
むしろ周囲に注意してくれる人がいるのであればとても幸運です.
言葉遣いというのは自分自身では気付きにくいので,皆様もこれを機会に自分自身の言葉遣いを改めて見直してみてはいいでしょうか?
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