ICFモデルによる障害像の整理~”#”をシャープって読んだら恥しいですよ~

投稿者: | 2018年8月22日

臨床実習ではICFモデルを使って対象者の障害像を整理することが多いと思います.

レポートやプレゼンテーションの際にもICFモデルを使って情報をまとめる機会は少なくありません.

今回はICFモデルを使って障害像を統合する時のポイントについて考えてみたいと思います.

 

 

 

 

 ICFICIDHの違い 

ICFを使って対象者の障害像を整理する際には,ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)の特徴を把握しておく必要があります.

ここではICFが使用される以前に,障害像の統合モデルと使用されていたICIDH(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps)と比較をしながら,ICFの特徴について整理したいと思います.

 

 

 ①各構成要素が双方向性の矢印でつながる 

図のようにICIDHでは各構成要素が一方向性につながっていると考えます.

つまり機能障害(筋力低下)があって,そのために能力障害(歩行障害)が起こって,参加制約(職場復帰困難)が生じるといった流れで一方向性に考えます.

一方でICFでは各構成要素のつながりを双方向性で考えます.

つまり身体機能・構造(筋力低下)があって,そのために活動(歩行困難)が起こって,参加制約(職場復帰困難)が生じるといった一方向の流れではなく,職場復帰が難しいために身体活動量が減少して,筋力低下が生じるといった逆方向の矢印も含めて考える必要があります.

ICIDHが主流の時代には理学療法士も対象者の機能障害ばかりに目を向けていたわけですが,ICFが登場して以降は活動や参加に対してアプローチすることで機能面にも改善が得られるといった考え方をする理学療法士が増えたのも事実ではないでしょうか.

 

 

 

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 ②阻害因子だけでなく促進因子を考える 

ICIDHでは関節可動域制限,歩行障害,職場復帰困難といったnegativeな因子ばかりに目が向けられておりましたが,ICFでは上肢の筋力は保たれている,認知機能は良好,杖を使用して屋内移動を行っている等,positiveな要因にも目を向ける必要があります.

場合によっては構成要素が阻害因子にも促進因子にもなり得るといった場合もあります.

例えば活動レベルの,「歩行器を使用してトイレへの移動を行っている」といった要素は,歩行器を使ってでも病棟内移動を行っていると考えれば促進因子としてもとらえられなくはありませんが,自宅では歩行器が使用できないので杖で移動しなければと考えれば阻害因子としてもとらえられなくないと思います.

このようにある要因があった場合に,その要因は阻害因子にも促進因子にもなり得るということを意識しておくべきだと思います.

 

 

 

 ③人間全体を見る 

ICIDHでは機能障害,能力障害,参加制約といった3つの構成要素のみでしたが,ICFでは個人因子・環境因子に加えて,健康状態といったカテゴリーも含まれております.

ICIDHに比較してもICFモデルを使用して情報を統合することができれば,人間全体を見ることができると言えるでしょう.

 

さてここからはICFの構成要素である,健康状態,心身機能・構造,活動,参加,個人因子,環境因子といったカテゴリー別に情報をまとめる際のポイントを考えてみたいと思います.

 

 

 

 健康状態 

主な病名はもちろんですが合併症や,一時的な症状も含めて考える必要があります.

特に高齢者はさまざまな病気を合併されておりますので,主診療科はもちろん他の疾病も含めて考える必要があります.

 

 

 

 

 心身機能・構造 

心身機能・構造レベルの情報の統合は,理学療法士の得意分野かもしれませんが,心身機能・構造レベルの情報を統合する際には,より具体的に情報を抽出する必要があります.

整形外科疾患でよくあるのが,「疼痛・関節可動域制限・筋力低下」とだけ書かれているICFモデルです.これでは不十分です.これですと整形外科的な疾病を有する方であればだれでも当てはまるICFモデルになってしまいます.

「右大腿外側部の荷重時痛・右股関節内転可動域制限・股関節内転位での右股関節外転筋群の筋出力低下」のようにより具体的にその対象者の特徴が出るように問題点を抽出する必要があります.

 

 

 

 

 活動 

活動レベルの情報を統合する際には基本的に病棟での「しているADL」を考えて情報を統合することが重要です.

よくある誤りが,「平行棒内歩行見守り」といった表記です.

基本的に平行棒というのはリハビリ室にある物品だと思いますので,平行棒内歩行見守りというのはあくまでリハビリ中のリハビリ室で平行棒を使って歩行が見守りで可能だということになります.

これは活動ではありません.いわゆるできるADLということになります(ADLといえるかどうかも怪しいですが).

ではこの平行棒内歩行見守りといった情報はどこに含めるべきなのでしょうか?答えは「心身機能・構造」の部分です.

実は心身機能・構造の中には動作能力を含めることになっているのです.

動作と活動の違いは私がここで述べる必要はありませんが,イメージとしては動作というのはできるADL活動というのはしているADLと考えると良いと思います.

したがって活動レベルの情報を統合する際には生活の中での動作の情報をイメージする必要があります.

 

 

 

 

 参加 

実はICFモデルを使って情報を統合する上で最も重要なのはこの参加レベルです.

参加レベルの情報を統合するには,対象者のことを本当に知らなければ実は参加レベルの情報が統合できません.

趣味やお仕事も含めてこの参加レベルの情報を統合する必要があるのですが,入院中に参加レベルの情報を統合するのは非常に苦労する場合が少なくありません.

在宅で生活されている対象者の情報を統合する際には,逆にこの参加レベルの情報の統合が行いやすいことが多いと思います.

 

ICFコアセット 臨床実践のためのマニュアル / 原タイトル:ICF Core Sets[本/雑誌] / JeromeE.Bickenbach/原著編集 AlarcosCieza/原著編集 AlexandraRauch/原著編集 GeroldStucki/原著編集 日本リハビリテーション医学会/監訳

 環境因子 

人的な環境(同居者・介護者等),物的な環境(自宅環境,自動車の種類等),社会的環境(経済的状況,介護保険サービス等)を含めて考えます.

このあたりも対象者とのかかわりが薄いと上方が不十分になりやすいので,他職種からの情報も含めて情報を統合する必要があります.

 

 

 

 

 個人因子 

性格や年齢・性別・民族・生活歴・価値観・ライフスタイルなどが含まれます.

個人因子に関しても対象者とのかかわりが浅いと十分に情報を統合できません.

 

 

 

 

 ICFで情報を統合する際の注意点 

ICFにしてもICIDHにしても情報をまとめる際には,“#”を何と呼んでいますか?

このマークを#(シャープ)と読んでいる臨床実習生が非常に多いのですが,“#”は#(ナンバー)と読むといった点に注意が必要です.

ちなみに音楽記号であるシャープは“♯”ですから実はナンバーとは傾き具合が違うんですよね.

最近は前述した阻害因子を”♯(シャープ)”と表記して,促進因子を”♭(フラット)”と表記する学生まで登場してしまいまして…

音楽記号とは全く関係ないのにこれは恥しいですよね.

あくまで#(ナンバー)の記号は第1・第2…といったような意味を持つものですのでご注意を!

 

 

 

 

今回はICFモデルと使った障害像の統合に関してご紹介いたしました.上述したポイントを参考にして対象者の障害像を適切に捉えられるようにしましょう.

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