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クリニカルクラークシップの意味が無い?
理学療法士・作業療法士の実習についてはこれまでにも記事の中で紹介させていただいておりますが,実習形式に関しては従来の担当制の実習からクリニカルクラークシップ形式の実習へ移行してきております.
私の施設でも数年前からクリニカルクラークシップ形式で臨床実習を行っておりますが,症例レポートが無い分,実習生はもちろん指導者の負担もかなり減ったなと感じます.
一方で実習生は実習終了後に,養成校でさまざまな形式で学内発表を行う必要があり,症例レポートが無くなったにもかかわらず,実習中に発表用の資料作成に追われている実習生も少なくありません.
今回はクリニカルクラークシップ形式の実習における課題について考えてみたいと思います.
クリニカルクラークシップの特徴
新しいガイドラインでも実習形式をクリニカルクラークシップ形式とすることや,自宅での課題学習の時間を1日あたり1時間以内にすることが求められており,今後もますますわれわれ理学療法士・作業療法士の業界における伝統であった症例レポートの記載を課することは少なくなるでしょう.
普通に考えれば,レポートを課せば自宅学習が1時間以上となることは必須ですので,私自身はデイリーノートと簡単な知識整理を行うのが,1時間以内で行える課題量の限界ではないかと考えております.
もちろんクリニカルクラークシップ形式の実習には,より多くのクライアントを経験できる,見学→模倣→実施といった流れで段階的に学習が行えるなどの利点があるわけですが,今回は主に課題に焦点を当てて考えてみたいと思います.
養成校による実習の評価
クリニカルクラークシップ形式の実習では,従来のような症例レポートを書くことがありませんので,養成校は臨床実習生の評価をどう行うのかといった問題が生じます.
そこで多くの養成校で行われるのが,実習終了後の発表会や口頭試問です.
発表会に関しては従来式の実習では症例に関して発表を行うという鉄板の流れがあったわけですが,クリニカルクラークシップ形式の実習ではどういった形式で発表を行うについては,複数症例の共通点について考察するといった形式や,複数症例を通じて学んだことを発表する形式など,養成校によっても様々です.
実習終了後にどういった形式で評価を行うかについては,養成校で様々ですが,いずれにしても実習終了後の発表に向けて実習生は準備をする必要があるといった状況には変わりはありません.
養成校側からすれば,実習施設の指導者によっても評価にバラツキがあることを鑑みると,同一の物差しで学生の評価を行うというのは当然かもしれません.
したがって実習終了後に発表会や口頭試問を行うことに関しては異論はありません.
実習終了から実習報告(発表会・口頭試問)までの期間が重要
私が一番問題だと考えているのは実習終了から発表会・口頭試問を行うまでの期間が短すぎるという点です.
この期間が短すぎると,実習生はせっかくのクリニカルクラークシップ形式の実習にもかかわらず,実習中から発表や口頭試問に向けてレジュメを作成したり,プレゼンテーションを作成したりせざるを得ません.
実習生が添削を依頼してくれば,われわれとしてはこの実習後の発表課題に関して,私も添削をして指導をしてということになるわけですが,これでは正直なところ,従来式のレポート実習とあまり変わらない気がします.
確かにこれらの課題は症例レポートに比較すれば,作成に要する時間も短くて済むわけですが,実習生によってはクリニカルクラークシップ形式の実習にもかかわらず,夜な夜なこういった実習終了後の発表用の課題に取り組んでいるわけです.
これではクリニカルクラークシップ形式の実習の意味がありませんよね.
解決策は?
一番の解決策は,実習終了後の養成校教員の指導と,実習終了から報告会(発表や口頭試問)までの期間を長くすることだと思います.
報告会までの期間が長く設けられていれば,実習生も実習終了後に課題をまとめようとするので,実習期間中に寝不足なんてことは少なくなるわけです.
私自身はこの点に関して何度か養成校の教員にお話したことがあるのですが,養成校側は「学生には実習終了後に課題に取り組むように指導してある」といった返答がほとんどですが,こんな短い期間で無理でしょうと思えるような養成校も存在します.
実習の合否を決める発表会・口頭試問ですから,学生も必死になって実習中に睡眠時間を削って課題に取り組むわけです.
今回はクリニカルクラークシップ形式の実習終了後に行われる報告会(発表会・口頭試問)について考えてみました.
クリニカルクラークシップ形式の実習における本質を見失わないためにも実習終了後の課題作成に関して,今後議論がなされるべきでしょうね.
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