歩行様式の違いによる股関節屈筋群の筋活動パターン変化 – 歩幅増大のための腸腰筋の役割 –

大腿骨近位部骨折
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歩行様式の違いによる股関節屈筋群の筋活動パターン変化 – 歩幅増大のための腸腰筋の役割 –

 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

平成30年12月8-9日に神奈川県(パシフィコ横浜)で第5回日本地域理学療法学会学術大会が開催されました.

今回はこの第5回日本地域理学療法学会学術大会の一般演題の中から歩行様式の違いによる股関節屈筋群の筋活動パターン変化に関する研究をご紹介いたします.

 

 

 

 

目次

 歩行における股関節屈曲筋群の役割 

股関節周囲筋の機能障害は深刻な問題を引き起こし,歩行や走行能力にも多大な影響を与えます.

特に股関節屈筋群の1つである腸腰筋は,歩行能力に関係しており,特に歩幅の増大に関係していることが報告されております.

中でも立脚終期における腸腰筋の役割は非常に重要です.

これまで推論レベルでは腸腰筋が立脚終期における股関節伸展運動を担い,歩幅の増大に寄与することが考えられてきましたが,腸腰筋の活動による歩幅増大機序は不明でありました.

歩行における歩幅は高齢者の転倒や認知症との関連性があることからも,腸腰筋の活動によって歩幅が増大する機序を解明することは非常に重要であると考えられます.

この研究では歩幅とピッチを変化させ3 課題の歩行を実施し,歩行中の腸腰筋を含めた股関節屈筋群の筋活動を計測して,各股関節屈筋群が歩行周期どのタイミングで活動を増大し歩幅増大,ピッチ増大に役立っているのかを検討しております.

 

 

 

 研究の方法 

対象は健常成人男性10名(年齢:24.6±2.8歳)とし,表面筋電図計を用いてトレッドミル上歩行での筋活動を測定しております.

測定筋は腸腰筋・縫工筋・大腿直筋・大腿筋膜張筋となっております.

トレッドミル上を裸足で,一定速度(5 km/h)での歩幅増大歩行,ノーマル歩行,ピッチ増大歩行の3つの課題をランダムに実施しております.

ノーマル歩行では歩行リズムを規定せずに,任意のリズムで歩行を行わせております.

また歩幅増大歩行・ピッチ増大歩行ではメトロノームのリズムを,歩幅増大歩行では 80 回/分,ピッチ増大歩行では190回/分に変化させることで歩幅とピッチを変化させております.

歩行動作は4台のカメラ(200 Hz)を用い三次元モーションキャプチャシステムで計測しております.

計測されたデータは,運動解析ソフトを用いて三次元座標値に変換し,各歩行課題における連続した3歩行周期を分析対象としております.

1歩行周期は立脚期2相,遊脚期2相の4 相に分けた.表面電極は皮膚処理後,電極間距離1cmとし,測定筋の筋線維方向に沿って貼付しております.

 

 

 

 研究の結果 

遊脚相後半において,ピッチ増大歩行,ノーマル歩行に比べ歩幅増大歩行で腸腰筋の活動増大が認められております.

また立脚相後半において歩幅増大歩行,ノーマル歩行に比べピッチ増大歩行で大腿直筋の活動増大が認められております.

 

 

 この研究から考えられること 

この研究から歩幅を大きくするのに遊脚相後半の腸腰筋の活動が役立っていることが明らかとなっております.

またピッチを高めるために,立脚相後半の大腿直筋の活動が役立っていることが明らかとなっております.

私自身はこの研究報告を読み進めながら,歩幅の増大に伴って立脚終期の腸腰筋の筋活動が増加するのかと思っておりましたが,腸腰筋の活動量が増えたのは遊脚相後半の活動でありました.

この研究から考えると歩幅を増大させるためには,立脚終期に着目するよりも遊脚相後半の腸腰筋の筋活動に着目する必要があると考えられます.

 

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