目次
Berg Balance Scale・Functional Balance Scaleとは?
本邦では比較的使用頻度の高いBerg Balance Scale・Functional Balance Scaleですがご存知の通り包括的にバランス機能を評価する指標として疾患を問わずさまざまな場面で使用されております.
本邦ではBerg Balance Scale(BBS)と呼称されていることがほとんどだと思います.
人名なのでどちらの読み方が正しいのかは定かではありませんが,ベルグバランススケールと呼ばれたり,バーグバランススケールと呼ばれたりすることが多いと思います.
BBS(Berg Balance Scale)の特徴
BBS(Berg Balance Scale)の特徴として,高価な機器を用いずに利用できるといった点が挙げられます.
適用としては高齢者に対する転倒のスクリーニングから脳血管障害患者に対する治療指針の決定,経時的変化の評価とさまざまな用途での使用が可能です.
BBS(Berg Balance Scale)は,評価内容は日常必要とされる動作が中心となっておりますので,課題としては簡単なものが多く,比較的運動障害が軽度な場合には「天井効果」が認められるために,適切な評価指標とならない場合があります.
例えば比較的元気な地域在住高齢者を対象としてBBS(Berg Balance Scale)を使ってバランス機能検査を行った場合には,天井効果が生じ,多くの対象が満点近い得点となってしまいます.
また対象者が課題を遂行した時の安全性や安定性を観察して評価を行いますので,評価者の習慣が少なからず含まれる評価であるといった認識が必要です.
座位,立位での静的な姿勢保持機能,および動作時のバランス機能の評価が可能ですが,検査項目に外乱刺激への応答力や歩行などの移動動作は含まれておりません.
BBS(Berg Balance Scale)の測定方法
BBS(Berg Balance Scale)では1)椅座位から立ち上がり,2)立位保持,3)座位保持(両足を床に着け,もたれずに座る),4)着座,5)移乗,6)閉眼立位保持,7)閉脚立位保持,8)上肢前方到達,9)床から物を拾う,10)左右の肩越しに後ろを振り向く,11)360.回転,12)段差踏み換え,13)片足を前に出して立位保持,14)片脚立ち保持の14項目に関して,それぞれ4点満点で評価を行います.
14項目×4点で56点満点の検査となります.
以下に14項目の採点方法をお示しいたします.
1)椅座位から立ち上がり
指示:手を使わずに立って下さい.
4:立ち上がり可能,手を使用せず安定して可能
3:手を使用して一人で立ち上がり可能
2:数回の施行後,手を使用して立ち上がりが可能
1 :立ち上がり, または安定のために最小の介助が必要
0:立ち上がりに中等度ないし高度の介助が必要
2)立位保持
指示:つかまらずに2分間立って下さい.
4:安全に2分間立位保持が可能
3:監視下で2分間立位保持が可能
2:30秒間立位保持が可能
l :数回の試行にて30秒間立位保持が可能
0:介助なしには30秒間の立位保持不能
*2分間安全に立位保持ができれば座位保持の項目は4点とし.着座の項目に進みます.
3)座位保持(両足を床に着け,もたれずに座る)
指示:腕を組んで2分間座って下さい.
4:安全に2分間の座位保持が可能
3:監視下で2分間の座位保持が可能
2:30秒間の座位保持が可能
1 : 10秒間の座位保持が可能
0:介助なしには10秒間の座位保持不能
4)着座
指示:座って下さい.
4:ほとんど手を用いずに安全に座れる
3:手を用いてしゃがみ込みを制御する
2:下腿後面を椅子に押しつけてしゃがみ込みを制御する
1 :一人で座れるがしゃがみ込みを制御できない
0:座るのに介助が必要
5)移乗
指示:車椅子からベッドへ移り,また車椅子へ戻って下さい.まず肘掛けを使用して移り.次に肘掛けを使用しないで移って下さい.
4:ほとんど手を用いずに安全に移乗が可能
3:手を用いれば安全に移乗が可能
2:言語指示,あるいは監視下にて移乗が可能
1 :移乗に介助者1名が必要
0:安全確保のために2名の介助者が必要
6)閉眼立位保持
指示:目を閉じて10秒間立っていて下さい.
4:安全に10秒間, 閉眼立位保持可能
3:監視下にて10秒間, 閉眼立位保持可能
2:3秒間の閉眼立位保持可能
1 :3秒間の閉眼立位保持できないが安定して立っていられる
0:転倒を防ぐための介助が必要
7)閉脚立位保持
指示:足を閉じてつかまらずに立っていて下さい.
4:自分で閉脚立位ができ.1分間安全に立位保持が可能
3:自分で閉脚立位ができ,監視下にて1分間立位保持可能
2:自分で閉脚立位ができるが,30秒間の立位保持不能
1 :閉脚立位をとるのに介助が必要だが,閉脚で15秒間保持可能
0:閉脚立位をとるのに介助が必要で, 15秒間保持不能
*以下の項目は支持せずに立った状態で実施します.
8)上肢前方到達
指示:上肢を90.屈曲し,指を伸ばして前方へできる限り手を伸ばして下さい(検者は被検者が手を90.屈曲させた時に指の先端に定規を当てます.手を伸ばしている間は定規に触れないようにします.被検者がもっとも前方に傾いた位置で指先が届いた距離を記録します).
4:25cm以上前方到達可能
3: 12.5cm以上前方到達可能
2:5cm以上前方到達可能
1 :手を伸ばせるが,監視が必要
0:転倒を防ぐための介助が必要
9) 床から物を拾う
指示:足の前にある靴を拾って下さい.
4:安全かつ簡単に靴を拾うことが可能
3:監視下にて靴を拾うことが可能
2:拾えないが靴まで2.5~5cmくらいの所まで手を伸ばすことができ, 自分で安定を保持できる
1 :拾うことができず,監視が必要
0:転倒を防ぐための介助が必要
10) 左右の肩越しに後ろを振り向く
指示:左肩越しに後ろを振り向き,次に右を振り向いて下さい.
4:両側から後ろを振り向くことができ.体重移動が良好である
3:片側のみ振り向くことができ,他方は体重移動が少ない
2:側方までしか振り向けないが安定している
l :振り向く時に監視が必要
0:転倒を防ぐための介助が必要
11) 360°回転
指示:完全にl周回転し,止まって,反対側に回転して下さい.
4:それぞれの方向に4秒以内で安全に360。回転が可能
3:一側のみ4秒以内で安全に360.回転が可能
2:360.回転が可能だが,両側とも4秒以上かかる
1:近位監視, または言語指示が必要
0:回転中介助が必要
12) 段差踏み換え
指示:台上に交互に足を乗せ,各足を4回ずつ台に乗せて下さい.
4:支持なしで安全かつ20秒以内に8回踏み換えが可能
3:支持なしで8回踏み換えが可能だが,20秒以上かかる
2:監視下で補助具を使用せず4回の踏み換えが可能
1:最小限の介助で2回以上の踏み換えが可能
0:転倒を防ぐための介助が必要, または施行困難
13) 片足を前に出して立位保持
指示:片足を他方の足のすぐ前にまっすぐ出して下さい.困難であれば前の足を後ろの足から十分離して下さい.
4:自分で継ぎ足位をとり, 30秒間保持可能
3:自分で足を他方の足の前に置くことができ,30秒間保持可能
2:自分で足をわずかにずらし, 30秒間保持可能
1:足を出すのに介助を要するが, 15秒間保持可能
0:足を出す時, または立位時にバランスを崩す
14) 片脚立ち保持
指示:つかまらずにできる限り長く片足で立って下さい.
4:自分で片足を挙げ. 10秒間以上保持可能
3:自分で片足を挙げ. 5~10秒間保持可能
2:自分で片足を挙げ, 3秒間以上保持可能
1 :片足を挙げ3秒間保持不能であるが, 自分で立位を保てる
0:検査施行困難, または転倒を防ぐための介助が必要
BBS(Berg Balance Scale)の年齢別基準値・カットオフ値
BBS(Berg Balance Scale)は順序尺度または間隔尺度として扱うのが一般的です.
合計点は56点であり,高得点ほど良好な機能を示します.
高齢者の転倒をスクリーニングするための基準値・カットオフ値は45点とされており,BBSが45点以下の者は複数回の転倒発生率が平均2.7倍高くなることが明らかにされております.
また杖の使用を判定するための基準値も45点とされております.
さらに急性期脳血管障害例を対象とした調査では発症後3ヶ月の段階で自宅復帰可能となった症例のBBSは45.0~45.3点であったと報告されております.
年齢別の基準値は現在のところ示されておりません.
BBS(Berg Balance Scale)の妥当性・信頼性
BBSは一部の項目で評価に検者の主観が含まれますが,高い検者内信頼性・検者間信頼性が報告されております.
またBarthel Index・Fugl Meyer Scale・TUGとの高い相関関係が明らかにされており,バランス評価指標としての妥当性も確認されております.
BBS(Berg Balance Scale)の測定方法の実際 椅子の高さは?
BBSを使用してバランス機能を評価する上では,ストップウォッチ,メジャー,ベッド,椅子(椅子の高さは40~45cm),約20cm高の台,測定用紙筆記用具が必要となります.
BBSは検査の特性上,ベッドサイド,在宅などの比較的狭い場所でも検査が可能であるといった点も臨床的に有用性の高い点です.
検査は約15分で終了しますが,比較的長時間を要するため,対象者の疲労を観察して途中休憩を挟む配慮も必要となります.
基本的には項目1から順に検査を進めますが,項目2の立位保持については,明らかに安全に立位保持可能である者については,他の立位検査を観察することにより判断が可能です.
また項目lと4の起立と着座は,検査開始時や休憩する時の状態を観察することによって判断できます.検者は課題の内容と順番を暗記しておき,連続して課題を提示しながら検査を進めます.
検査結果については対象者が休憩時に記録すれば,検査時間を短縮させ対象者の負担を軽減することができます.
言語指示が通じにくい場合には,まず検者が実際の動作方法を行って見せると円滑に検査を進めることができます.
BBSの結果の解釈の方法
基本的には全項目の合計点を算出して判断基準としますが,治療方針の決定にあたっては,各項目の得点を観察し,どのような動作の安定性が低下しているかを明らかにする必要があります.
BBSのカットオフ値については前述したとおりですが,理学療法の方針を決定する一助として用いる場合には,下位項目を分析することが重要です.
バランスの低下した動作の特徴や共通項を探索することで,必要とされる理学療法を明らかにすることが可能となります.
介入効果や経時的変化を観察する場合には,BBSの得点が1点減少するごとに,転倒の危険が3~8%上昇することになりますので,得点の改善が図れれぱ転倒の危険が減少したと解釈できます.
参考文献
1)Berg KO, et al :Measuring balance in the elderly: preliminary development of an instrument. Phvsio ther Can41 : 304-311. 1989.
コメント