曲線歩行能力の加齢による変化について

介護予防
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目次

 直線歩行および曲線歩行能力の加齢による変化について 

一昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.

平成30年12月8-9日に神奈川県(パシフィコ横浜)で第5回日本地域理学療法学会学術大会が開催されました.

今回はこの第5回日本地域理学療法学会学術大会の一般演題の中から曲線歩行能力に関する研究を2題ほどご紹介いたします.

 

 

 

 直線歩行および曲線歩行能力の加齢による変化について 

日常生活を考えたときには,直線歩行能力の他に曲線歩行能力が必要となる場面が少なくありません.

しかしながら加齢による歩行能力の低下を調査した研究は多数あるものの,その多くは直線歩行能力を調査したもので,加齢による曲線歩行能力の変化を調査した研究は少ないのが現状です.

今回ご紹介いたします1つ目の研究では直線歩行能力および曲線歩行能力の年齢による影響を比較することを目的としております.

 

 

 

 研究の方法 

地域在住高齢者で要介護認定を受けておらず,屋内外の歩行が自立しており,認知機能の低下が無い 63 名(年齢74.25±6.15歳) を対象としております.

測定項目は年齢,通常速度での10m歩行テスト,8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テストとなっております.

10m歩行テストおよび8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テストはそれぞれ所要時間を2回測定し,その平均を測定値としております.

統計学的解析には年齢を独立変数,10m歩行テスト,8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テストを従属変数としてSPSS Statistics 25を使用して単回帰分析を実施しております.

 

 

 

 研究の結果 

10m歩行テスト,8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テストの平均値はそれぞれ3.58±0.75秒,5.26±1.25秒,4.67±1.06 秒となっております.

年齢と10m歩行テスト,8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テストのそれぞれの回帰式および標準化係数はy=0.063x-1.131,β =0.521(p<0.05),y=0.112x-3.030,β =0.548(p<0.05),y=0.109x-3.452,β=0.634(p<0.05)となっております.

 

 この研究からわかること 

単回帰分析の結果を見ると,直線歩行および曲線歩行のどちらの能力も加齢によって低下すると考えられます.

その能力低下は年齢と10m歩行テストおよび8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テストの標準化係数より,加齢による歩行能力の低下は直線歩行能力よりも曲線歩行能力の方がより大きいことが示唆されます.

つまり高齢者においては直線歩行能力よりも曲線歩行能力の低下の程度がより大きいということになります.

 

もう1つ研究をご紹介いたします.

 

 

高齢者を対象とした8の字歩行テスト・3mジグザグ歩行テストの測定誤差

転倒はさまざまな活動中に生じることが報告されておりますが,方向転換動作や曲線歩行のような応用歩行能力が必要となる動作中にも生じることが報告されております.

また直線歩行のみならず,曲線歩行能力が転倒歴と関連することも報告されており,転倒リスクの把握や転倒予防への介入効果の判定にあたっては,曲線歩行の能力を評価することが重要であると考えられます.

曲線歩行能力の評価指標には8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テスト等が報告されておりますが,これらのテストに関して最小可検変化量(minimal detectable change: 以下 MDC)は報告されておりません.

この研究では,8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テストの絶対信頼性を検討し,誤差範囲を算出することを目的としております.

 

 

 

 研究の方法 

この研究では屋内外の歩行が自立している 65 歳以上の要介護認定がされていない地域在住者 62 名を対象としております(男性 17 名,女性 45 名).

平均年齢は74.3±6.3歳(平均値±標準偏差),歩行速度は1.46±0.28m/s となっております.

8の字歩行テスト,3mジグザグ歩行テストをそれぞれ2回測定し,所要時間と歩数を記録しております.

系統誤差の有無の検討にはBland-Altman plotを基に比例誤差は測定値の平均値と差の無相関検定を,加算誤差の有無の検討には測定値の差の平均値の 95% 信頼区間(以下 95%CI)を用いております.

比例誤差および加算誤差を認めなかった際には,MDCの95%信頼区間であるMDC95を算出した.

 

 

 研究の結果 

地域在住高齢者における8の字歩行テストの測定誤差とは所要時間 0.7 秒以内,歩数 1.7 歩以内であることが明らかにされております.

また3mジグザグ歩行テストについては所要時間に加算誤差および比例誤差があり,歩数は2.7 歩以内が測定誤差とみなせることが明らかにされております.

 

 

 この研究からわかること 

この研究では測定誤差が明らかにされておりますので,介入による変化を検証する場合には,この測定誤差を超えて変化している場合に真の変化であると考えることができます.

8の字歩行テストや3mジグザグ歩行テストはまだまだ普及している曲線歩行のテストとは言えませんが,こういったデータが増えていけば曲線歩行のテストとして本邦でも定着してくる可能性がありますね.

 

 

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