高齢者の住環境整備を行う上でのコツ

介護予防
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目次

 高齢者と住環境 

在院日数の短縮に伴い,理学療法士・作業療法士が高齢者の住環境整備に携わる機会は以前よりも増えてきております.

また診療報酬上も退院前訪問指導による加算が認められており,住環境整備に関する助言や指導を行うことも,われわれ理学療法士・作業療法士の仕事の1つであります.

今回は高齢者の住環境整備を行う際に考慮すべきことについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 高齢者の住環境に対する意識 

内閣府が60歳以上を対象として2010年に実施した「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」内の「虚弱化したときの居住形態」に関する項目によると,「現在の住宅に特に改造等はせずそのまま住み続けたい」が37.1%と最も割合が高く,次いで「現在の住宅を改造し住みやすくする」が26.7%となっており,半数以上が現在の住宅で暮らし続けることを望んでおります

実際に高齢者に対して住環境整備に関する指導を行っていると,高齢者が住宅改修を拒否されるケースは少なくないと思います.

このデータからも,高齢者が住宅改修にはあまり積極的ではないことが読みとれます.

 

では高齢者はなぜ住宅改修に対して積極的ではないのでしょうか?

 

改修を望まない理由には,金銭的な問題や家族に迷惑をかけたくないという意識など,さまざまな要因が関係しております.

また同調査内の「くつろぎのスタイル」に関する項目では,約半数の高齢者が「畳や床に座ったり寝転んだりする」と回答していおります.

しかし一方で,主観的な身体状況別にみると,手や足に不自由さを感じていながら床上でのくつろぎのスタイルを好んでいる高齢者が4割もあり,環境が身体状況に合わないまま暮らすことを望む高齢者も少なくありません.

このため高齢者の住宅改修を考える際には,改修のみが改善策とは考えず,家具の配置を変えることや介護保険における福祉用具の貸与で対応できることはないのかをふまえることが重要であり,本人の意向を尊重しつつ,本人の能力に合った,安全な環境を提案することが重要となります.

 

 

 

 

 高齢者の住環境と転倒発生 

内閣府が60歳以上を対象として2010年に実施した「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」の結果によると,転倒した場所は「庭」が36.4%,「居間・茶の間・リビング」が20.5%,「玄関・ホール・ポーチ」が17.4%, 「階段」が13.8%、「寝室」が10.3%の順となっております.

2001年,2005年にも同様の調査が実施されておりますが,この調査と比較すると,「居間・茶の間・リビング」,「階段」,「寝室」が増加傾向にあります.

他の調査でも前期高齢者は屋外での転倒が多い一方で,後期高齢者は屋内での転倒が多いことが明らかにされており,高齢化により屋内での転倒が増えていることが推測されます.

また在宅要介護高齢者を対象とした調査によると,転倒のうち重篤な外傷に至った転倒の発生は「居間」の割合が多く,次いで「道路」,「台所」,「寝室」となっております.

また重篤な外傷に至った転倒の発生状況の結果において,どんな時に発生したかについてですが,約40%が「歩行中」であり「歩き始め」を加えると半数以上でとなっております.

さらにどのように転倒したかについて見てみると,66%がバランスを崩して転倒していると結果であります.

これらの結果をまとめると,転倒は屋内でも多く発生しており,「居間」という1日のうち多くの時間を過ごす場所で転倒が発生していることがわかります.

われわれもこういった結果を踏まえた上で,家屋内での動線を考慮して環境整備を提案することが重要です.

 

 

 

 住宅改修の手順 

理学療法士は基本動作を主として「動作」を確認することができる職種です.

また作業療法士はセルフケアをはじめとする日常生活動作,家事動作を確認することができる職種です.

実際の動作を確認し,現在の環境でどのような動作が不自由となっているのか,行うことができていても安全性の低い動作はないかなどを確認します.

クライアント本人,家族のニーズを把握し,住宅改修の具体的な内容を検討します.

その際には家具の配置換えで対応できることや福祉用具の導入によって解決できる場所がないのかも含め,住宅改修の適応を考える必要があります.

工事終了後には,改修後の環境での動作を実際に確認し不都合がないかを確認します.

また介助が必要な高齢者の場合には,介助者の動作も確認し,介助方法についても助言を行う必要があります.

その後も動作能力に変化がないかを定期的に確認し,動作能力に変化が生じ,動作の安全性が低くなった場介には改善策を再検討します.

 

今回は高齢者の住環境整備を行う際に考慮すべきことについて考えてみました.

理学療法士・作業療法士は住環境整備に携わる機会は少なくありませんので,基本的なことですがおさえておきたいですね.

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