臨床実習ではリハビリ室の清掃を理学療法士・作業療法士とともに行うという場合も少なくないと思います.私自身の経験からすると,正直なところ学生時代は何で朝早くから自分が清掃をしなくてはならないのかなどと思いながら,清掃に取り組んでいた記憶があります.今回は臨床実習生がリハビリ室の掃除を行う意義について考えてみたいと思います.
目次
掃除をすることで物品の位置を覚えることができる
私が考える掃除をする意味というのは,これが一番大きいと思います.特に実習から数週間は,指導者から○○を取ってきてもらえますかなんて言われても,○○がどこにあるかわからないといったケースが少なくないと思います.掃除を通じて,リハビリ室のどこにどういった道具があるのかといった情報を得ておくと,実習が行いやすくなります.不安で仕方ない実習初期には,指導者から依頼されたセラバンドを持ってくるという何でもない行為が達成できただけでも,自分自身がクライアントの診療に役立ったいった自信につながるわけです.したがってただただぼーっと掃除をしていてはもったいないわけです.ここにこれがあってといった情報を確認しながら,掃除に取り組むことが重要です.また掃除をしていると,ここのリハビリ室にはこういった道具があったのか,今担当しているクライアントの運動療法に行かせるなといったようなアイディアも浮かびやすくなります.
掃除を通じて道具の特徴を改めて見てみよう
実際に診療が始まると歩行補助具をゆっくりと観察したり,マットの硬さを確かめたりとそんな時間はありません.掃除を通じて道具の特徴を改めてみてみると多くの気づきが得られます.リハビリ室のプラットフォーム1つをとってもそれぞれ高さが変更できるタイプのものがあったり,硬さや広さが違ったりといったことに気づくことができると思います.また同じ歩行器と呼ばれる歩行補助具であっても,いろいろなタイプのものがありますので,どういった場合にこの歩行補助具を使用するのかなどと考えを巡らせながら掃除をするのも良いでしょう.また平行棒を清掃する際には平行棒の高さ調整ってどうやって行うのかとか,そんなことを考えながら掃除をしてみるのも良いでしょう.養成校にも歩行補助具をはじめとするリハビリ関係の道具というのは多くあるわけですが,学校では何も考えずにそういった道具に触れていることが多いと思います.車椅子の操作を1つとっても見学実習で初めて経験するといった学生も少なくありません. 掃除を通じてリハビリ室内の物品の位置関係や,道具について詳しく把握できれば,「アウェイ」であったリハビリ室が,徐々に「ホーム」の感覚になるのです.「ホーム」で余裕のある状態で実習が行えれば,集中してクライアントや指導者と向き合えるので実習も送りやすくなるのではないでしょうか.掃除にはそんな意味合いも含まれていると思います.
掃除は清掃業者の仕事?
これもいろいろと意見はあると思います.そもそも掃除なんか理学療法士・作業療法士の仕事ではないと考えられる方もおられると思います.私の所属する施設でも朝は新人の理学療法士・作業療法士・臨床実習生が掃除に取り組み,昼は清掃業者による清掃が行われます.こういった毎日の清掃以外にも,われわれが緊急で掃除を行う必要がある場面というのは少なくありません.例えばリハビリ室で嘔吐や大小便が出ることもあり,感染管理上も自分たちで掃除を行う場面というのがあるわけです.つまり理学療法士・作業療法士が掃除をするということではなくて,理学療法士・作業療法士として掃除をするということが重要なわけです.
何事もそうですが,意識を持って物事に取り組むのと,何も考えずにぼーっと取り組むのとでは得られる経験にも雲泥の差があります.掃除といった非常に単純な作業も自身の成長にどう生かせるかといった視点で取り組むことが重要だと思います.
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