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超音波やるならストレッチ中?ストレッチ前?
昨年まで行われた日本理学療法士学会が,今年度から完全に分科会学会単独での開催となりました.
平成30年12月15-16日に京都府で第23回日本基礎理学療法士学会が開催されました.
今回はこの第23回日本基礎理学療法士学会の一般演題の中から超音波刺激と静的ストレッチングの併用方法に関して検討した研究をご紹介いたします.
超音波刺激と静的ストレッチングの併用
超音波刺激と静的ストレッチングの併用方法には,静的ストレッチングの施行前に超音波療法を併用する方法と静的ストレッチングと同時に超音波刺激を併用する方法があります.
これまでにも超音波刺激と静的ストレッチングのそれぞれの単独施行が筋硬度の低下に作用することが報告されておりますが,超音波刺激を行うタイミングについて検討した報告は過去になく,この研究ではこの点に関して検討をしております.
研究の対象
研究の対象は,健常成人男性 14 名(年齢 26 ± 3.8 歳・身長 172.3 ± 5.0cm・体重 64.7 ± 4.6kg・BMI 21.8 ± 1.4kg/m2)となっております.
施行条件は,①静的ストレッチング施行中に超音波治療を実施したA条件(5 分間× 2 セット),②静的ストレッチング施行前に 超音波治療を実施したB条件(US 5 分間・SS 5 分間),③静的ストレッチングのみ実施したC条件(5 分間× 2 セット)とし,それぞれ計10分間施行しております.
超音波治療の設定ですが,周波数 1MHz,強度 2W/cm2,照射時間率 100%(連続照射)とし,ストローク法と回転法を併用しながら下腿三頭筋とアキレス腱の後面および側面を包括的に照射しております.
静的ストレッチングは,多用途筋機能評価運動装置を用い,痛みのない最大の足関節背屈角度にて実施しております.
評価項目は超音波診断装置せん断波エラストグラフィー機能を用いて測定した内側腓腹筋の弾性率(筋硬度)となっております.
測定は,施行直前・施行 5 分後・施行 10 分後に実施し,施行直前と5分後・施行直前と10分後の各々の変化率にて条件比較を実施しております.
研究の結果
反復測定による二元配置分散分析の結果,腓腹筋内側頭の筋硬度は3条件間において交互作用が認められ,多重比較法(Bonferroni 検定)の結果,施行5分後ではA 条件が B・C 条件に比べ有意に筋硬度が低下しております.
B条件とC 条件には有意差は認められておりません.
施行10分後では,A条件がC条件に比べ有意に筋硬度が低下しておりますが,B条件とは有意差は認められておりません.
B条件とC条件の間には有意差は認められておりません.
この研究から考えられること
超音波治療と静的ストレッチングの併用方法においては,静的ストレッチング単独施行や静的ストレッチングの施行前に超音波治療を併用する条件に比べ,超音波治療と静的ストレッチングを同時に施行する併用方法が最も早期に筋硬度が低下しております.
超音波と静的ストレッチングはそれぞれの単独施行においても筋硬度が低下することが報告されております.
このため,他の条件に比べて超音波治療と静的ストレッチングの同時施行では,静的ストレッチングの効果とともに超音波治療の付加的効果が同時に複合され相乗的に筋硬度を低下させたものと考えられます.
この研究結果から考えると,筋硬度を低下させるためには静的ストレッチングと超音波治療を同時に施行する方法が有効であると考えられます.
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