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理学療法士が知っておくべき踵骨骨折に対する整形外科的治療
踵骨骨折というのは全骨折の約1~2%を占める骨折ですので,二次救急・三次救急を担う医療機関に勤務していれば,年に数例は担当することのある疾患群であると思われます.
踵骨骨折の整形外科治療は大きく保存療法と手術療法に分類されますが,骨折の分類によっても大きく経過が異なりますので,理学療法評価や治療を行う上でもまずは骨折の分類を整理しておくことが重要となります.
骨折型の分類については前回もご紹介いたしました.
今回は踵骨骨折に対する整形外科的治療ついてご紹介させていただきます.
踵骨骨折の治療上の問題点
踵骨は4つの関節面を有し,その適合性が歯の噛み合わせのようにデリケートであるため, 正確な適合性の再建が困難であるとされております.
そのため踵骨の骨折では,後足部の可動域の低下や関節症を招きやすいといった特徴があります.
さらに踵骨の変形が隣接した腱や神経を圧迫すると,狭窄性腱鞘炎や絞拒性神経障害の原因ともなります.
加えて海綿骨を主体とするため,治療中の免荷などにより骨萎縮をきたしやすく,変形癒合が起こりやすいといった特徴もあります.
変形治癒は足部アーチを低下させるなど,足のバイオメカニズムに影響を及ぼします.
踵骨骨折に対する整形外科的治療
関節外骨折に対しては,基本的に保存治療が行われます.しかしながら関節外骨折であってもアキレス腱付着部の裂離骨折,前方突起骨折,距骨の落ち込みによる転位の大きい載距突起骨折に対しては,再転位の予防を目的に手術療法がおこなわれることが多いです.
関節内骨折に対しては基本的には手術適応となりますが,関節内骨折でも転位が小さい場合や,転位が無い場合には保存治療が選択されます.
皮唐などの軟部組織の問題から,高齢者では骨折型にかかわらず保存療法が選択されることが多いのも事実です.
関節内骨折に対する手術療法
転位が少ない場合は,保存療法が選択されることが多いです.
しかし転位の予防のためにKirschner鋼線等を使用し,踵骨の固定と同時に距骨や立方骨まで鋼線を刺入し,整復位の保持が行われることもあります.
転位が大きい場合には,まず大本法などでの徒手整復が試みられます.
手術療法は,活動性の高い青壮年に行われることが多く,解剖学的な整復が望ましいとされておりますが,解剖学的な整復と臨床成績は必ずしも相関があるわけではなく,治療法の選択には議論の余地が残されております.
一般的に,舌状型では経皮的な鋼線固定としてWesthuse法に代表されるようなピンニングによる整復と固定が行われることが多いです.
一方で陥没型や粉砕骨折では経皮的な鋼線固定の他に,観血的にスクリューやプレートを用いた固定が行われることが多いです.
近年は,以前に比べてプレート固定が行われることが多くなってきており,その手術時期は腫脹の減退する受傷後l~3週目に行われることが多いです.
ピンニングによる骨接合術は舌状型骨折に用いられることが多いのですが,転位した近位骨片にpinを刺入し,透視下でpinを押し下げることで整復を行います.さらにpinを距骨または立方骨まで刺入し整復位の保持を行います.多くの場合にはpinにより整復を行った後に,pinを抜去しKirschner鋼線や海綿骨スクリューに置き換えます.
ピンニングを行った場合には,刺入部に摩擦性の疼痛を訴えるクライアントが少なくないため,ある程度,骨癒合が進めばKirschner鋼線や海綿骨スクリューを抜釘することがほとんどです.
陥没型や粉砕骨折に対するプレート固定では,比較的早期より荷重が可能になってきておりますが,挿入するプレートによる体積の増加と腫脹によって,皮層の滑走性が低下しやすい特徴があります.
今回は踵骨骨折に対する整形外科的治療ついてご紹介させていただきました.
骨折型もそうですが,ピンニングとプレート固定といった術式によっても,術後理学療法評価や治療を行う上で考慮するべき注意点は異なりますので,ある程度術式の特徴を把握しておくことが重要でしょう.
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