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機能障害・活動制限はわかるけど機能的制限って何?
理学療法・作業療法ではICFモデルを使用してクライアントの障害像を統合するのが一般的になっております.
ICFモデルにおける障害像の統合については以前の記事でもご紹介させていただきました.
ICFを用いて障害像を統合する場合には,健康状態,心身機能・構造,活動,参加,個人因子,環境因子といった要因に分類して,障害像を統合するわけですが,理学療法士が臨床を行う上では,これらの6つの要因に加えて機能的制限からクライアントの問題点を明確にすることが重要となります.
今回は理学療法士が臨床の問題を機能的制限からとらえる意義を考えてみたいと思います.
機能的制限とは?
機能的制限(functional limitations)とは, NCMRR(National Center Of Medical Rehabilitation Research)モデルあるいはNagiによって提唱された障害モデル(Disablement model)に用いられている用語で, 「有機体全体あるいは個人レベルにおけるパフォーマンスの制限」と定義されております.
これは「感覚運動あるいは精神機能による活動を正常な範囲内で遂行する能力の部分的あるいは全体的な欠損であり,機能障害によって起こる」とされております.
何を表現しているのか非常に分かりにくいと思いますが,起き上がり・立ち上がり・歩行といったいわゆる基本動作の制限を意味します.
「活動」と何が異なるのかと感じる方もおられるかもしれませんが,活動の場合はあくまで日常生活における動作の遂行状況を表すものですので,「しているADL」というのがまさにこの活動に含まれるわけです.
「機能的制限」と「活動制限」の大きな相違ですが,「活動」というのは人的環境や物的環境に大きな影響を受けるといった特徴があります.
これに対して「機能的制限」というのは環境や状況に依存しない「できる能力」を包含するものです.
つまりわれわれが扱う基本動作能力評価というのは,この「機能的制限」に該当するわけです.
例えば,大腿骨近位部骨折を例にとると,疼痛や筋力低下(機能障害)が歩行困難(機能的制限)を引き起こし,病棟での移動に介助を要する(活動)といった流れです.
なぜ理学療法士にとって機能的制限の評価が重要か?
われわれ理学療法士の大きな役割は基本動作能力の向上を図ることですので,この機能的制限のレベルで評価を行うことが重要となります.
例えば高度な機能障害を有する症例であっても代償動作によって基本動作能力の向上が得られる症例というのは少なくありませんが,この場合には機能障害のみの評価では理学療法介入の効果を明らかにできないわけです.
さらに基本動作能力は向上しているにもかかわらず,認知機能低下や日常生活場面での環境面の問題によって,能力向上が活動に汎化されない症例というのも少なくありません.
こういったケースでは,活動レベルの評価を行ったとしても,やはり理学療法介入の効果を明らかにすることができないということになります.
したがって理学療法士が機能的制限レベルでクライアントの評価を行うことは非常に重要であると考えられます.
機能的制限の評価尺度の一般的な特性
機能的制限の代表的な評価方法としては,パフオーマンステストが挙げられます.
注意が必要なのは,パフォーマンステストはあくまで運動機能の一側面をとらえたものに過ぎませんので,その結果から個人の運動能力や日常生活活動レベルの全体を推定することはできないといった点です.
したがってある動作を構成する要素の数だけテストが必要となるわけですが,現実には臨床で利用されるパフォーマンステストの数は必ずしも多くありません.
この点が機能的制限に対する評価の大きな限界となります.
代表的な機能的制限の評価尺度
機能的制限の代表的な評価尺度としては,Functional Reach(FR),Berg Balance Scale(BBS),Timed Up and Go test(TUG)等が挙げられます.
これらの評価尺度はバランス機能の評価尺度としても有名ですが,実はバランスに限らず筋力や可動域,その他のさまざまな心身機能を包含するパフォーマンスを測定していると考えることができるでしょう.
その他にも最大歩行速度,6分間歩行距離,PCIの歩行に関連するパフォーマンステストも機能的制限の評価であると考えられます.
理学療法士は基本動作の専門家であるにもかかわらず,実は基本動作能力を評価する尺度は少ないのが現状です.
脳卒中症例に用いられることの多いMotor Assessment Scale,Trunk Control testや,わが国ではFunctional Movement scale等が基本動作能力評価の尺度としてよく用いられます.
今回は障害構造における機能的制限といった概念についてご紹介させていただきました.
機能的制限の評価尺度は理学療法介入による効果を鋭敏にとらえることができますので,心身機能・構造レベルの評価や活動レベルの評価と合わせて用いることが理想です.
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