少しずつ寒くなってきておりますが,短期実習(評価実習)を控えた学生の方も少なくないのではないでしょうか?
評価実習では関節可動域を測定する機会は非常に多いと思います.
今回は実習生向けに関節可動域測定方法について,主にactiveとpassiveによる違いを考えてみたいと思います.
実践理学療法スーパーバイズマニュアル 写真で学ぶ臨床実習のポイント [ 新田收 ]
目次
passiveでの測定における信頼性の問題
関節可動域測定というのは,activeでの測定には筋力の要素が多分に含まれますので,基本的にはpassiveで測定を行うのが通常です.
しかしながらpassiveでの測定においては信頼性(再現性)が低いといった大きな問題があります.
Passiveで測定を行う場合には,われわれ理学療法士・作業療法士が関節を他動的に動かしていくわけですが,当然ながらわれわれの力の入れ具合によって可動域は変化してしまいます.
Aという理学療法士が測定を行った場合と,Bという理学療法士が測定を行った場合には,可動域が異なるということもしばしばです.
関節可動域制限の原因が疼痛である場合には,疼痛が出現した時点で測定するのか,疼痛が出現してもend feelが感じられるまで可動させるのか,このあたりを統一しておかなければ測定における信頼性(再現性)というのはかなり低くなってしまいます.
一般的には疼痛が出現したところを可動域として測定するといった場合が多いと思います.Activeによる測定であれば信頼性(再現性)はある程度,保たれるわけですが,activeの測定には筋力の要素が多分に含まれますので,これでは関節の可動範囲を正しく測定することができません.
そんな場合に有効なのがSelf-passiveによる測定です.例えば膝関節の屈曲可動域であれば,長坐位姿勢において両手で膝を抱え込むようにして測定を行うとよいです.
この方法であればクライアントが自身の疼痛が我慢できる範囲で屈曲運動を行いますので,われわれ理学療法士・作業療法士のさじ加減で可動域が変化するということが無いわけです.
足関節背屈運動であれば端坐位で足底を床面に接地したまま,後方へ引くようにしながら背屈した際の可動域を測定するとよいです.
当然ながら関節や運動方向によってself-passiveでの測定が難しい場合もあるわけですが,self passiveでの測定が可能な場合には非常に有用です.
筋力の要素を考慮した上で可動域を測定するには?
前述したようにactiveによる測定では,筋力の要素が多分に含まれます.
したがって筋力低下の要素も含めて可動域を測定するのであれば,activeで測定することも勧められます.この場合には,MMTにおけるFair levelの肢位で測定をすることが基本となります.
例えば肩関節の屈曲であれば,座位で上肢を挙上していった際に最も高く挙上できる肢位における肩関節の屈曲可動域を図ることになります.
Activeでの測定というのは信頼性(再現性)といった面で考えると,われわれ理学療法士・作業療法士の操作によって影響を受けるわけではありませんので,信頼性(再現性)は高いと考えることができるでしょう.
肩関節のように日常生活を考えた時に,抗重力位において自動運動で挙上ができなければ,他動での可動域が良好であっても機能としては役に立たない関節もあります.
一方で膝関節の屈曲のように抗重力位における自動運動での可動域があまり意味を持たない可動域もあるわけです.したがってactiveでの可動域測定を考える際には,日常生活動作と関連付けながら可動域の意義を考える必要があると思います.
すなわち関節や運動方向によってactiveでの測定を行うことに意味がある場合と,そうでない場合があるということです.
股関節の可動域は独りでは正しく測定できない
以前の記事でもご紹介いたしましたが股関節の運動を行う場合には代償運動が出現しやすいといった点に注意が必要です.
股関節の可動域測定を行う場合には骨盤の代償運動を抑えた上で,測定を行う必要があります.
骨盤の代償運動を抑える方法としてはベルトで固定する等の方法も考えられますが,そうでない場合は独りで骨盤の固定をしながら可動域を測定するのは不可能に近いと思います(他動運動の場合は特に難しいと思います).
養成校ではプロであれば独りで測定できるといったような指導を受けることもあるかもしれませんが,現実的には正しく測定するのは難しいでしょう.
近年の論文中における股関節の可動域測定方法を見ても,2人以上で測定を行っている場合がほとんどです.
実習において股関節の可動域を測定する場合には,指導者に骨盤の固定方法も含めて事前に確認しておくとよいでしょう.
角度を測定することだけに集中していてはいけない
臨床実習生が関節可動域測定を行う場合には,どうしても角度を読み取ることばかりに意識が集中しがちです.関節可動域の数値そのものを読み取るのも重要ですが,われわれにとって重要なのは関節可動域制限の原因を考えることです.
関節可動域制限の原因が明らかにできなければ,われわれは関節可動域改善に向けて有効なアプローチを行うことができません.
したがって関節可動域制限の原因を考えるといった視点で,end feelやクライアントの疼痛部位を確認し,関節可動域制限の原因を考えながら可動域を測定することが重要となります.
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今回は実習生向けに,関節可動域測定における注意点についてご紹介させていただきました.
実習前に改めてactive・passiveでの可動域測定の利点・欠点を整理することも重要だと思います.
また基本体位を取れないクライアントも少なくありませんので,基本体位が取れない場合にはどういった肢位で測定するかといった点についても事前に考えておくとよいでしょう.
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