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TKAにおけるインプラントの種類 TKA後って膝立ちしていいの?
人工膝関節全置換術のインプラントも年々変化してきております.
理学療法を行う上では,CR型・PS型といったインプラントの特徴を把握しておくことが重要となります.
最近では従来のCR型・PS型といった種類の他にも,CS型のインプラントも登場してきております.
今回は人工膝関節全置換術例のインプラントの相違について考えてみたいと思います.
CR型とPS型の相違は?
人工膝関節全置換術で用いられるインプラントは大きく分けると,CR(cruciate retaining)型とPS(posterior stabilized)型に分類されます.
CR型はPCL(後十字靭帯)を温存する機種で,膝関節後方安定性を残すことで生理的な膝関節の動きを再現することが可能な機種です.
PS型はPCLの機能を人工関節に持たせた構造で,屈曲に伴い脛骨を前方にスライドさせることで脛骨の後方への落ち込みを抑制し,大腿骨のroll backを再現する(post-cam機構)機種です.
一見するとPS型よりもCR型の方が生理的な膝関節の動きを再現できるという点から考えても良さそうな気がしますが,CR型・PS型といったインプラントを選択する上で重要となるのが,PCL(後十字靭帯)が温存されているかどうかです.
仮にPCLが機能破綻しているような状況でCR型のインプラントを選択したとしても,PCLが機能しませんので,膝関節屈曲に伴う脛骨の後方への落ち込みを制御するような動きは起こりません.
したがって一般的にはPCLが機能破綻しているような高度の変形を有する変形性膝関節症例にはPS型が,変形が軽度でPCLの機能が保たれているような場合には,CR型が選択されます.
一昔前には理学療法士がCR型とPS型の人工膝関節全置換術例の術後機能を比較したような研究が散見されましたが,そもそもCR型とPS型では,元々の変形膝関節症の重症度が異なる可能性もあり,単純比較はできないということですね.
上にCR型とPS型の一般的な特徴を挙げました.
それぞれ利点・欠点がありますので,利点・欠点をふまえた上で理学療法を行うことが重要です.
post-cam機構とは?
人工膝関節全置換術に限ったことではありませんが,膝関節にはPCLが大腿骨を後方へ移動させる(脛骨を前方へ移動させる)roll back機能が備わっております.
図のように仮にこのroll back機能が備わっていなければ,大腿骨が脛骨と衝突してしまいなすので,膝関節を深屈曲することができません.
roll back機能によって脛骨が前方へ移動することで,膝関節を深く屈曲することが可能となるわけです.
PS型ではPCLを切除することになりますので,このPCLの機能を他の貴校で代償する必要があります.
このPCLの機能を代償するのがpost-cam機構です.
PS型のインプラントではPCLの機能が人工関節に備わっており,屈曲に伴い脛骨を前方にスライドさせることで脛骨の後方への
落ち込みを抑制します.
この機構のことをpost-cam機構と呼びます.
人工膝関節全置換術後って膝立ちしてもいいの?
本邦では和式スタイルの生活が一般的となっているため,膝を立てる動作が少なくありません.
床からの立ち上がり動作であるとか床掃除であるとか,さまざまな生活動作の中で膝を立てる動作が要求されます.
人工膝関節全置換術後に膝立ちを許容するかどうかについては様々な意見がありますが,実は上述したCR型・PS型といったインプラントの相違によっても膝立ちを許可してよいかどうかが変化します.
PS型のインプラントでは膝立ちは脛骨を大腿骨に対して後方へ移動させる力が働き,post-camの破損の原因になる可能性がありますので,基本的には膝立ちは禁忌となります.
一方でCR型のインプラントの場合には,膝立ちを行っても脛骨の後方移動がPCLによって制動されるため,膝を立てる動作も許容されるわけです.
最近では正座ができると謳っているインプラントも多くありますので,機種そのものの特性も考慮する必要があるでしょう.
今回は人工膝関節全置換術例のインプラントの相違について考えてみました.
人工膝関節全置換術例の理学療法を行う上でも確実におさえておきたいところです.
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